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男爵令嬢の辺境領主生活  作者: あらまき


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4-2話 遊牧民の土地奪還計画1


 プランが立ち直った翌日に、調べていたあの赤い球についての調査が完了した。

 ブラウン子爵の武官、文官に冒険者と生物研究に携わる者が集ったやたら高級な研究チームの出したその結果は――正体不明というたった四文字。

 要するに、何もわからなかったのだ。

 ワイバーンは珍しいといっても領地十か所に一回くらいは出て来る程度の頻度がある。

 だから当然、ワイバーンについて詳しい人も調査チームに参加していて、それで正体不明。

 更にワイバーンの死体を丸々入手して調べあげ、それでも結局正体はわからなかった。

 だからこそ、わずかながらわかった事実がある。

 この球は、ワイバーンの生体とは何の関係もない未知の素材であるという事だ。


 その調査結果にプランは何とも言えない気持ち悪さを覚えた。

 想定外の事態であるだけならともかく、何か、裏で悪質な事態が起きているような、そんな違和感をプランは覚えていた。

 未知の素材が見つかった事による喜びよりも、ここで未知の素材が出た事が偶然ではなく何等かの陰謀に巻き込まれたような不快感、そんな違和感である。

 普段明るく物事を深く考えないプランがそう感じたように、ブラウン子爵もまた何か気持ち悪い策略を感じ取ったらしく中央に詳しい調査を依頼した。


 そして次の問題、襲ってきた暗殺者についてだが、こちらも同じように依頼主は当然正体も不明だった。

 恐ろしいほどに複雑で高度な毒を利用し武官と平然で立ち回れる技術を持った集団。

 そんな訓練された暗殺者にもかかわらず、国は一切その存在を感知していなかった。

 これはこれでちょっとした事件だった。


 情報は全く入ってこないが……ブラウン子爵は依頼主について証拠はないが何となく察しは付いていた。

 天秤伯ガディアである。

 そして事件後捕まっているガディアに実際に会いに行った結果、ブラウン子爵はその顔を見てほぼ間違いなくクロだと確信した。

 ただ、このブラウン子爵の推測が合っていたとしたら、また一つの問題が発生する。

 それは、依頼を出したのは逮捕された前なのか後なのかだ。


 前であるなら何も問題ないのだが、後であるならそれはブラウン子爵領を巻き込むほどの大きな問題となる。

 ガディアはブラウン子爵領の中でも特に厳しい独房に捕らえられ、両手両足は常に鎖で繋がれており、周囲は二十四時間体制で警備。

 必ず四人以上で警備し、怪しい行動に出たらたとえブラウン子爵であったとしても記録に残され後で詳しく追及される。

 その状態で誰にも気づかれず暗殺者に依頼を出したというのなら、それはブラウン子爵領自体の敗北を意味していた。


 ただ、前か後かをブラウン子爵が調べる方法はないし、それ以前にブラウン子爵にはガディアを追及する時間がもうなかった。

 ガディアは捕まってから今日まで、どんなきつい尋問を受けても何一つ話さなかった。

 そう、本当に何も言わなさ()()()のだ。


 更に、今回の暗殺者の依頼主である疑いが出てしまった以上、その身柄はブラウン子爵領ではもう見る事が出来ない。

 ブラウン子爵はガディアの身柄を引き渡すよう、国から命令を受けていた。


 国の中央がガディアを管理する目的は至極単純である。

 重要な証拠を握っている人物が全く口を割らない。

 だから口を割らせる。

 それだけの話だった。




 ブラウン子爵領の生活はそれなりに続き、概ね皆が平和な日常を謳歌していた。

 リフレストではありえない贅沢な食生活に慣れてきている事と、仕事がやたら多くて忙しい事を除けば、特に問題らしい問題は起きていない。


 プランは元気にメイドさんの恰好をしたりウェイトレスの恰好をしたりとコックの恰好をしたりと恰好から入り、色々な場所で様々な手伝いをして回った。

 明るく気が利く可愛らしい万能お手伝いさんとしてちょっとした有名人になっているが、それでもほとんどの人がプランである事に気が付く事はなかった。

 少し残念な気もするが、変にかしこまった様子になるよりは全然良い為プランはそれを受け入れ喜んで皆の手伝いをして回った。


 ハルトも同じように手伝いをしているのだが、ハルトはあの日以来手伝いの時間を露骨に減らした。

 単純に、訓練の時間を増やす為である。

 ハルトの最大の目標は強くなる事であり、その為戦闘経験が多く優秀な指導者の多いブラウン子爵領で少しでも知識と経験を吸収しようと躍起になっていた。

 なりふり構っていられない鍛え方を繰り返すハルトだが、それを心配する者は誰もいなかった。

 ハルトがそんな柔な存在ではないという事を皆が知っているからだ。

 むしろ、今の方が生き生きとしていて健康そうに見えるまであるくらいだった。

 その証拠に、今日も本人的には普通の笑顔、周りから見たらやたら怖い笑顔を皆に見せメイドや子供に怖がられていた。


 ラステッドはブラウン子爵領の文官達やヨルンに混ざり色々と難しい話をしていた。

 プランは通りかかった時に、一度だけラステッドの為にかみ砕いて説明しているヨルンの言葉をちらっと耳にした。

『つまり、人材、そっちの領民を銅山で働かせたいから何人くらい連れてこられるか調べて欲しいんです』

 そんな話をしていた。

 頭を使って必死に頑張って聴き、自分で考えているラステッドの姿はまさに未来のプランである。

 そんな未来から耳を塞ぎながら、プランはお手伝いと言う名前の逃げ道に走った。


 リカルドは今までと特に変化が見られない。

 いや、きっとプランのアレを見てから何か変わったのだろうが、それを隠していた。

 リカルドが何を想って何を考え、何をしようとしているのかプランはわからない。

 だけど、それを尋ねる気はない。

 それを尋ねて良いのは、きっと彼と愛情を結ぼうとする人だけだろうと思ったからだ。


 皆少しだけ変わって、それでもいつものままで。

 ブラウン子爵領は仕事が多く入っていつも慌ただしいが、それでも誰かが不幸になっているような事もなくて。

 リフレストも良い風に変わっていっているが、変わらない良い部分もあって。

 そんな日常に少し感謝をしたプランは、ふとリオとアインの事を思い出した。

『無事に戻ってきて欲しい』

 あの二人なら大丈夫だろうとは思いつつも、プランはやはり心配せずにはいられなかった。




 そんなリオとアインの方も――プラン達と同じように大きな騒動に巻き込まれていた。

 いや巻き込まれたというよりも、リオとアインの行動が騒動を生んだという方が正しいだろう。

 二人が遭遇した遊牧の民……いや全裸の民というべきであろうか。

 そんな異文化の化身である彼らが逃げてきたのはディオスガルズの侵略によって住む場所を奪われたからである。

 ノスガルドは彼らのような遊牧の民全員と相互不可侵の条約ではあるが、確かに友好を結んでいたのだ。

 そんな彼らが、不可侵という条約に違反した上にこちらが保護に成功したという事は非常に大きな意味を持つ。

 つまり、今のノスガルドは条約を破る事なく、正当性を維持したまま遊牧民の住む土地にいるディオスガルズの兵達をぶん殴る事が出来ると言う事だ。


 条約を違反したのは遊牧民側の為、ノスガルドとしてはそのまま遊牧民の土地を奪う事も可能である。

 ただし、それをするつもりはなかった。

 むしろ遊牧民の土地を奪還し、彼らに返還する代わりに対ディオスガルズ用の条約を新たに結んだ方が得であると考えていた。


 だからこそ、今ノスガルドが対ディオスガルズを想定してしなければならない事は、少しでも早くディオスガルズを遊牧民の土地から追い出す事だった。

 電撃作戦を想定した少人数での不意打ちを想定した速攻。

 その為近場の武官を今必死にかき集め、部隊を編制していた。


 攻めるべき遊牧民の土地はブリックメイル領の隣……。

 それはつまり、リオとアインもその部隊に編入される事が必然だという事である。



ありがとうございました。

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