24 ??? その1
「餌獣の討伐に対し補充バランス良好。魂を宿す変異も確認されず。発生圏問題なし。ユーラシア中東部の過剰発生を誘発させたことで人口制御に成功……」
暗い部屋だった。
部屋自体はあまり広くはない。十畳も無いだろう。
だが、広いデスクと複数台のパソコンが有り、大量の配線が床に広がっている。
ディスプレイの光だけが、白衣を纏い眼鏡をかけた男の顔を照らしていた。
「流石は私……。ふふふ、新型の制御龍でも創ってやろうかな……?」
そして、ぶつぶつと何事かを呟きながらキーボードを叩く部屋の主。
楽しそうな声色だった。
「……程々にして置けよ」
「おや」
いつの間にか室内に現れ、声をかけて来た人物に視線を向ける部屋の主。
その人物は、赤い外套を着た艶やかな黒髪の美女だった。
「珍しいね。アーラが私のところに来るなんて」
「自分とて、理由が無ければフェストの所に来たりはしない」
「それはそうだ。それで、どうしたんだい?」
美女、アーラは部屋の主である男、フェストを正面から見据える。
「……『教団』が管理していた、『老人』が討たれた」
「……はぁっ!?」
フェストが声を上げた。
彼にとって信じられない内容だった。
それは、話を持ってきたアーラにとってもそうだった。
「デグでもやれなかったアレをか!? 一体誰が、いや、『何』がやったんだ!?」
「何らかの強力な攻撃で吹き飛ばされたらしい。遠方に飛翔していくことだけが確認されたが、ほぼ輪郭も崩壊したような状態だったそうだ」
彼らの言う『老人』なる存在は、他者が害せる様なものでは無いはずだった。
「情報が錯綜している。私の配下は断片的な情報しか持ってきていない」
「断片的というのは?」
「エリンが行方不明であることと、〈勇者〉の不明瞭な動向の噂は聞いているだろう? 老人が保管されていた教団支部付近で一緒に行動しているらしい」
「〈精祖〉が関わっているのか……。確かに彼女は私たちの傘下じゃないが」
「兎に角、老人の存在が感知出来なくなったのは確かだ。デグは既に教団を動かして老人が本当に消滅したのかどうか各地で調査をしている」
「……私の配下も動かして調べた方が良いね」
「こちらは出さんぞ。正直、そのまま消えてくれれば私は万々歳だからな」
「老人は利用出来るよ?」
「あれは強大に過ぎた。自身の手に余る物を扱う事を是とするならば、私はあんな物を生み出しはしなかった」
「ああ、それは確かに」
フェストは僅かに笑った。
アーラへの理解と共に、いくらかの侮りを含んだ笑みだった。
「いずれにせよ、何も起こらないはずが無い。気を付けるんだな」
アーラはフェストの態度に不快感を感じた様子も無く忠告し、現れた時と同様に何時の間にか消えていた。
「……正直、今更何が起こるかって気もするけどね」
フェストはそう言って背もたれに体を預ける。
薄く笑った。
「長く、本当に長いこと退屈だったんだ。正直、面白い事になってくれるなら、その方が私は嬉しいけどなあ」




