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異世界美容外科医 ~美しくなりたい彼女たちと、俺のクリニック経営~  作者: シャロン=ミ


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15話 異世界に微細針治療器はない。なら作ればいい

「……真皮層の厚さは部位や個人差によって違う。均一な効果を出すには、針の刺入深度をゼロ点数ミリ単位で正確にコントロールし、かつ一定の深さに保持する機構が必要不可欠だ」


診察が終わったあとの夜の第一診察室。 雄介は机の上に広げた羊皮紙に、緻密な精密機械の図面を書き進めていた。


微細針(マイクロニードル)治療器。 超極細の針で皮膚表面に微細な穴を無数にあけることで、肌の持つ自己再生能力を活性化させ、コラーゲンの生成を劇的に促す。ニキビ跡のクレーターや毛穴の開き、傷跡の質感改善には絶大な効果を発揮する施術だ。


しかし、この世界には電動モーターも、規格化された医療用使い捨て針もない。


(手動で転がすローラータイプにするか、それとも押し当て式のスタンプタイプにするか……。どちらにしても、患者の肌を無駄に傷つけず、正確な深さまで針を刺し込める一定のガイド構造と、滅菌可能な金属針の精密切削が必要になるな)


腕を組み、うーんと思考を巡らせていると、トントンと診察室のドアが控えめに叩かれた。


「失礼します、雄介先生」


扉を開けて入ってきたのは、経過観察と次の施術予約のために訪れていたアリアだった。 前髪を耳にかけたことで露わになった透明感のある美貌は、いまや街の誰もが振り返るほどだ。


「アリアさんか。どうした? 忘れ物かい?」


「いえ……ミーナさんに『先生はまだ奥にいらっしゃる』と聞いたので。……先生、何をなさっているんですか?」


アリアは好奇心に満ちた青紫色の瞳を輝かせ、机の上に広げられた図面を覗き込んだ。そこには見たこともない細かなギアや針、目盛りが引かれた円筒状の器具が描かれている。


「ああ、新しい美容器具の設計図を描いていたんだ。クレーター状のニキビ跡や、毛穴の開きに悩む患者さんたちのためのね」


「美容器具……ですか?」


アリアは図面と雄介の顔を交互に見つめると、意を決したように胸の前で両手をギュッと握りしめた。


「あの……雄介先生! 私にも、それをお手伝いさせていただけませんか!?」


「え?」


雄介は思わず手を止め、驚いたようにアリアを見上げた。


「手伝うって……君、村の娘さんだろ? 精密機器の設計や薬品の調合なんて、かなり専門的な知識がいるぞ」


「私……見習いですが、治癒術師なんです」


「……えっ?」


思いがけない告白に、雄介は目を見開いた。


アリアはどこか申し訳なさそうに、けれど真直ぐな視線で雄介を見つめ返した。


「今までちゃんとお話ししていなくて、すみません。私、生まれつき少しだけ魔力があって、村で治癒術師の先生について治療魔法の修行をしていたんです。……でも」


アリアはそっと自分の右頬に手を触れた。 かつて、魔物に襲われて大きな傷を負ったあの日。


「最初に先生に治してもらった時……私は、自分の顔の傷に対して何もできませんでした」


「……」


「治癒魔法じゃ、出血を止めて傷口を塞ぐのが精一杯で……結果として、ひどいひきつれと傷跡が残ってしまったんです。治癒魔法を使えば使うほど、皮膚が変な形にくっついて引きつっていって……本当に絶望しました」


1話で雄介が初めて出会った時の、絶望に沈んでいたアリアの姿。 治癒魔法という「魔法の万能さ」に頼るこの世界において、表面上の創傷閉鎖しかできない魔法は、かえって歪な瘢痕拘縮(ひきつれ)を生み出す原因にもなっていたのだ。


「治癒魔法を使っても、私の顔の傷は消せなかった。私の力じゃ、どうにもできなかった……」


アリアはぎゅっと唇を噛みしめ、それからパッと顔を上げた。


「でも、先生は違いました。魔法なんて使わずに、冷たいメスと細い糸だけで……私の顔のひきつれを解いて、笑えるようにしてくれた。そして今も、『AIZAWA SUN veil』やピーリングで、傷跡を綺麗にし続けてくれています」


言葉の端々に、熱い感情が宿っていく。


「だから……先生が何をしているのか、どうしてそんな魔法みたいな奇跡を起こせるのか、もっと知りたいんです! 先生の隣で、医療のこと、お肌のこと……全部学びたいんです!」


青紫色の瞳には、一切の迷いがなかった。


かつて自分の傷に絶望し、救われた少女。 彼女は今、単なる「患者」から、雄介の医術を学び支える「志同士」として、新たな一歩を踏み出そうとしていた。


雄介は図面から手を放すと、じっとアリアの目を見つめた。


「……治癒術師の基礎知識があるなら、解剖学や皮膚生理学の飲み込みも早そうだな」


「はいっ! 薬草の知識もありますし、魔力の微調整なら任せてください!」


身を乗り出すアリアの熱意に押され、雄介はふっと口元を緩めた。


「分かった。それじゃあアリアさん、明日からうちのクリニックで助手兼・研修生として手伝ってもらおう。……早速だが、この『微細針器具』の製作に必要な、異世界の素材集めにつき合ってもらうぞ」


「はい! よろしくお願いします、雄介先生!」


満面の笑みを咲かせるアリア。 こうして、『AIZAWA skin beauty』に新たな仲間――そして雄介の医術を継承する第一号の弟子が加わることとなった。



新キャラ加入です。

自分が異世界でニードル治療を作るならと考えつつ、難しいなと思いますね…ディスポーザブル(使い捨て)などファンタジーに落とし込むのも大変ですねって裏話です!


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