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カレンダーがめくられて数日。
学生の特権、“ロングサマーバケーション”が終わった。
学校内はそれぞれの土産話と、勉強に対する気だるさが、上手に混ぜ合わされていた。
ここ、奈良県にある都古大学でも。
奈良といっても、徒歩30分圏内に京都府境がある場所に位置しており、ここを奈良と呼ぶか、京都と呼ぶかは曖昧である。
大介は土産と気だるさをこさえて、乗っていた快速急行からホームへ降り立った。
近鉄大和西大寺駅。
計7路線、6種別の電車がせわしく行き来するターミナル。奈良線、京都線、橿原線のレールが交わる、複雑なポイントは圧巻だ。といっても、駅西側にある踏切を利用する人々にとっては、イライラの元ではあるが。
ここから大学までは、京都線で最寄駅に降りる方が便利だ。
丁度良く、ホームに停車していた京都行急行が発車しようとしていた。
大介が飛び乗ると、背後で何者かに肩を叩かれた。
「よう、大介」
「おお、釘宮か」
釘宮満―都古大学心理学科生、大介の親友だ。
テニスサークルに属する好青年。
「今年の夏は、大会で大変だったよ」
「どうだった?」
「2勝はしたさ、何とかね。ルーキーは辛いよ」
「そりゃ、大変だったな。
ほい、イタリア土産」
大介はイタリア製のパスタを手渡した。
「おっ!本場のパスタ!サンキュー」
「お前、食い物には目がないからな」
「よく分かっているじゃないか」
話が始まろうとしていた時、男が一人、割り込んできた。
「おう、大介!」
「先輩!」
色黒で少し背の高い、スポーツマン風の男
吉村雅希-都古大学考古学科生。
大介の所属する文化研究サークルの先輩。
「イタリア、どうだったよ」
「最高でしたよ。飯もうまいし、風景も良い」
「後で写真、見せてくれよ。
それより、頼んでいた土産。ジッポライターな。集めるの趣味なんでね」
「ああ・・・買ったんですけど、空港で没収されました」
「何だそりゃ!土産なしか?
菓子はいらんぞ」
「そう言うと思いまして、空港の免税店で買いましたよ。
セブンスター、1カートン。
後で、電車降りたら渡しますよ」
「おっ。サンキュー!当分、タバコには困らんな」
「吸い過ぎると、肺がやられますよ」と釘宮。
「俺の肺は、ハイパワーだ!どうってことない!」
「吉村先輩」
「何だ、釘宮」
「寒いっす」
「うるせー!」
この時、大介は思った。
まさか、元々ライターは買っていたが、それで土蜘蛛をローストし、それがナヴォナ広場爆発事件の真相とは、口が裂けても言えない。
電車が減速する。
時刻は午前10時14分
今、ローマは午前3時くらいか。
エリスは今頃、街を飛び回っているのだろうか。




