会議は踊らず、されど処理されていく
セルーカ王国の王都ブルジュの西北に位置しており、北部を北極海に面する城壁都市ポルセン。
北極大陸への交易航路の中継地点、北極海の海産物で賑わう港町である。
とくに名物は北極海でとれる四本足の巨大クジラ料理である。
海底を怒涛の勢いで走りまくる四本足クジラを命知らずの海女たちによって
捕獲し吊り上げ投げ飛ばす格闘漁が有名であり観光資源のひとつにもなっている。
その城壁都市ポルセンの公務室にて・・・・
暖かい日差しに照らされた机で雑務をこなすホールン伯は、
部屋中央で対峙する二人を横目で眺めていた。
彼ら二人のいる付近だけ日差しの影にかくれ、妙に暗くよどんだ感じがする。
この二人は 椅子に腰かけているラファーエル王子と直立不動のタネリス将軍である。
怖い顔のタネリス将軍は 威嚇をしてないつもりなのだが、
なぜか王子に対して威嚇ビームを斉射するように発言する。
怖い! 将軍の目が怖すぎる。 凶悪すぎる。
王子は 恐ろしい将軍の発言を戦々恐々としながら聞くのであった。
「王子!! ラファーエル王子殿!!
緊急事態です! 主力3万を・・・わたしの不手際で壊滅させたことは責任をとりますが、
敵セルーカ軍が来襲するのは時間の問題です!!
すぐにでも、この都市の防衛力を早急に強化すべきなのです。
敵の兵力は過小なれど、未知の兵器を保有し侮りがたい敵!!
だが私は なんとしても この都市を守って見せる
任せてください!! 守って見せます!!」
タネリス将軍は怖い顔で睨みながら、決意を熱弁するのだが、
ラファーエル王子にとっては 威嚇としか思われていない。
どんなに丁寧に話しても、将軍の眼光が鋭く睨む。
熱弁するほど威嚇ビームとして王子に突き刺さるのである。
脅迫されている。この将軍は王子たる私に対して脅迫している!!!
しかし、ラファーエル王子は決意する!! 決して負けないと!!
いくら将軍に睨まれ威嚇されても 絶対に怯みはしない!!
女神フレイエミア様のため 聖女様のため
「いや! 戦う必要はない。 和平を結ぶのだ
それは、この都市に住む住民のため、我が国の存続のためだ!!」
王子は睨む将軍を睨みかえす。
両者の間に火花が散る。
しかし、美少年系の王子には 今一つ迫力にかけた。
負ける! 将軍の眼光が強い 王子の体が震えた。
「いえ! 敵は少数です。 本国の正規軍が来るまで、この城壁で守りを固めれば勝利できる! 」
将軍のいかつい声が公務室に響く。
王子は将軍の顔から眼を離し 威嚇ビームを避けつつ平常心を保ち発言する。
「将軍の意気込みは理解している。 だが!! 私はブルジュで見たのだよ。
我が国を遥かに上回る彼らの力を!! いわば神の力! 戦えば破滅する。
それに将軍も、彼らの圧倒的な力を見たのではないのか!?」
「敵が たとえ圧倒的な力があったとしても この城壁都市の壁は鉄壁です!!
守れます! 我らヴィジャナル王国軍は負けはしない!!」
・・・・・ポワティエ平原で完敗した将軍の発言である。
威嚇と脅迫は鋭いが、説得力に欠けている。
電磁砲弾の前では 石造り程度のポルセン城壁はないに等しい。
「敵であるセルーカ王国は誠実で正義を愛する国。 このような正義の国と戦争など、間違っている!!」
完全に洗脳されたラファーエル王子の言葉であった。
「誠実!? 正義!?」
タネリス将軍は ラファーエル王子の信じられない言葉に驚きいぶしがる。
この王子は・・・きわめてリアリスト的な人物と思っていたのだが・・何かのたとえなのか!?
「もういい!! 将軍 私はすでに決定してるのだ」
「私は敗戦の将です。 残念ですが、何を言っても無駄のようですな!! 」
将軍の眼光が王子を睨んでいる・・・・ような気がした王子であった。
「あ~ 君は本国に帰って休むがいい。 だが、私は君を嫌っているわけではない。
君は優秀な将軍だからな! これからも我が国のために働いてもらいたい」
怖いから本国に さっさと帰ってもらいたいのが王子の本音である。
「敗軍の将にとってはありがたいお言葉です」
一息をつけ 諦めたような顔をしたタネリス将軍は 一礼をして公務室から去っていった。
ラファーエル王子も一息つける。
怖かった!! すぐにでも本国に帰ってもらいたいものだ。
静まる公務室、
なにげなく ラファーエル王子は窓辺に歩み寄り 青い空を見て感慨にふける。
「ああっ~ 女神フレイエミア様・・・・ 聖女さま・・・」
青い空が何やらぼやけて、女神フレイエミアの姿が浮かぶ妄想を見るのであった・・・
ついでに ニコリと笑ってたりもする。 手も振ってたり・・
そして 顔がにやけるラファーエル王子であった。
その姿を見ていたホールン伯は、なにか突っ込みたかったが、相手が王子なので見て見ぬふりをするのである。
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民間の大型客船に一般客として乗り込むタネリス将軍。
城壁都市ポルセンの港には 軍用の艦船は 全て出払っており、
ラファーエル王子の命に従い本国へ帰還するには 民間の船に乗るしかなかったのである。
もちろん、軍服は着ず、民間人の服装をしている。
すぎゆく城壁都市ポルセンを眺めながら 波打つ客船のデッキでタネリス将軍は物思いにふける。
ポワティエでの敗戦、 3万もの兵力を全滅させてしまった汚名、
貴重な巨人ゴーレム隊の壊滅。
本国に戻れば、おそらく軍人としての人生は終わる。
祖国を裏切ったユリティーナ姫。
信頼していた部下ユルエイルの死。
タネリス将軍の目が緩む。
鬼の目に涙である。 しかし 涙顔は明らかに凶悪な顔になりはてていた。
「絶対に仕返ししてやる~」
将軍は 思わず叫んでしまった。
ここは一般客も利用する客船のデッキである。
なにごとかと乗客たちは タネリス将軍を見た。
そして、恐怖する。 その泣き顔の迫力に・・・
しばらくすると、人食い魔物から人々が逃げ去るがごとく、タネリス将軍付近の乗客たちは またたくまに消えていくのであった。
そして デッキではタネリス将軍がただ一人。 誰もいない。
男は背中で泣いていた・・・・・・涙もながしてるけど
そんなタネリス将軍であるが 本国に到着後、数々の情報、資料が ヴィジャナル王国上層部にもたらされたのであった。
敵であるセルーカ王国の軍事力、その敵に味方をする謎の国ミレイユ聖女帝国の存在、そして
ポワティエ平原での戦いの詳細。
ライオネン=ユスティネス=ユリティーナ、
すなわちユリティーナ姫が寝返りをして、セルーカ王国側についた情報。
それどころか セルーカ王国からの発表では、
ユリティーナ姫は征討将軍に任命され、ヴィジャナル王国西方派遣軍を壊滅させたという!!
そして、その功労によりユスティネス名誉公爵に叙爵されたのだ!!
間違いのない裏切り者である!!
ヴィジャナル王国王都チャイアの宮殿会議室では 西方大陸での今後の対策が協議されていた。
国王メルンスルトは 老齢のせいか目をつむり無言で 宰相カリスト侯爵の報告を聞く。
「敵であるセルーカ王国には 詳細は不明だが、かなりの大型の飛空船を保有していることが分かっており
ブルジュでの戦いの際、我が軍に多大の被害を受けたと報告をうけています」
「なんと!」
「大型船とな」
会議の出席者が ざわめいた。
「国王の御前でありますぞ」
宰相の一括がはいり 即座に静まり返る。
次は ネゼル諜報相からの報告である。
「ミレイユ聖女帝国という謎の国ですが・・・
国力は不明、国の位置も不明、かなりの高技術力を持つ国家であるのは確かのようです。
国名を示す通り、女帝を頂点とする国家だというのは確かな情報であります。
そして その女帝の周りを凶悪なハルバートで武装した美人メイド軍団よって護衛されている」
「メイド・・・武装!? 美人!? 」
「なに そのあれ的な趣味は!!」
「中二病!!」
会議室はざわついた。
ゴホンと咳払いしたネゼル諜報相は つづいて報告する。
「メイド姿をした女性護衛隊のようなものと考えれば不思議なものではないはずです
そのメイド隊のほかにも、 我が国に匹敵する騎士団を保有しており かなりの戦力だと報告があがっております。
あと、未確定情報ですが 上半身をはだけ、雄叫びをあげる野蛮な集団も確認されており、
馬のようなものに乗り 棒のように武器を振り回す、傍若無人な振る舞いをする集団とのことです」
「正体不明の敵か・・・ 勝てる見込はあるのか!?」
メルンスルト国王が、報告書に目を通しながら問いかける。
「敵の兵力は かなりの少数ということが分かっております。
おそらくミレイユ聖女帝国の本国はかなりの遠国、この地に派遣できる戦力も僅かなのでしょう
兵力の差で押し切ります。人海戦術なら対抗可能です」
軍務武官のひとりが 勢いよく答えた。
「うむ 勝てる見込があるのだな!!」
「でわ! ここからは軍務相であるわしが説明いたしましょう。
現在 飛空船200隻の準備を進めております。 その準備完了とともに総兵力5万を わしの指揮のもと、
西方大陸に渡航し 次こそはセルーカ王国を完全併呑いたします。」
軍務相であるナバ―ラル伯の発言である。
白髪の白い髭の目立つ高齢の人物であり、数々の戦役を戦い抜いた武人でもあった。
「うむ、ナバ―ラル伯よ! よろしくたのむぞ!」
「陛下のお言葉。 ありがたき幸せでございます。 セルーカ王国軍を撃破し 西方大陸に陛下のご威光を広げる所存でございます」
メルンスルト国王は首を縦に振り了承した。
「次の議題は・・・ユリティーナ公爵令嬢というよりは ユスティネス公爵問題です」
宰相カリスト侯爵は 積み重なった書類を山のように机の上に乗せた。
とんでもない高さの山である、いくつかの書類が机からずり落ち、地面に散らばってもいる。
「この書類の山は ユスティネス公爵のおこなった不正や事件の報告書である」
「おいおい やりすぎだな!」
苦笑と怒りの混在した発言が飛び交った。
「ユスティネス公爵は なにかと・・・でわなく大量の不正の疑惑があり、
歩く不正とまで言われている。
我がヴィジャナル王国をささえる貴族たちにとって 最大の汚点となる人物である。
その上! 公爵の娘であるユリティーナ公爵令嬢は我が国を裏切り敵の手先となって我が軍を撃破し壊滅させてしまった。
ユスティネス公爵を改易すべきです」
「・・・・・ユスティネス公爵か 奴はな・・・・」
国王が ぼそりと小声をだした。
「領内にかける税額を不当に増やし、領民が苦しんでいる報告が いくつも入っており 是正を通告しても、
無視され続けていました」
蔵相であるエリクス伯の発言である。
「そういえば 公爵の娘のひとりを 黒髪と言って牢屋に閉じ込めたまま 餓死させたのじゃないかという噂もあります」
「なんと! ひどい」
「公爵は強力な魔力を持つ娘を、魔力なしと決めつけ、殴る蹴るの殴打をしていたと・・魔術師協会長から話を聞きました」
「ああ~ なるほど! 父親への恨みが 敵国への寝返りをさそったのか!!」
10歳のころ 魔術師協会でミレイユが父親に髪を引っ張られた事件の話であるのだが、
ユリティーナ姫の裏切り話と混じってしまったのである。
当時、魔術師協会にいたローブをかぶった男は 今や魔術師協会会長となり、
ユスティネス公爵の不正を密かに調べていたりしていた。
「あの公爵は 有能な人材を敵国へと寝返らせる元凶になりかねない。 素早い処罰が必要だ!!」
「よし分かった! ユスティネス公爵は改易とする!!」
メルンスルト国王は決定したのであった。
この宮殿会議によって 公爵家としてのユスティネス家は滅亡したのである。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ) ユスティネス家は不滅である 何度も滅んでも・・よその国で復活する。




