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僕らの未来に正義は無い  作者: 智恵理陀
第三部『生徒会選挙編』:第二章
70/90

二ノ陸

 翌日、学校では裏萩さんと彪光が襲われたという噂は既に広まっていた。

 昨日の放課後から、二人が襲われた時点でその噂は広がりを見せ始めていたようだ。

 次の日には何も知らずに登校した生徒達へ噂は感染し、勢いを増していったわけだ。

 裏萩陣営は生徒会長候補としても期待されている、その妨害か――噂の中でも一番活き活きとしていた噂はそれだ。

 確かに誰もが考えてしまう。

 加えて、二人が登校して怪我の具合を見た生徒達はそれから放課後までに補足する。

 彪光のほうが怪我は酷そうだった――つまり、裏萩陣営でも活躍を見せる彼女を狙ったものでは? と。

 今日は隠し部屋での合流となった。

 生徒達に注目されているために選挙準備室には時間を置いて行ったほうがいいのと、自分らを襲撃した者達を探すべくその作戦を練るため、なのだが彪光は中々来なかった。

 また襲撃されたのでは? と思った頃にやってきて、表情は若干疲れが見られて心配になる。

「ここへ来るのも一苦労だったわ」

「注目されてますものね、掲示板などでは彪光様と裏萩陣営でもちきりですよ」

「嬉しくない注目よ。ここへ来るのも大変だったんだから」

 まったくだ。

 怪我したら学校中の生徒達から視線を浴びているなんてたまったもんじゃないね。

「昨日の襲撃についてなんだけど、ちょっと調べてみようと思うの」

「調べつくして鉄槌を下しましょう!」

 張り切る音々子さん。

「音々子、貴方は裏萩を手伝って。貴方がいないと他の生徒達がただでさえ慣れない活動で動きが悪いのだからそれを加速させてしまうわ」

「で、でも……」

「やりなさい」

「ああっ、冷たい視線が心地良いっ。分かりましたぁん……」

 この人もう色々と駄目かもしれない。

 恍惚な表情を浮かべて何故か彪光の前で正座してるし。

「パソコンは聞かずとも、使えるわよね?」

 彪光は僕を見て言う、扇子を開いて、僕に期待してると言わんばかりの視線。

「まあ……使えるけど」

 襲撃した奴らを調べるに当たって、学校内に仕掛けたカメラでの映像確認や掲示板などの書き込みをこちらで目を通しておかなければならない。

 パソコンの操作はお手の物だから問題は無い。

 僕も襲撃した奴らは気になる。

 昨日あれから調べようとしたけど、華奈枝さんがいるとこっくりさんとして使っている部屋は頻繁には利用し辛い。

 だからまだ全然調べていないのだ。

 ここのパソコンを使って襲撃者を調べて、華奈枝さんがいない時にあの時きぐるみについての願いをした人物を詳しく調べていくという二つの路線から攻める方法でやっていこうと思う。

「しかし私も選挙のほうには顔を出していなければならないから、ここにはアンナを残しておくわ。新蔵は選挙を手伝うついでに私達を守って欲しい」

「分かった、守ろう」

 ものすごく頼りになる護衛だ。

 襲撃者と新蔵が遭遇したら襲撃者が気の毒な目に遭うのは間違いない。

「それと不審者がいたら監視しておいて、場合によっては拘束。活動を終えたら様子見も兼ねて私達は二人での行動を多くするわ。新蔵は目立たないように私達についてきて」

 何か、引っかかる。

「今日は二人で、次は私と裏萩は別々の行動を取って様子見をするわ」

「……彪光、それって囮になるって事?」

「そうよ」

 僕は――僕達は彪光の考えを聞いて、それぞれが驚愕に心を染めた。

 これまたよく危ない事を進んでやろうとするね君は……。

「別々にって……」

 しかもリスクを自ら増やすはお勧めできない。

「どちらかが襲われれば襲撃者が私達どちらが目的だったのかはっきりするから」

「でも襲われる前提っていうのは賛成しかねるよ」

「裏萩は誰かと一緒に行動するようにして演説以外での選挙準備室からの移動は控えさせるわ、私は単独で行動して新蔵に守ってもらうから大丈夫」

 裏萩さんは囮としての役割は薄い、これは彪光が囮として単独行動で襲撃を待つって作戦じゃないか。

 どちらかが襲われれば? 自分が襲われればっていう判断を君はしようとしているんだよ?

 危険は変わらない、心配なものは心配だ。

「納得できないって顔ね」

 よし分かった、囮よろしくなんて言えない。

 ただ僕がどれだけ止めても彪光は引き下がってはくれないだろう。

「深く考えなくていいわ、本当にただの様子見よ。どうせ私達は今注目されていてしばらく襲撃される可能性は少ないのだから」

「もしも、万が一、それを考えるとさあ……」

「そのための新蔵」

 まあ……そうだね、新蔵がいれば大丈夫……ではあるけど僕はどうしても彪光が囮になるって事が引っかかって、もしも、万が一が払拭できなかった。

「アンナ、今日はセンキョ、てつダイ、駄目ネ? 彪光を守ルの駄目?」

「今日は我慢して頂戴」

「でも別にここにいてもさ、僕はパソコンをいじってるだけだしアンナも選挙手伝いに回ってもいいんじゃない? 護衛は多いほうがいいでしょ?」

「それもそうだけど」

 一人は寂しいけど、彪光の安全を僕は優先したいね。

「放置プレイを求めているのか君は」

 音々子さん、張り倒していいですか?

 ああ駄目だ、この人にはこれもご褒美として受け取ってしまう。

「そういう事で」

「ええ、分かったわ。頼んだわよ」

「任せて」

「任せるヨー!」

 僕達はそれぞれの役割を果たすべく動き出した。

 彪光のほうは流石に新蔵とアンナがいれば大丈夫だろう。二人は息もぴったり、護衛をやらせたらもう何も怖くないね。

 選挙のほうも僕が抜けても音々子さんがいれば何も問題は無さそうだ。

 何か問題があるとすれば人手が一人分減った事だが、昨日にポスターも全て貼り終えたしそれほど時間が掛かる作業も後はあまり残ってなさそうでもある。

 僕はパソコンを起動し、先ずはカメラのチェックを始めた。

 音々子さん……こういうカメラ設置とかをやらせると本当にすごいな、どうやって仕掛けたのかも教えてもらいたいね。

 二十近く? 二十以上? カメラの設置は学校敷地内至る所にだ。

 録画もばっちりのようで、一日毎に録画ファイルとして保管されていたので見やすくて助かる。

 このパソコンのスペックはかなりのもので処理も早い、うちに欲しいなあ。

 僕は昨日の映像を見て、襲われた時間帯を確認した。

「……十八時、十三分か」

 それぞれ選挙を終えて皆が校内に入った時間帯、正門から広場付近に掛けての人がその時間だけほとんどいない。

 カメラの位置はどこかの木の枝にでもくくりつけているのか、やや上の位置。

 本当にどうやって取り付けたのか、電気の配線とかはどうやってやったのか教えてもらいたいものだ……。

 画面の端あたりで見辛いものの、人影で誰かは判断できる。

 二人は帰りながら、広場で少し話をしていた様子から打ち合わせの延長といった感じ。

 それから正門へと向かったところで奥の木陰から何か長い物を持った人影が数人現れて二人を襲っていた。

 その人影、やはり頭は異常に大きくきぐるみの頭部をかぶっていたのが分かる。

 手に持っているのは金属バットか? どうやって襲われたのかはこちらから詳しく聞いていなかったので映像を見て僕は驚愕していた。

 皆に心配をかけまいとあえて言わなかったのか?

 しかし金属バットの振り方はどこか違和感を感じる。

 かすらせるような、直接は狙っていない振り方で空を切る事が多かった。

 脅しを目的としているのかもしれない。

 怪我は襲撃者にとっても予期せぬ事態の一つ?

 彪光がバットを避けるも、バットの先端が彼女の額をかすって出血。

 襲撃者はそれを見て皆が動きを止めていた。

 慣れてないな、彼らは血を見るのも暴力を振るうのも襲撃するのもひっくるめて。

 それで焦った一人が振り返って逃げようとしたところ、バットを振り回す形となってしまって裏萩さんの頭部に当たり、倒れこむや襲撃者は皆逃げ出した、と。

 敷地内で潜んでいた事からうちの学校の生徒だな、他校生が選挙中のこの学校の敷地内に入ってくるにはリスクがでかすぎる。

 それぞれ私服だったけど、着替えを持ってくるのは容易い。

 それに私服といってもジャージが目立った。

 部活動をしている生徒の可能性も……いや、自分が普段使っているジャージを襲撃でも使うのは特定に繋がるからそれは無いか。

 盗んで利用した可能性もあるな。

 襲撃者は全員男、映像からでは襲撃者は奥に映っていてそれぞれの身長は分からず特定には繋がらないが貴重な情報は十分に得られた。

 しかし先ずはやはりきぐるみについてこっくりさんに願った生徒から聞き出すのが一番だ。

 ロボ部の琴施美癒ことせみゆ

 彼女が僕にお願いをした生徒だが、直接聞きに行くわけにもいくまい。裏萩さんと彪光が襲撃されて、選挙関係者がいきなりロボ部を訪ねるだなんて妙である。

 じゃあどうやって調べる?

 そりゃあ、音々子さんがなんか最近仕込んだらしいこのパソコンを使って。

 以前に生徒名簿を職員室から盗む時の事を考えて、今後あんな事はしたくないようでこのパソコンから直接学校のデータベースにアクセスできるようにしたらしい。

 絶対にこれ学校関係者に知られたら怒られるじゃ済まないだろうなあ……。

 しかしこの学校の回線を使って学校内の職員がデータベースへアクセスしているみたいと同じようにしているであろうから先ず知られないとは思う。

 先ずはロボ部だ。

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