3-2.タイムリープ成功
翌日。
国語と英語の間の休み時間。
僕の目の前の席は八巻さん。
右隣に七星。左隣に茂木。
後ろの席の顔立ちの整った男。
彼の名前は厳島くん。
最近ちょっとだけ喋るようになった。
授業が終わった瞬間、誰も教室を出ていないタイミングを見計らい、七星が大声でいえ〜い!と騒ぎ、クラスの注目を集め、僕とハイタッチをした。
歪む風景。
またしてもタイムリープ成功だ。
5分前の授業の終わり頃に戻る。
そのまま適当に先生の話を聞き、こうして休み時間。
「成功したじゃん」
「うん。。。」
クラスメートがいても、タイムリープは成功した。というより、タイムリープが成功してしまった。
つまりタイムリープが成功しなかったあの日は、本当に偶然なのか、クラスメート以外のどこかの誰かが奇跡的に使った能力なのか、クラスメートの誰かが僕の告白のタイミングで故意に発揮した力なのか。
この3通りとなる。
僕は疑り深いので、タイムリープを一週間、同じ条件で使う事にした。
結果は同じだ。
僕の中の予想は、やはり、僕の告白のタイミングで故意に使った誰かがクラスメートにいる、と言うことだ。
そうなると、大事な場面でタイムリープは使えなくなってしまう。
世の中の事象を巻き戻す力、それを無効化する力なんてあるのだろうか。
僕は悩む。
これでは分からない。
これでは結局、ラブアシストなど意味が無いように思えた。
使いたい時に使える確証が無ければ、それは使えないに等しい。
その日の放課後。
いつもなら茂木か七星と帰るが、今日はたまたま1人で帰ることになった。
廊下を出る。
聞き覚えのある声。
「ちょっと付き合えよ」
クラスの嫌なやつ、魚住だ。
「え、なに、?」
「お前、最近イイ感じだよな?」
イイ感じ。これは七星の言う、人生の好調を意味するものではないと僕は瞬時にわかった。
ーーー調子に乗ってるよな?
こういう事だ。
「そ、そんなことないよ」
「お前みたいな奴が七星ちゃんと付き合ってるのは、俺はよく思わない」
目の前の魚住がなぜ、わざわざ当事者の僕にこんな事を言うのだろうか。本当に性格が悪い。
「じ、自由じゃないか。僕が誰と付き合おうと」
「俺は七星ちゃんが好きなんだ」
呆気に取られる。
この、目の前の、性格の悪い魚住は、確かに今、自分の好きな人の名前を言ったのだ。
堂々と。
僕だったら言えない。言いたくないし、恥ずかしい。なのに、彼は、凄い。
意思表示がしっかりとしている。
とはいえ、僕は七星と付き合っている。設定だが。
何を返せばいいか分からない。
「キスはしたのか?」
「き、キス!?してないよ!」
「もう1ヶ月経つぞ?」
「し、してないよ!」
魚住が何やら考え、僕に近づき、語り出してきた。
「本当は高嶺が好きなんだろ?」
心を見透かされたような気がして、僕は返す言葉がない。
「やっぱりな」
にやけながら、魚住は続けてワケの分からないことを言い出した。
「よし、俺と組むぞ」
え?