全員集合
「何言ってるのか、オレにもわかるように説明してくれないと。困るぜ? オレ、馬鹿だからさ」
「な……誠!? な、なんでここに……」
「私が連れてきたんだよ」
そう言って、誠の後ろからひょっこと女子生徒が出てきた。こいつは――
「流菜ちゃん……誠君。見つけたんだね」
「はい……ようやくですけど」
連の知り合い……。オレが前に救ったというやつか。いや、それよりも――
「誠、お前は一体どうしてここに……今までどこにいた?」
「え? ああ……それはな。オレ、お前に言ったじゃん? 親の愛情がほしかったとかなんとか、こっぱずかしいこと。けど、事実だからさ。どうするかなぁ~って思って、とりあえず、二人に会いに行ったんだよ」
「親父の家は、まぁ今まで住んでたから知ってたけど、母さんはどこにいるか知らなくてさ。探すのに手間取って……。
とにかく、そんな感じで二人には出会えたんだけど。案の定というかさ、二人ともオレの言葉なんて聞く耳持たず状態でさ。帰れとか顔も見たくないとかばっか言われて。それでも食い下がっていたらさ……」
*****
『誠……なんでそこまでして、オレに関わろうとする? お前はオレのことを恨んでいただろう? だから、この家から出ていった……違うか?』
『……恨んでるか恨んでないかでいったら、恨んでる。だってあの時は痛かったし、苦しかたし、怖かった。家を出ていったのは、その通りで、親父と居たくなかったから。親父のことは親としても見ていなかった。
けど、ここを離れて気づいたんだ。オレが思っていたより、親父は酷い人じゃなかったって。
だって飯は食えた。家もあった。学校にも行けてた。確かに、暴力を振るわれてはいたけど、それだって最後には消えた。近くにいたときは悪いところしか見えなかったけど、離れていい部分ってのが初めて見えたんだ』
『……………………』
『これはオレの欲だけど、オレはまた親父や母さんと一緒に過ごしたい。そして知りたいんだ。今まで見えなかった部分も含めて、二人のこと知りたいんだ』
『……お前がそういうなら……オレは……それでもいい』
*****
『もうあんたは関係ないでしょ? 私には関わらないで』
『そうだね……。もう母さんにとってオレはどうでもいい存在かもしれない。じゃあ、これだけは知っていてほしいんだ。オレが母さんに感謝しているって』
『感謝? ……どうして? 私はあなたに酷いことをしたのに……私はあなたを捨てたのに!』
『でも、それ以前に母さんはオレの母さんだから。母さんがいなかったらオレは生まれてこなかった……。だから、産んでくれてありがとう』
*****
「オレが生まれたってことは、つまりそれまでは、オレを生んでもいいって思えるほどに、二人は仲が良かったのかなって。オレのことも別に虐待するほどじゃなかったのかなって。だったら、それはオレにも責任がある。そう思ったら、二人を仲直りさせるのってオレがやらなきゃ……ってね」
「……それで、お前はできたっていうのか?」
「ああ。だから戻ってきたんだが……知らないうちにオレ、知らない女の子と知り合いになってたんだな」
誠は、流菜とか呼ばれていたやつを見て苦笑いしながら答えた。
「誠……お前も意味わかんないこと言ってるからな」
だが、どういうことだ? こいつの気持ちはともかく、親は絶望の力で強められてはいなかった。なぜなら、絶望が強くなり異変が起こりだしたのは、今から三年ほど前からだからだ。
つまり、こいつの両親はもとから家庭環境は最悪だった。それなのに何故、仲を戻せた?
「まぁ、大体の事情は聞いた。完全には理解できないけど、真剣だったからな。事実だと分かったつもりだ。それで? 世界を滅ぼすんだっけ? させないぜ? 折角仲直りして、これからって時に、幸希に邪魔されいたんじゃ世話ないからな」
「ふん……。なら誠……お前も敵だ」
「おいおい……オレに勝てるとでも? 三人相手にするだけでもへばってたくせによ」
「それはこっちのセリフだな。あの時のオレと比べるな」
オレはそういって立ち上がり、誠と正面に立って向かいあう。
そう。オレはあの時とは比べ物にならない。
オレがこの世界に昔存在していたこと。
それを知り、未練を断ち切った時から、比べるのもおこがましいほどの力の差がある。
それに、こいつの知っているオレは、あくまで力を使用していない状態だしな。
『……………………』
睨み合い、今にも殴り掛かろうとせんばかりのところで――
「は~い! 待った!」
という声が聞こえた。
「そこまでだよ。幸希君! 誠君も駄目だよ? 喧嘩なんてしちゃ。暴力反対!」
「そうです! 乱暴は駄目です!」
「まぁ、あたしは止めないけど。暴れるならせめて外でやったほうがいいよ? こんな狭い場所じゃなくてさ」
「オレは……なんとも言えないかな? とりあえず、状況を理解したい」
また、人が来たか。大所帯だな。というか、なんだこのウザいノリは。
「よかった……。みんな来れたんだね」
「まぁね……でも」
「天見先輩。抜け駆けずるいです」
「う!?」
「確かに、待ち合わせ場所だってところに行ったら誰もいないしね。オレも同感だよ」
「先に行ってるんじゃないかと思って来てみたら、本当にいるんですから」
「自分だけいいとこ取りするのは、お姉さん感心しないな~」
「それに自分で設定したんですから、そこいるのが筋だと思いますよ? 天見さん」
「う……あ~~!! なんでわたしがみんなにこんなにも責められないといけないんだ~」
連はその場の人間どもに非難され、叫び声をあげる。
「いや……とりあえず落ち着けよ。お前」
そこへ、ペースを乱され、不完全燃焼気味の誠が声をかけた。
「つーか、幸希はいつの間にこんなに知り合いができてんだ……驚いたぞ」
「あれ? 『わたし』? 確かあたしの記憶だと、天見さんって一人称『僕』だったような……」
「うるさい。黙れ」
オレは騒がしくなっていくその場の空気を壊すように、割って入った。
「お前たちは何のためにここに来た? そんなつまらんコントをみせるためにここに来たのか?」
「……そんなわけないでしょ? あたしたちは……」
「幸希君を連れ出しに来たんだから」
「その目的を果たすまで、私たちは帰らないよ」
「それで、天見さん。ついていけないオレたちに状況を教えてくれないかな」
「あ……うん。えっと……」
……やっぱりか。こんな場所まで来るほどの奴らだ。そう簡単に帰ると思っていない。
だが、驚きだな。こんなにも多くのやつらが、記憶を思い出すとは。
オレの消去が不十分だったということか。
けど、よっぽどのことがない限りは、思い出すはずはないんだがな。現に、あの流菜とかいうやつは、オレの通っていた学校の生徒だろうし。学校内で会っているなんてことも考えられる。
それでも、今までは思い出してなかったのだから。
それ以上の何らかのトリガーがあったということか。オレには想像もできんが。
まぁ、そんなことは今更考えてもどうにもならないか。それよりも――
「いいだろう。オレから説明してやる」
オレの言葉に全員が視線を向けた。
だったらオレから言うまでだ。この絶望的状況を。
「簡単な二択だ。ここでオレを殺して世界も滅ぶか。オレが世界を滅ぼすかのな」




