42 開幕
「本当に来ますかね?」
疑うような表情でイルマが言った。
今は騎士団より借りた量産型全身鎧を装備している。
最高級品では勿論無いが、これですら本来は彼女の階級の諜報部員では貸出しが許されるような物ではない。
騎士団内にコネの有るニコラウスの暗躍、会議で出来た上層部との面識、そして何より空きの有った男性用Sサイズがイルマにピッタリだろうということから特別に許可が下りたのだった。
梱包されたこの鎧が宿に届いた日、借り物とはいえ初めて魔鋼兵装を装備できることにワクワクしながらイルマはフィッティングを行った。
しかし、合い過ぎるバストと妙に空きの有るウェスト、少し詰まる感じのするヒップから全てを理解した後に普段の5割増しの胸筋トレーニングをしてから泣いて床に就いた。
「うん? まあ、十中八九な」
トゥレスが適当に応える。
こちらは何時もの革装備だが、防寒と対弾目的で追加の毛皮パーツを各所のハードポイントに取付けている。
しかし、どちらも今はその戦闘用装備を他者から見られる事は無い。
2人とも白いフード付きのポンチョのような外套を羽織っているからだ。
今居る冬の山中で身を隠されれば、酷く見つけづらくなる事だろう。
「一緒に中を探ったじゃねえか」
そう言うトゥレスの視線の先には、いくらか開けた場所に建てられた小さなコテージが有った。
有った。
そう。過去形である。
コテージは、今は炎に包まれていた。
ぱちぱちという木材の焼け爆ぜる音が響いている。
火を放ったのはトゥレスである。
事前に周囲の木の延焼しやすそうな部分は切り落としており、周囲の積雪を利用出来るため消火も容易。森の側で生まれ育ったトゥレスは山火事にさせないための技術も心得ていた。
報復的な面も有るのかもしれないが、正直、どちらかと言えば都会寄りのウィケロタウロス出身のイルマはその容赦無い選択と妙に手馴れた対処に少し引いていた。
「ううん……。確かに中距離用の転移陣が仕掛けて有りましたけど」
「だろ?」
ウノ達の性格を考慮してトゥレスが存在を予測、調査の末発見した転移陣を有する山中の秘匿拠点。
ウィケロタウロスの〈鷹羽〉拠点をベネットらが強制捜査に踏み切れば、追い詰められたウノ達ギルド上層部は何らかの手段で ――考えられる最も可能性が高い物が転移陣の使用だった―― 秘密裏に脱出するのは予測できていたため、脱出用転移陣の有る建物を攻撃して炙り出すというのがトゥレスの構想だった。
「でも他の誰かが使ってる物だったりしたら」
「大丈夫だって。埃も被ってたし、位置的にもここは儂らの出身地であるカルメへ向かう方角だ。居場所を無くした奴ってのは大抵自分が以前に暮らしてた場所に向かうもんだ。まず間違いねえ」
「逃亡者追跡関連でそういう話を聞いたことは有りますけど……」
あまりに自信満々のトゥレスにイルマは不審そうな目を向けていたが、ふと有ることを思い出す。
「あの、確信の理由は中で見つけて『やっぱり有った』て言ってたマークですか?」
トゥレスはすぐには口を開かなかった。
「……そんなこと、儂言った?」
視線を燃え上がるコテージから外さないまま、言う。
「言ってましたよ。〈鷹羽〉内部では見た事無いですけど、ウノ達上層部が使っている目印か何かだったんですか?」
「……うぅむ、ちゃんと覚えてねえなあ」
「はぁ……」
あからさまに何か隠しているな、とイルマは思う。
疑いの視線を向け続けるイルマを見て、トゥレスは申し訳無さそうに頭を掻いた。
「すまねえ。確かに言えねえ、言ってねえことも有るんだ。儂の我侭を許して付いて来てくれたイルマちゃんに今更隠し事ってのは悪いとは思ってるよ」
「……いえ、私も自身の手で決着を付ける機会が頂けるだろうと思ってこの作戦に乗ったんです。他の方からすれば抜け駆けや、独断で逃がし得る危険を容認したと見られるかも知れませんが、どの道捜査部隊が〈鷹羽〉の本部に踏み込む形を取るなら上層部を取り逃がすことは避けられなかったんでしょう? そしてトゥレスさんは直接対決出来ないのであれば手を出さない積もりだった……。他に漏らさない条件で参加させてもらえただけで文句は言いませんよ」
イルマが言う。
「……そうか」
理解を示す度量が有り難く、考え方は潔く、そしてそれらが好ましい。
トゥレスは歳若い少女の在り様が嬉しくて、そっと赤毛の頭を撫でた。
優しげな感触にイルマは恥ずかしげに頬を染めるが、トゥレスの表情を見て妙に冷静になると、きっ、と睨み、
「そんなお爺ちゃんが孫見るみたいな眼で微笑んだり慈しむ様に頭撫でたってニコポもナデポも成せやしないんですからね! 少っと武者ん良かけんて、そぎゃん気合の足らっさんスタイルで落とせると思いなすなよっ!?」
「にこぽ、なでぽ? なんだったけそれ。前世で読んだのにそんなフレーズが有ったような無いような……」
「ハッ!? 薮蛇ッ!?」
気の抜けた会話になり始めた、丁度そんな時。
「ッ! トゥレスさん、〈土気〉の震動を感知しました。数と重量からしてやはり3人です」
弾かれたように燃えるコテージへと視線を向ける。
中から若い男女の悲鳴のような物が聞こえて始めていた。
「来たか。奴らが出てきたら予定通りに、な」
トゥレスはにやりと強く笑い、外套と入れ替わりでスロットから長弓を展開する。
「……ええ。ですが、出てきた時にもしも3人揃ってたら?」
「そんときゃイルマちゃんは撤退して騎士団に知らせてくれ。森山の中に居る以上、儂なら無補給で数日は足止め出来る。やりたいことじゃねえけどな」
矢を番え、コテージに向かって弦を引き絞る。
ぎしぎしという弓の木部が軋む音が聞こえる。
「まあ、2人で出て来ねえことは1%有るかどうかだと思うけどな」
右眼の前の空間に水で出来た複数枚のレンズが構築される。
〈源世界〉での眼鏡作成時の検査のように、複数重ねては一部を別の物に替えるなどして幾つかのパターンを試し、見たい物へのピントを正確に合わせて行く。
「……〈徹甲矢〉」
言霊を発すると同時にトゥレスの指が矢羽からが離れた。
木枝の間をくぐり、炎の生む風を押し退けて流星の様に飛んでいく。
白い燐光を放つ矢は、燃えるコテージの窓から内部へと滑り込んでいった。
〈金気〉の乗った矢弾は障害となる物を全てすり抜け、正確にコテージ内部の重要な柱を抉り砕いた。
トゥレスのあだ名は〈とんび〉
自身の〈光鷹〉と比較させて引き立て役にすべくウノが流した物だったが、黒精人種の遠距離攻撃への適性も作用し、その視力は猛禽のそれと呼ぶにふさわしいものが有った。
唯でさえ燃えてボロボロだったコテージは、それをトドメとしてべきべきと音を立てて崩壊していく。
「う、うわあ。本当に2人で出てきましたね。残り一人は下敷きかな……」
コテージから脱出した者達を見て、顔を引きつらせながらイルマが言う。
「言ったろ? あの2人がもし片方を見殺しにしても許される状況を得たなら、ほぼ間違いなく謀殺の希貨とするってよ。ほんのちょっと背中を押してやりゃあこうなるのさ」
悪い笑みのトゥレスが見る先、這う這うの体で脱出してきたのはウノ・イェーガーとホンファ・セミナーティ。
かねてよりトゥレスとイルマがこの日に対峙すべき相手として見ていた者達だった。
「やっぱ、負けて残されたのは即応の体力に劣るデリアだったか。これで望み通りの形になった。ああ、デリアの奴の方が治癒役だし、押し潰されてもしばらくは死なねえだろうから気にしなくて良いぜ」
「……恋敵だからって理屈では理解出来ますけど、気持ちは全く分かりませんよ。どうやったら幼馴染をそんなに憎めるのか」
軽く言うトゥレスに、少々暗い調子でイルマが言う。
「さてな。もしかしたら」
何かを続けようとして、止める。
「もしかしたら?」
「いや、良い。イルマちゃんは分からないままで。そのままの方が、な」
そう言って、ゆらりとトゥレスがウノ達の方へ歩き出す。
置いていかれそうになったイルマは慌ててその後を追った。
マーティン・デヴォニッシュはウィケロタウロスの街を駆けていた。
「くそっ、くそっ、くそっ!」
クロークで身を隠し、怨嗟を吐き出しながら。
〈蟲の魔窟〉での合同探索以来、外を自由に歩き回る事が出来なくなったマーティンは苛立ちを募らせていた。
デヴォニッシュ家がウィケロタウロスを掌握する計画も遅れることとなり、裏でマーティンが原因だと愚痴っていた使用人は八裂きにしてやったが気分が晴れない。
さらには母親は慰めてくれたと言うのに父親は何も言わなかった。
案に責められているような気分だった。いや、マーティン本人はそうだと確信していた。
〈俺は何も悪く無いのにっ! もうちょっとであの女を手に入れて、うちも領主になっていたのにぃっ!)
いつか必ずや行いの報いを受けさせる。そう決意した者達の姿が脳裏に浮かぶ。
清い自身を嵌めた黒髪黒目の魔人種。
正しい己を切り捨てた〈魔絶の刻印〉全員。
美しい気持ちを裏切ったキツネ人種の娘。
そして最も気に障ることをした金髪の餓鬼。
〈このままじゃ済まさない。あいつら皆殺しの刑だっ!)
数十分前、デヴォニッシュ家に強制捜査の依頼を受けた冒険者たちの集団が現れた。
先頭に立っていたのは良く見知った獣相系の男、イェンロウ・ダンフォルソだった。
かつての上役であり、何時か始末してやろうと思っていた相手だ。
逃げようとした不届きな使用人たちを痛めつけて捨て置いたことで時間を稼ぎ、マーティンはすんでのところで裏口から脱出することが出来た。
家が利用していた〈鷹羽〉との接触を試みたが、どうやら同時に捜査に踏み切られたらしく、上層部も行方不明で向こうも混乱しているらしい。
使えない末端の者から自分の情報が漏れないように切り捨てて路地に放り込み、商売のためにウィケロタウロスを離れていた両親、身動きの取れなかった自身に代わって〈変り種〉成敗する策を進めているはずの師、ウェイヨンと合流すべく唯走る。
街を離れなければいけないかも知れないと不安が心を過るが、それ以上に強い野心が彼を炙っていた。
(今は、今は勝ったつもりで居ると良い。だがな、最後に勝つのは俺達だっ!)
一度だけ振り返り、壁内地区の方角を睨みつける。
マーティンは決意を新たにしようと、
「あー、良い感じに黄昏ている所みたいで大変悪いんだが……」
邪魔が入った。
明らかに自分へ向けられていた声の距離と方向。
振り向いた瞬間、マーティンは怒りで視界が赤く染まるという貴重な経験をすることとなった。
頭上で、黄色の信号弾が炸裂音と閃光をぶちまけていた。
横転した馬車。打ち倒されて地に伏せた従者達。対峙する3人の男女。
「悪いね、秋人」
「……おー。遅かったなニコラウス」
ウィケロタウロスと外の都市を結ぶ道で、ニコラウスは数十年来の親友と合流した。
ニコラウスと似たボディアーマーを主防具とする冒険者らしい出で立ちをした、一部、頭頂部の毛の薄い白髪頭の老人。
もう75歳になるはずだが、皺を刻みつつも精悍な顔立ちをしており、170センチそこそこの身体は背筋が伸び、みっちりと健康的な筋肉を詰め込んであった。
名前は永田秋人。
ウィケロタウロスで活動する現役冒険者で唯一のスロット9到達者であり、肉体年齢で行けば間違い無く最年長であるため〈長老〉のあだ名で呼ばれている男だ。
名前で分かる通りの転移型セトラーで、ニコラウスの母に冒険者としての指導を受けた兄弟弟子であり、私的にも義兄弟のようなものと言って良い間柄の人物であった。
「ごめんごめん、うちの子を送り届けるのに遠回りしちゃってね」
「ふーん、ま、良いけどな」
素直な表情で謝るニコラウスに、大して気にした様子も無い永田。
ニコラウスが現場に到着した時、彼は右手に白魔鋼の三葉飾の大剣、左手に赤魔鋼の誤謂造の幅広剣の二刀流のスタイルで一組の男女と対峙していた。
身なりの良い、どちらも3、40歳代に見える基人系。
いや、正確には黄色人種に見える2人組だった。
男は白魔鋼製の長剣、女は赤魔鋼製の長杖を武器としている。
2人の構えは中々堂に入った物で相当な技量を感じさせたが、酷く息を切らしていた。
警戒は続けつつも、ニコラウスの到着で永田の攻勢が途絶えた今を貴重なインターバルとして態勢を整えようとしているようだ。
「じゃ、俺はこれでお仕事コンプってことで」
しかし、警戒する2人を尻目に永田は二刀をスロットに仕舞い、余裕有る、というか気の抜けた動きで戦闘していた男女から離れて行く。
その動きを見てニコラウスは不満そうな顔をした。
「ええ? 『別に倒してしまっても構わない』って言っておいたじゃないか」
「はん。お前が動かなきゃ俺がどーしてたか分かってんだろ? 約束通り時間稼ぎはしたんだ。わざわざ意に反したことをやってくれたお前を楽にしてやる気は無いよ」
「ケチジジイめ」
「言ってろよ。お前のが年上のくせに」
遠慮の無い軽口をたたき合い、緩く手を振って永田は去っていった。
「さて」
ニコラウスが振り返ると、幾分回復したらしい男女が顔に喜色を浮かべていた。
「嬉しそうですねぇ」
「〈便利屋〉のニコラウスだな? 貴様の差し向けたのだろう〈長老〉が居なくなれば、私たちを止められる者はもういない」
「セトラーを嗾けて高等種たる者同士でぶつけあおうだなんて、なんて悪辣。万死に値します。……直に縊り殺してあげますわ」
「僕では貴方がたに勝てない。そう言いたいので?」
薄ら笑いを浮かべてニコラウスが尋ねた。
金子哲久とキンバリー・デヴォニッシュ。
この壮年の男女はかつて上位冒険者として名を馳せたセトラーとリアクターのコンビだった。
そして、マーティン・デヴォニッシュの両親でもある。
「スロット9の〈長老〉が相手ならばともかく、我々と同じスロット8の貴様1人じゃあな」
「デヴォニッシュ家に歯向かった報いを受けて頂きます。地獄で後悔するのですね」
「2対1。だが貴様も刺客を送るような真似をしてくれたんだ。卑怯とは言うまい?」
怒りで歪んだ表情で武器を構え、2人がニコラウスににじり寄る。
「ぷっ」
そこでニコラウスが噴き出した。
「ふっ、くふっ、ふふふふふ」
笑う。
堪え切れないように。
肩を揺らし、腹を抱えて。
「あはははははははははははははははっ」
「何が可笑しいんですかっ!?」
吊り気味の目をさらに鋭くしながら、キンバリーがヒステリックに怒鳴りつける。
金子の方は不気味なニコラウスの態度を警戒し、剣を構えたまま動かずにいる。
「何が、何が可笑しいって、あははははははは」
「このっ! 笑うのを止めなさい!」
声が裏返る程に笑うニコラウスに向かい、キンバリーが杖に魔力を注ぎ込もうとする。
だが、
「君らのお花畑な脳味噌より笑えるものもそうそう無いねぇ」
それより速く、酷く冷たい声でニコラウスが言った。
一瞬で踏み込み振るわれたニコラウスの三葉飾の大剣は、キンバリーの杖を真中で叩き切っていた。
前衛の金子すら反応出来ない速度だった。
「「なっ」」
「どんな事を考えれば僕が秋人より弱いなんて結論になったのやら。そうでなくとも二十歳そこらで前線を引いた程度のガキが良く粋がったことを言える……」
嘲るように言って、固有空間から〈六杖鍵〉を引き摺り出す。
「『さんきしめすかげども そえられしはひとふりとぐんぜい くさびたるはこわれたおんがらす ななつのこはいつかなく くさったたましいがむかいあうよのおわり』」
凄まじい練度で口から流れる高速の詠唱。
莫大な魔力が収束する。
加えて、「これからそれをお前達に向けるぞ」というあからさまな悪意を感じた金子とキンバリーは全身から血の気が引いていくのを感じていた。
「〈シャドウダイバー〉」
ニコラウスが大魔法の名を告げる。
かき集められた魔力が世界を捻じ曲げていく。
「な、何だ!?」
「ひっ、き、気持ち悪いぃ……」
ニコラウスの影から、金子の影から、キンバリーの影から、横転した馬車の影から、モノクロの人型がずるりずるりと這い出して来る。
二丁の拳銃を持つカジュアルな装いの少年。
二本の短剣を持つロングコートの女。
長ドスを下げた和装の男
デニムのジャケットとパンツを着た徒手の少女。
彼らは皆、肌まで灰色と人間味の無い色彩をしているというのに、妙に活きた眼をしていた。
4体に分割された魔力は、それでも熟練の魔法使いであるキンバリーが扱える最大量にも匹敵している。
ニコラウスと共に、5人で金子とキンバリーを取り囲む。
「僕が秋人に劣らない所を証明するのも悪く無いけど、僕一人なら手本になる戦い方を徹底する必要も無いからね」
ニコラウスは最近妙に真面目だった反動か、久々に、そして実に胡散臭い笑顔を浮かべた。
「早急に押し潰させてもらおうか」
「トゥ、レスッ……! お前の仕業かぁっ!」
「儂のアパートも、集めてた本も、何もかも焼いてくれやがったからな。仕返しには良い趣向じゃねえか?」
「ホンファ・セミナーティ。拘束させて頂きます」
「はぁ、無能な治癒役を始末出来て良い気分だったのに嫌な顔に遭ったもんだわ。スロット2の分際で5のアタシに勝てるとでも思ってんの?」
「トミー・タウンゼントッ! どの面下げて俺の前に出てきやがったぁああああああっ!?」
「あっ、えっ? な、名前そっち? 情報が更新されて無いのか……? いや、別に良いんだけどな。そっちの認識なんて」
各所で戦いが始まる。
「お互い、一泡吹かされて御相子になった所で丁度良いと思わねえか? ケリをつけようや。兄弟……」
トゥレスは不敵に笑い、気軽な調子で言った。
「ウィケロタウロス騎士団二等騎士、イルマ・ジャネス。……参ります」
真っ直ぐに相手を見据え、イルマは自身の両拳をがちりと打ちつけ合った。
「俺の名前なんて確かにどうでも良い話だ。だが、しばらくは付き合ってもらうぞ」
黄色い閃光の下、分が悪いと言われた戦いに挑む緊張を滲ませて、丘崎は言う。
懐から出した一枚の祈念札を掲げた。
その札の名は〈祈念札・闘式〉という。
「『丘崎始-マーティン・デヴォニッシュ ホスティルサーチ』……」
起動に必要な相互の闘志を計測するため一拍の間を置き、
「『コンバット』!」
宣言と同時に祈念札を放り捨てると、中巻柄の両手剣をスロットから展開する。
闘争の結界は、柔らかに周囲の部外者達を押し退けて行った。




