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(仮)異世界ライフは突然に  作者: ai-emu
【閑章】転移してきた元クラスメイト
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【第42話】D-1ランク昇格試験(その1)

冒険者訓練所に入って3か月が経過した。

今日は、卒業試験も兼ねたD-1ランク昇格試験の日だ。


試験が行われる場所は、町の西側にある洞窟迷宮ダンジョン『三足烏の大迷窟』の低層階だ。

今回は、訓練期間中パーティを組むことになった6人で、5階層までクリアーすることが条件となっている。

ちなみにこのダンジョンは、100階層以上あり、現在踏破されているもっとも深い階層は120階層となっている。そして、各階層へと降りる階段前の部屋には、フロワーボスがおり、ボスを倒さないと下の階層へ降りることができない。また、5階層ごとに、入口にある転移水晶柱とリンクしている水晶柱があるが、それまではダンジョンから出ることはできない。


このルールは、ダンジョンごとに異なっている。

それは、ダンジョンが、大きく分けて3つに分類されているからだ。


1つ目は、『洞窟型ダンジョン』

このダンジョンは、入り組んだ迷路状の洞窟となっており、基本中は真っ暗で光源を自分で用意しておかないといけない。中の環境は一定であり、時間の感覚がなくなっていくのも特徴の1つである。

また、迷路の袋小路はそれぞれ部屋になっている。下へと降りる階段前には必ずボス部屋があり、中にいるフロワーボスを倒さないと下の階に行くことができない構造になっている。

また、どういう理屈かは知らないが、5階層ごとに地上に設置されている、転移水晶柱とリンクしている転移水晶柱が設置されており、5階層ごとにいるのボスを倒すと、水晶柱のある小部屋に行くことが可能になる。

つまり、5階層ごとに地上への帰還が可能となるわけだ。


2つ目は、『フィールド型ダンジョン』

このダンジョンは、世界に存在しているあらゆる環境が、ダンジョン内の各フロワーごとに再現されている。そのため、フロワーごとに環境が異なっており、昼と夜が必ず訪れているのも特徴の1つである。不思議なことに、太陽や星空なども再現?されているのが面白いところである。

下に降りる階段は、広大なフロワーの何処かにあり、階段前にボスがいるのは変わらない。ただし、どんな理屈かは解明されていないが、フロワーに降り立つ場所が毎回違っている。そのため、自分が何処にいるのかを把握しないと、永遠に迷子になってしまう構造となっている。

また、パーティメンバー全員を1つにしておかないと、次の階層へ降り立った時に分断されてしまうこともある。

転移水晶柱は、各階層ごとに存在しているのが唯一の救いでもある。


3つ目は、『混合型ダンジョン』

洞窟型とフィールド型が1つにまとまった構造をしているダンジョンであり、両方の特徴を兼ね備えているので一番攻略に厄介なダンジョンとなっている。



「ではこれより、昇格試験を始める。

今回君たちに挑戦してもらうのは、洞窟迷宮ダンジョン『三足烏の大迷窟』の1階層から順に降りてもらい、10階層のボスを倒すまでとなる。クリアー証明は、各フロワーボスの討伐証明となる。

試験官として、俺も同行しているが、よほど危険な場面でもない限りは介入はしないのでそのつもりでいるように。」

「はい。」

「では、昇格試験、開始!!」


=第1階層=

入り口を降りて、長い下り坂を降りていく。

ここ、『三足烏の大迷窟』は洞窟型ダンジョンに分類されており、入り口が遠ざかるにつれてだんだん薄暗くなっていく。

「我らの行先を照らせ『光源ライト』」

通常のパーティは、カンテラなり松明なりを用意するものだが、僕たちは光魔法を使えるアイナさんがいるため必要がない。

僕たちは、通路を歩きながらこのダンジョンについての情報を話し合っていく。実を言うと、全員ダンジョンに潜るのは、今日が初めてだったりする。また、登録した街によっては、試験内容が『ダンジョンに潜る』というのではないところもある。すべての町にダンジョンがあるわけではないからだ。


「このダンジョン、お前たちが行く1階層から5階層まで沸く魔物やモンスターの種類は?」

ヒュレイムさんから、こんな質問が飛んできた。

「1階層は数種類のスライムとゴブリン、ボスは確かポイズンスライムだったかと。」

楯職のケントがまず答える。どうも、それぞれ1階層ずつ答えていくようだ。

「2階層は・・・・と、さっそくお客さんだね。あれはアシッドスライムかな?しょっぱなから嫌な相手だよね。・・・それも、3匹もいるよ。」

斥候職のサティさんが、2階層目の説明をしようとしたところでモンスターと遭遇する。初めてのモンスターは、『アシッドスライム』と言う。ガラス以外はなんでも溶かしてしまう強酸を吐くスライムだ。前衛陣には忌避するものが多く、初心者殺しの異名を持っている。

「スライムを倒すには、体内にある核を破壊するしかない。ここはユキヒデ君。何とか出来るかい?」

重戦士のティリカさんが、僕に振ってきた。


「そうですね。前衛には嫌なモンスターですよね。」


そう言いながら僕は、核と体を構成している強酸性の体液を空間魔法で分離し、核を風魔法で破壊する。体液はそのままそこらへんの壁から採取した石を火魔法でガラスにしたモノの中に入れる。このアシッドスライムの体液は、採取できれば結構な高値で売ることができるのだ。

僕みたいに、すべて魔法で採取まで持っていけないと採取もできないアイテムである。


なぜ、アシッドスライムの体液が高値で取引されるのか。

それは、第5階層のボスと、第30階層で使用しないといけないからだ。


第5階層のボスは、『スチールセンティピード』という、体長約20m、全身が鉄の甲殻に覆われた巨大ムカデなのだが、甲殻が鉄でできているため、アシッドスライムにとっては敵でも何でもない。

とっても不思議な関係である。


第30階層に沸くモンスターは、剣も通らないほど甲殻が非常に硬い蟻だが、このアシッドスライムの体液をかけると、その固い甲殻が豆腐のように柔らかくなってしまう。そのため、迷宮探索者にとってはなくてはならないアイテムとなっている。しかし、ガラス以外何でも溶かしてしまう特徴から、なかなか手に入れることが困難なアイテムと化しており、値が跳ね上がってしまったという話だ。


どちらにしても、大量に回収できないと意味はないのだが。


閑話休題。


「スライムの体液も回収できたので、次に行きましょうか。」


万能虚空庫ストレージに回収した瓶をしまいながら皆に先を促す。

「しかし、あれだな。

時空間魔法が使えると、こんなにも簡単にアシッドスライムを退治できるんだな。それに、荷物が少なくて済む。」

「は・は・は・・。それは言えてますね。今回の探索?も、全員の荷物は僕が持っているわけですしね。さらに、ダンジョン内での素材の回収がし放題という特典もあります。」

「それが一番の特典だな。普通の冒険者は、荷物の問題があって、荷物持ちのために大量の奴隷を抱えているもんだ。そのため、荷物を預かる奴隷の護衛もしないといけないから、戦闘に集中できなくなっていくもんだ。」

そんな会話をしながら僕たちは、アシッドスライムを乱獲していく。スライムの場合は、僕だけが戦闘という名の素材採集に勤しみ、ゴブリンが出た場合は、前衛陣が戦闘を行っていく。

そんな感じで探索をしていき、ボス部屋へと到着した。


「ボス部屋に入る前に、ポイズンスライムについて述べてみろ」


ヒュレイムさんからの質問に、僕たちは真剣に答えを述べていく。

まずは僕から、基本的なことを述べていく。

「直径約3mで、全方位から毒液を噴射してきます。毒液は酸性であり、皮膚を溶かして体内に侵入します。遅延性の毒ですが、一定量を摂取すると即効性に変化します。

そのため、前衛陣の毒対策をしっかりとしておかないと、たとえ討伐できたとしても、次の階層で毒が回る可能性があります。」


次に、回復職のアイナさんが補足していく。

「討伐時には、移動速度と討伐方法に注意が必要です。

1つ目の討伐方法は、体を構成している体液を徐々に削り取って行き、核を破壊します。ただし、体積が減少するに従い移動速度が速くなっていきます。

2つ目の討伐方法は、魔法で体液を吹き飛ばして核が露出した瞬間に、解毒魔法を核にかけると消滅します。もしくは、魔法で破壊します。

私たちの場合は、こちらの方法を採ったほうが安全でしょう。」


「俺としては戦ってみたいが、次を考えるとそれが無難か・・・。」

「そうですよ。安全に踏破できる環境が整っているのに、わざわざ危険を冒す必要はありません。」

サティさんとケントが、いつの間にか討伐方法の検討に入っている。まだ、装備と溶かすだけのアシッドスライムならば、前衛だけでもなんとか対処可能なのだとおもう。しかし、ボスであるポイズンスライムは、装備を溶かすどころか、皮膚までもと化し毒を盛ってくるのだ。安全圏から攻撃できるのならば、そうしたほうが断然いいに決まっている。


「ということは、今回の戦闘は、僕とアイナさんでやるんですね?」

「・・・・そう言う事になるな。大変だと思うが、よろしく頼むぞ。」

一応このパーティのリーダーであるティリカさんから頼まれてしまった。


まあ、いいけどさ。


「ではアイナさん。全部僕が殺してやってしまってもいいのですが、アイナさんの言う『解毒魔法で消滅する』をちょっと見てみたいので手伝ってもらえませんか?」

「いいんですか?」

「かまいませんよ。それに、後学のために見ておきたいと言うのもあります。

いつものスライム戦のように、核と体液を空間魔法で分離しますので、核のほうを頼みます。僕は毒性の体液を確保します。」

「何かに使うんですか?」

「アシッドスライムの体液が、下のほうの階層で有効利用できるんだったら、この毒も何かに使えそうでしょ?」

「ではさくっと終わらせましょう。」

「そうですね。アイナさんの魔法が準備できたら知らせてください。」

こうしてボス戦を開始した僕とアイナさん。


戦闘時間は、たったの10秒だった。

そのうち、核が『解毒魔法で消滅する』時間が、7秒ほどだったが・・・・。

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