1 序章 影
少しダークな世界を描きたくて。
物心ついた時から後を追ってくる、黒い人が怖かった。
影。
そう、両親に教えられても、安心出来なかった。
必ず付いてくるこの黒い人。
おじいちゃんが言ったんだ。
「影に魅入られると取り込まれるぞ」
その言葉を聞いてから出来るだけ、無視をするようにした。
高校生になって、2年目。
最初は父が消えた。小学3年の夏だった。
母が消えた。小学6年のこれも夏。
引き取ってくれた、おじいちゃんが何故消えたのか教えてはくれなかった。
大人には、色々あるなんて、良くある話だけど、両親はかなり、仲が良かった。余計に謎だった。
そして、高校に入って、おじいちゃんが死んだ。よく分からない、莫大な遺産を俺に残して。これも夏。
夏は嫌いだ。
大切な人が居なくなるから。
景盛 浚水。高校2年水泳部。172cm、彼女無し。
大事な人はもう失いたくない。だから、学校でも極力影に徹して来ている。
「おい、浚聞いたか?」
「何が?」
「ニュースだよ。他校だけど、クマか何かに襲われたヤツ」
「…それが?」
「いや、怖いなってさ」
この、話かけて来る男は藤堂。
「…運が無かったんだろ」
「相変わらずドライだねぇ…」
運動は良い。特に水泳は全身を動かすから、嫌な事も忘れていられる。
そして、運命が変わる。いや、変えたんだ。
7月28日。
その日も夏休みをプールで泳いで過ごす日だった。
帰り道、そう。いつもの帰り道の筈なのに、何かが変だった。
ゴポポ…。
太陽が影を作る。…そう、影だ。何故揺らいでいる?
ゴポポポ…。
俺は動いて無いのに、影だけは揺らぐ。
丁度外壁。自分より大きな影が、
バシャッ…。
「…は?……ごぼっ」
影に呑まれた。
おじいちゃんの言葉を思い出す。
「影に魅入られると取り込まれる」
7月28日。運命に出逢う。




