3-3.ずずず
気がつけば、魚住のその体育会系のような恐怖感に負け、僕は魚住とハンバーガーショップに来ていた。ここは1ヶ月ちょっと前に八巻さんと来た店と同じだ。
あの時も緊張したが、今の緊張はまた別の感覚がある。
「もう一回聞くぞ」
と言いながら、一度魚住はシェイクをずずず、と飲んだ。
「お前、本当は高嶺が好きなんだろう?」
僕の沈黙は肯定のそれだった。
僕は七星も好きだし、高嶺さんも好きだ。ついでに八巻さんも気になる。
「いいか、俺は七星ちゃんが好きだ」
魚住がまた主張する。
「俺が七星ちゃんと付き合い、お前が高嶺と付き合う。これが最終ゴールだろ?どうだ?」
またしても黙る僕。
「俺は高嶺と同中で実は仲が良いんだぜ?お前は七星ちゃんとあんな感じだろう?恋愛なんてもんは、情報戦だ。お互い手を組んで、情報を渡し合うってのは、悪くないんじゃないか?」
うーんと、あれあれ?
僕は天秤にかけてみる。
僕が魚住に七星の情報を提供する。
魚住は僕に高嶺さんの情報をもらう。
これなら吊り合うが、僕はまず七星と別れなければ意味が無い。
これって、俗に言う、ウィンーウィンではない。魚住だけが得をするじゃないか!
そもそも僕は高嶺さんと最近ちょっとだけ仲良くなって来た訳だし、今更情報を貰っても、あんまり意味が無いのではないか!?
「決まりだな?」
僕の意見を聞かず、ぐいぐいと迫る魚住。これだから嫌なのだ。体育会系は!
「ちょ、ちょっと待ってよ、それって僕は七星と別れろって事なの?」
「そうだけど?だってお前、高嶺が好きなんだろ?」
「そ、それとこれでは話が違うよ」
自分でも自分を嫌いになりたいが、僕は七星も高嶺さんも好きなのだ。
七星が天使で、ラブアシスト制度のルール上、恋をしちゃいけないだけなんだ。そんなルールが無ければ、僕は七星が一番好きだ。
正直後ろめたいけど、七星と登下校を共にする日は嬉しいし、これ以上好きになってしまうから、形式上別れたいという気持ちもある。
ーーーけど
ーーーー僕は思った。
ーーーこの目の前の男に
ーーー七星を奪われたくない!




