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4*

 彼女は空いている一般道を選んで家に帰ったが、雨のせいか、それでも通常より30分もかかって家についた。

 鍵を開けて、玄関に入る。全員、寝ているようだった。

 濡れた巫女装束を身にまとい、バスルームへ。

 明かりをつけ、緋袴に手をかけた時、不意に“ジェットババア”の目がフラッシュバックする。

 また・・・本当なら、同じ妖怪―仲間である存在に手をかけた。

 また、止められなかった。

 それ以上に、自分の能力を使ったことに、強い自責の念とも言い難い感情があふれだした。まるで、ナイフを突き立てられたフルーツから染み出す、果汁のよう。

 同時にこみ上げる音。

 炎、悲鳴、女の笑い声・・・潰される!

 気づけば彼女は、右手に小型ナイフを持っていた。キャンプなどで用いられる、万能ナイフ。この家で、彼女のみが知る。

 恐怖と高揚を入り混じらせ、左腕を洗面台へ差し出し、刃を当てゆっくりと一文字に引く。

 「っ――――」

 血が、流れない。

 「前よりも皮膚が厚くなって・・・っ!」

 声を震わせ殺しながら、刃をさらに深く、同じ場所に当てた。

 「つっーーーーーーーーっ!」

 激痛が体を駆けた。

 鮮血が腕を伝い、洗面台へしたたる。

 ナイフを捨てると、左腕を押さえてうずくまった。

 自分の中で声が話しかける。私・・・昼の私・・・。

 ≪また・・・しちゃったの?≫

 「うん。ゴメン・・・」

 ≪謝らないで。

  2人で1つ。衝動をコントロールできなかった私に、非があるわ。

  あれは、仕方なかった。そうしなきゃ、もっと大勢の人が死んでいた≫

 「ええ。頭では、分かっているのにね・・・」

  ≪それより、傷。それに、あの時の記憶・・・≫

 「大丈夫。朝までには消えているわ。傷も、記憶も。

  でも、消えたらまた・・・」

 自分で確認した事実に、涙があふれる。

 滴り落ちる赤い液体は、袴の上で同化する。

 全てが無意味とでも言わんばかりに。

 「助けて・・・誰か助けてよ・・・」

 彼女はか弱く、押さえる腕を震わせた。  

 

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