18回目 善は急げ、許可もおりたことだし
「こういう事が出来るんですね」
「ああ。
だから、無理に引っ張ってくるのが目的じゃない」
「化け物を倒す?」
「察しがよくて助かるよ」
余計な説明をしなくて良いのがありがたい。
「このあたりはまだ化け物がいない。
たぶん、出勤してる人が少ない時間だったからだろう。
俺が化け物とかちあったのも、結構早い時間だったし」
思い出してみれば、出勤中である。
その時間だと、会社に到着してる人間はかなり少ない。
「このあたりは会社が集まってる。
たぶん、その時間に化け物になった人間はそう多くは無い」
「だからこのあたりは割と静かだと」
「多分ね」
確証は無い。
だが、そう考えた方が無難だろう。
「けど、それもいつまでも続くわけがない。
このあたりにだって、少ないけど化け物はいる」
「ですね」
それは会社の外を見れば分かる。
多くは無いが、人間でも動物でも植物でもないのがうろついてる。
「あれが住宅地からこっちに向かって来るかもしれない。
そうなったら、ここも安全じゃなくなる」
「だから倒すと」
「そうだ」
全ては安全の為である。
「それじゃ、家にいる人たちは放っておくんですか?」
「助けられるなら助けるよ。
でも、全員はさすがにね」
「まあ、そりゃそうですけど」
この場にいる人間全部をあわせても10人になるかどうかだ。
それだけの数で、何百人も何千人も助ける事は出来ない。
「でも、出来るだけの事はしたい」
化け物を倒せば、それだけ危険は減る。
見込みのある人間に玉を渡せば戦力にもなる。
そうして人を増やしていけば、当面の問題は解決するだろう。
化け物から身を守るという。
「その為にも、生きてる人間が多いうちに動きたい」
戦力確保を考えるなら、そうするべきである。
「あと、出来るだけ真っ当な人間に玉を渡したい」
「そうですね。
下手な奴に渡したら危険だ」
かなり強力な力をもたらすものだ。
危ない輩には渡せない。
出来るだけ心根の良い者に持ってもらいたい。
「それを探るためにも、外回りに出ないと」
「まるで仕事みたいですね、その言い方だと」
「まあ、仕事みたいなもんだ。
生き残るためのな」
会社の仕事も大事だ。
だが、今必要なのはそちらではない。
安全をおびやかす化け物。
それを早急に排除しないといけない。
でなければ、自分達の安全すら確保出来ない。
外に出ることすら危険な状態になる。
それでは、必要なものを買いにも行けない。
人間を上回る能力をもつ化け物がいるのだ。
しかも、人間に襲いかかってくる。
そんなのを野放しにしておくのは危険過ぎる。
「早めに倒しにいかないと」
「確かに」
「最悪、この仕事も放り出すしかない」
「気は進みませんが、しょうがないですね」
「ああ、そうだ。
一つ聞いておきたい」
「なんですか?」
「おまえ、車を運転出来るか?」
「ええ、まあ。
免許は一応もってます。
ペーパーですけど」
「なら頼む。
足がもう一つくらいは欲しい。
車はそこらに転がってるから」
人や物を運ぶ手段。
その確保が必要だった。
今のところ、運転できるのはタクマだけ。
それだけでは少々心許ない。
なので、運転できる人間を確保しておきたかった。
「そういうわけで、頼む」
「はあ……」
なんと答えて良いのか分からず、登和は困惑した返事をする。
そこに、丁度良いのか悪いのか。
サヨがやってくる。
「課長から返事が来た。
構わないって。
そもそも、会社の仕事もとりあえず切り上げていいって。
まずは自分の身の回りを優先するようにって」
これで障害はなくなった。
「それじゃ、外に行ってきます」
「気をつけてくださいね」
「ええ、もちろん」
無理や無茶をするつもりはない。
衝突は避けられないが。
「というわけで、波奈多さんにも」
「え?」
「はい、これを持って」
サヨに持っていた玉を渡す。
「波奈多さんなら大丈夫だと思うので」
彼女についても、事前に調べておいた。
人間性については問題がなさそうだった。
「ここはお願いしますね」
この場を守る戦力として。
無理矢理だがお願いする。
言われたサヨは、
「え、あ、はい」
と勢いに飲まれて返事をしてしまう。
そんなサヨに連れてきた女の子を預け。
タクマは登和とトモル達と共に外に出た。




