23 閑話 残骸と〈付き人〉
学校の体育館ほどの規模の空間。
状況を構築するのは白と黒の日本刀を持った灰色の髪の少女と、大剣を持ち、明るい金髪に若草色の目をした大柄な老人。
少女はドレスの要所要所に装甲を取り付けたような防具を着ているが、服部分には和服の、装甲部分は日本の甲冑を思わせる意匠が見られた。
髪色に合わせてあるのか、グレーをメインに白と黒を配したモノクロームだ。
一方老人の方は薄汚れたボロ布を体に巻きつけたような出で立ちだった。
少女は軽やかに、そして鋭く舞うように双刀を振るい、老人は踏み込みの度に足元の床を蹴り砕いて跳びかかる。
幾度となく剣を交わしては耳障りな金属音を立て、剣や四肢から光弾を放っては撃ち落とし合う。
破壊の余波が、白い壁面を削り取っていく。
粉塵が舞っていた。
少女は疲弊していた。
全力で無ければ押し負ける。技を途絶えさせれば潰される。
現在のこの世界においても指折りの戦闘力を持つ彼女だが、それでも拮抗させるのが精一杯。
口の端から涎を垂らす虚ろな表情の老人はそれほどの実力を持っていた。
技巧で言えば少女の方が遥かに上と言って良い。しかし、老人は異常だった。
あらゆる速度が。
腕力が。
耐久性が。
ただ力を振り回すような戦い方でしかないのに、ポテンシャルだけで少女を追い詰め、受け身の状態を強要される。
老人の表情は虚ろなままで、果たして全力を出しているのかも分からないが、今の時点で既に巨大な竜を相手にさせられた時のような苦戦を強いられていた。
そして、全身に小傷を帯びても全く動きの衰えない老人に、体力を削られた少女は押されて行った。
凄まじい腕力で、老人が大剣を薙ぎ抜く。
「おわあっ!」
名工が鍛えた細い二刀は、数倍する重量の大剣を受け止めても傷つくことすら無かったが、衝撃を吸収することは出来ずに少女の身体が浮く。
不快な浮遊感と、魔法で強化した身体で受け止めきれなかったことの動揺を感じながら少女は壁面に叩きつけられた。
「ごふっ!」
軽く柔らかなはずの少女の肉体が衝突しただけで、分厚い白壁にヒビが入った。
まるで交通事故のような衝撃。
全身に展開していた防護を破られ、衝撃緩和の肉体強化は貫かれ、少女の身体にダメージが通る。
受け身を取るため、ほぼ無意識に頭部により強力な防護魔法を上掛けで展開出来たのが幸いだった。
彼女の幾年にも渡って積み上げてきた戦闘経験は主人を裏切りはしなかった。
「……あ、……かはっ」
しかし、耐えきれる衝撃だったわけでもない。少女は口の端から鮮血を漏らして膝を付く。
軋む体に鞭打って身を起こすが、金髪の老人が若草色の目を虚ろに光らせて迫るのが見える。
老人は上段に振りかぶっている。
今度の斬撃は、避けられない。
(ここまでか……)
心に浮かぶ諦めと同時に、
「レベル1だ! やれっ!」
耳に届く聞き慣れた声。
珍しく焦りをはらませた、低く、深く、しかし良く通る独特の声。
状況、意味、意図、全てを察し、答が出る。
(〈勇者アルセリア〉 レベル1 制限形態!)
平時には彼女自身を示す名の能力を心中で叫んだ。
そして、老人の大剣が振り下ろされる。
少女に叫んだ声の主、仏頂面をした黒髪黒目の青年が少女に代わって老人と鍔競合っていた。
青年の得物はシンプルなデザインの両手剣だが、刀身が鮮血を塗りたくったような赤に染まっている。
「恵理、理亜、遅れたな」
青年は押し合う老人から視線を逸らさぬまま、背後の2人に声をかける。
壮年の男性を思わせる低い声だったが、外見からすると20代半ばだ。
下はスニーカーとベージュのチノパン。
上はダークグリーンのモッズコートという、少し場違いな格好だった。
老人に対して睨みつけるような表情だが、実態としては彼の中に激情は無い。
仏頂面こそがデフォルトである青年だった。
先ほど灰色の髪の少女を狙った老人の一撃は、天井、壁、床まで一直線に裂いて見せた。
それが残した亀裂の左右に分かれて、息を荒くした2人の少女がいる。
灰色の少女とは色彩の濃淡が異なるが、顔立ちは同一だ。
黒い脇差を持つ黒髪の少女。白い刀を持つ白髪の少女。
甲冑付きドレスも同じデザインながら、それぞれの髪色に合わせて色彩が変わっている。
彼女たち2人が、灰色の少女 〈勇者アルセリア〉の正体だ。
亀裂を生んだ正面からの斬断は、今の2人の姿に別れることによって強引に回避したのだった。
「本当に遅いよ、御爺」
「母娘共々ここで終わりかと思いましたよ。義父さん」
膝をついた白、尻餅をついている黒の順で言う。
祖父、そして義父と呼んだ仏頂面の青年を責めるも、2人の声色と表情には安堵が有った。
「お前たちが暴れ始めるまで、位置の把握に手間取ってな」
青年は表情をそのままに弁明して、
「〈紫の剣〉」
とても紫には見えない血の色の剣をそう呼んだ。
「行くぞ……!」
声と同時に青白い燐光が紅い刀身に纏わりつく。
赤と青の二色が重なった時、確かにその剣は紫にも見えた。
「ふん……!」
力のこもった呼気と同時、青い燐光が軌跡を描く。
動作は野球のバッターを思わせる振り抜き。
青年の人外の膂力によって、大剣ごと弾き飛ばした。
大柄な老人の体が相当の重量の有る大剣諸共、斜め上に吹き飛んだ。
「馬鹿力だね、御爺」
白色の少女が呆れたように言った。
今度は老人の体が逆側の壁面に叩きつけられ、壁面に放射状に大きなヒビを入れる。
少女の時とは全く異なる規模の破壊。
老人の体は壁面にめり込んですらいた。
しかし、老人は何も無かったかのように床に飛び下りて見せる。
「義父さん! 気をつけて!」
黒色の少女が叫ぶ。
老人の口の前に光球が構築されていた。
灰色の少女が交戦した際、空間を散々に削った技を繰り出そうとしているのだ。
『彼女達』では避けることしか出来なかった物だ。
「レベル2 通常形態 ……霊典開放」
青年の言葉と同時、老人の光球が伸びた。
棒放射状に放たれた破壊力が、青年を、そしてその背後で身動きの取れない白黒の少女らを飲み込む。
「……なるほどな。何度か外からも見えたのはこれか」
青年は仏頂面を変えることなく言った。
光の放射は一切通っていなかった。
青年の左手には青白い光で出来た厚い本のような物が有り、そこから飛び出した光のページが青年の前方に浮かんでいる。
光の本とそのページが構築した守護の力が青年とその背後を守ったのだ。
少女ら二人を守るように展開したため、背後の壁面はドーナッツ状にくり抜かれたように消滅していた。
「お前達、離脱を試みて被弾する危険を冒すよりは、ここで身を守った方が良いだろう」
青年はそう言って両手剣と光の本を後方に放る。
青い燐光を纏った両手剣はくるくると回ってから少女達の前で柄を上にして本と共に宙に浮かび、本に追随して移動した光のページが二人を包み込む。
「御爺、この剣無しで大丈夫なの?」
「問題無い。次の隠し玉を使うからな。〈対烏〉」
青年が呼ぶと、ひどい軋みの音を立てて両の手に一丁ずつ拳銃が現れる。
名の通り、かつてはあるカラスの仲間を意味する名で呼ばれた拳銃をベースとした物だ。
その全体が烏の濡羽の光沢を持つ濃紺に塗装されていた。
「ピストル!? 義父さん、それはリミッターがかかるんじゃ」
「少しひっかかったな」
リミッターというのは、この世界で神とされる者たちが付与した世界の制限だ。
それの対象は様々だが、最も代表的なのが銃火器の存在を許さないことだ。
本来は図面を引くことですらそれに抵触し、破壊されてしまう。
何故か、青年の拳銃は軋み音を立てさせられるだけで済んだが。
「こいつも異界からの持ち込み品だ。ここの神気取り程度で潰せるような物じゃないが、見た目はそこらの拳銃だからな。甘く見て喧嘩を売ったんだろう」
銃に視線を落とし、どこか呆れたように青年は言った。
「レベル2 通常形態」
言葉と同時、黒くぼやけたモヤのような物が双銃を包み、直ぐに消えた。
「霊典の守護の外に出てくれるなよ」
少女たちに言って、老人の放つ二発目を避けるべく跳躍した。
相変わらずの仏頂面、足裏のゴムの焼けた跡と匂いを撒き散らし、青年は引き金を引く。
脚は止めず、指も止まらず、濃紺の双銃は全装弾のはずの17発を撃ち放っても9ミリの弾丸を吐き出し続けている。
よく見れば二丁の拳銃はブローバックしているのに空薬莢が排出されてもいない。
老人は変わらぬ虚ろな表情のまま、たかるハエを振り払うように大剣を振り、口から小規模な光流を放つも全て回避されている。
確実に頭部と胸部にのみ飛んでくる銃弾は、体表に展開された防護魔法で弾き飛ばしていた。
「……業腹だが、やはりパワーが足りんな」
青年は毒づき、一層深く踏み込む。
読んでいたのか、老人が最速の上段を打ち込む。
「鈍い」
青年が言った時には、大剣は左の銃のグリップの底を捻るように当てられて、外側に逸らされていた。
力もろとも受け流され、床の石材を裂き、破片が浮き上がった。
「こいつは、どうだ?」
青年の右腕が突き出された。
銃もろとも。
「ぐきょっ」
老人の口から、声というよりは「音が出た」とでも言うべき物が漏れる。
老人の前歯をへし折り、銃口が口内に突き込まれていたのだ。
「獲った」
こもった炸裂音が十回響いた。
しかし、
「こいつ……!」
青年が仏頂面をさらに不機嫌そうに歪めた。
老人は口の向こう側に大穴が開けられても視線を逸らさず、青年の右腕を万力のような握力に掴んで来ていた。
「ぐぅっ!」
軋む腕に青年が声を漏らす。
「もらった」
老人が、初めて言葉を放った。
いつの間にか目にも光が宿っている。
「……何だと」
「もらった業腹もらったモラッタゴウハラもらった貰ったもらったもらったもらったもらったせかいもらったもらったもらったもらったもらったもら」
ぞわりとした不快感が、青年の背筋を走った。
濃紺の双銃を手元から消し、今度はどこにでも有るようなナイフが一本、左手に出現する。
「〈斬価〉 レベル1 制限形態」
三つ目の隠し玉。
ナイフにスパークのような赤い光が生まれ、右腕を掴む老人の手首を斬り落とした。
灰色の少女の二刀はこの世界でも最高級の業物と言って良い品だったが、それでも傷を付けられなかった老人の肉体を切断したナイフは、明らかに戦闘用ではないテーブルナイフだった。
老人の胸に前蹴りを放り込み、その反動で逆方向に距離を取った。
「もらった。ありがとう」
蹴り倒された老人は起き上って無表情に言う。左手首を落とされたことはさして気にもしていないらしい。
むしろ脳幹や小脳をズタズタにされて平気でいることの方がおかしい。
「そうか、良かったな」
青年は苛立たしそうに言いながら、力を失った老人の手を右腕を振って足元に放った。
ちらと左手に視線を落とすと、三つ目の隠し玉を使った反動でナイフが柄だけ残して砂のように朽ち果てていた。
斬断の事象を構築するために刃を消費してしまったためだ。
「業腹だな」
「ごうはら?」
「……ああ、業腹だ。とっさにお気に入りのナイフを使ったからな。あと一振り一本刃物をダメにする燃費の悪い力も気に入らない」
「ごうはらって、何?」
「……腹が立ったら使う言葉だ」
無邪気な子のような口調の老人に、自身でも変な口癖だと自覚しているので教えてやる。
「ほー」
無感情な声だが、どうやら感心したらしい。
「もっとほしい」
「くれてやる物などこちらは無い。が、勝手に持って行くつもりなんだろう?」
「そうなる」
「だろうな……。だが、そうはいかん」
青年はふん、と鼻息を吹いた。
「一応、他の三つも実績は十分に有ったんだがな。倒し切れないなら仕方ない」
吐き捨てるように言った。
「〈百命獣〉」
最後の隠し玉だった。
しかし、これまでのように青年の手元に何かが現れることは無く、代わりに頭上に有った空間が割り砕かれた。
何も無い空気が、まるでガラス面のようにだ。
無論破片など無い。
割れた空間から突き出されたのは、人間も掌に乗せられるであろう巨大な黒い機械の右手。
腕はすぐに引っ込み、突き出てて来た真っ暗な向こう側へ帰っていく。
ただ、機械の掌に乗せて有った黒い物体を青年の手に落として行った。
穴の開いた空間はすぐに消えていった。
それは縦長の六角柱のような形状だった。
六角形の部分は1メートルほどで、最後部に上下で繋がったグリップがついている。
全体のシルエットとしては長い銃にも見える。
表面は金属製の装甲板が付いているようだが、継目が有るでもなく、ただ内部が見えなければいいとでも言うかのように装甲面同士でスリットになっていた。
「手元に転送も出来ただろうに、演出過剰な……」
青年は嫌そうに顔を歪め、黒い銃に似た物体のグリップを握った。
老人の視線も、じっとそれに向けられていた。
「おい、これも欲しいか?」
「いやいらない」
反射のように応えた老人に、青年は彼にしては珍しくふっと笑った。
悪意有る笑みだった。
「正直、俺も同感だが……」
「いらない。ほしくない。いらない」
「そんな寂しいことを言ってくれるな」
青年は機械銃を老人に突き付ける。
「レベル4 干渉形態」
装甲板が本体から離脱し、青年の周囲にゆらゆらと浮遊。本体は隠されていた鉄色の機械部分が露になる。
形状を固定していたロックボルトが弾け飛び、剥き出しの機械部分が変形していく。
グリップ前両側面と下面に金属板の羽が付いた開口部が有り、寝かされていた羽が鰓の様に展開。
グリップ上部が上にスライドし、移動分で出来たスリットから結晶体が覗く。
最後は銃身下部が下に割り裂け、口を開いたイヌ科の動物のような形状へと変化した。
「何もかも借り物の力で、というのは業腹だが……、加減をするにも貴様は危険過ぎるんでな」
展開した金属板や各部のスリットから緑の光が漏れ出していく。
裂けた獣顎、その間に一本の緑光の杭が生み出される。
老人は光杭が何を示すことを理解したわけではない。
だが、それを絶対に身に受けるわけにはいかない物だという認識だけが確かに有った。
攻撃に関しては受けるのみであった老人が、この時は回避可能な場所を探して最寄りの大穴を、
「逃がさん。行け」
青年の言葉と同時、宙に浮いていた装甲板が緑光の軌跡を描いて老人に殺到した。
黒い装甲板は一枚一枚が刃のようになっており、腕を、脚を、腹を、胸を、頭部を貫いて老人を宙に縫いとめる。
身動きの取れなくなった老人に、青年がゆっくりと近づいていく。
光杭を咥えた機械銃を突きつけたままだ。
「叶うことならば、貴様を連中から引き離すべきだったんだろうな。貴様を名分と餌にして世界をだまくらかしてたのだから」
青年は僅かに険しくなった仏頂面で言う。
彼の中に有るのは怒りではなく、ある種の呆れと憐れみだった。
老人の前まで来ると、右ストレートの準備動作のように腕を引いた。
「また会う事になるやも知れん。俺が持ち、先程貴様が得た〈必然〉がそれを必要とするならな」
突き出す。
空気を裂き、光杭を咥えた機械銃が老人の胸に突き立てられた。
「だが今は、貴様は終われ……!」
青年はトリガーを引いた。
「殺したの?」
回復した白色の少女が、大穴の前に立つ青年と並んで言った。
老人は光杭を打ち込まれてしばらくした後、全身を光に変えて老人自身が開けたこの穴から飛び出していったのだ。
「分からん。正直生命を持つのかも怪しかったが……。とりあえず存在を揺るがしてやったから当分は目立った行動は出来んはずだ」
「強敵でしたね」
さらに、黒色の少女が後ろに。
「奴自体には、瑕疵は無かったのかも知れんがな」
「どういうことですか?」
「現時点のお前たちでも押し潰されるような相手だ。今のこの世界に生きる者で対抗出来る奴はおらんだろうよ。神域者だ」
「あれがカミサマねえ。普通の人間に見えたけど」
「本来ならば奴の始末をお前たちがさせられる予定だったんだがな」
「うぇ、冗談だよね」
「無理でしょう? それ」
「そのためにお前たちはこの世界に引き摺り込まれたはずだ。もっとも、今の年頃で相対させる気は無くてより成長した段階でぶつけさせる積もりだったか。それかただ可能性が有るだけの存在を当てて使い潰す気だったのかは分からんがな」
青年の想像を聞いて、白黒の双子のような少女たちが嫌そうに歪めた顔を見合わせる。
「正直御爺に鍛えてもらって無かったら今のレベルにもなれないよ……」
「義叔父さんに分離出来るようにしてもらえない前提になりますしね」
青年は仏頂面のまま、どんよりした黒い義娘と白い義孫娘の頭を左右の手でがしがし乱雑に撫でた。
「あだだだだ! 髪乱れるっ、乱れるからやめてよ御爺!」
「もうっ、リアはともかく私はもう41なんですから恥ずかしいですよ!」
保護者として慰めてやろうかと思ってのことだったが、拒絶されてしまった。
同じ顔、同じ表情で睨んでくる少女たちに、青年は思春期の娘を持つ父親の情を久々に味わった。
「……エリこそ41にしては稚気が過ぎる気もするがな」
とりあえず義娘の方をダシにすることに決める。
「そ、そんな馬鹿な」
「精々背伸びした子供程度の印象しか受けんな」
「あー、あたしもたまに同い年の母親っていうより同い年の姉みたいな気分になること有るよ」
「リアまでひどい! ちゃんと私あなたでお腹痛めたのに!」
「そうは言ってもお母さんの身体って、今は私のコピー使ってるじゃん……」
「そ、それは」
「というかお前、出会った頃より子供っぽくなってるだろう? まだ20代の雰囲気が有ったぞ。やさぐれてる所とか」
「歳取るにつれてどんどん緩くなったよね。体の年齢に引きずられてるのかな?」
「俺も数百歳の自覚とか無いから、そのあたりが妥当かも知れんな……」
「……そ、そうだ! お輪たちと合流しないと!」
黒色の少女が話題を強引に切り替え、別れている仲間の気配を探しながら戦闘が行われた建物から逃げ出した。
見送った義祖父と義孫娘は、余裕の有る速度で並び歩いて後を追う。
「これで、一区切りかな?」
「奴らの抱えていた負債であり、切り札でもあるさっきの男を倒したからな」
「あいつら、大人しくなると良いね」
「そうだな。だが、俺もお前達も異邦人だ。セトラーとは違う」
青年は落ち着いた声で言う。
白の少女を諭すような声色だった。
「この世界に決着をつけるのは、やはりこの世界の者が相応しい」




