第2話「時を歩く者」
男性のサラリーマンが向こうからやって来るのを遠目で見て、人間の特徴を思い出す。人は翼なしで空を飛べない。翼など出していたら間違いなく一悶着起きるだろう。
こんなところで騒ぎになっては神だけでなく、降りてきてる天使達に見つかるかもしれない。唯一、幸運といえば、悪魔に襲われないくらいだろうか。弱肉強食の悪魔ルールにおいて、堕天使という立場がどうなのか知らない為、安心ができるわけでもない。襲われ難いだけの話だ。
そのようなリスクを踏まえて、隠すよう指示をする。
「シオン、翼隠しなさい。」
翼を隠し、その人間が見えてくると、不自然なことに気付いた。先程も似たようなことを体験しなかっただろうか?妙な既視感が湧いてくる。その続きでは私は死んだ筈……。では、どうして私は生きている。
そういうふうに思索をしていると、シオンに声を掛けられた。
「お嬢様。何処まで記憶がありますか?」
その言葉に確信した。天神からの一撃を食らい、消滅していったあれは夢などではなく現実なのだ。何かしらの手段を使って、時間を巻戻したのは妹であり執事でもある。シオン・ファーツリーなのだ。
「何をしたの?」
時間を巻戻すなんて、魔術書を読んだ限りでは禁術の中でもそうとう高位のものである。場合にもよるが大天使数人の魔力を必要とする。時を捻じ曲げるというのは正に神の所業であるからだ。とはいえ、神も使用するのにそうとう魔力を浪費するとは書かれていた。
時間を巻き戻してしまえば目撃者も存在しない為、数世代前の神についての書物しか残っていなかった。それで何度も世界の危機を乗り越えてきたらしい。
「卒業試験が終えたあと、習得予定だったので知らないとは思いますが、有翼全ての種族にはその者を象る能力があるのです。例えば、私の場合ですと『時の(タイム)捕食』。時を喰らいます。」
「それで私の死ぬ瞬間の時間を食べて、ここに巻き戻したというわけね。」
「実の所、巻戻した訳ではないのですが、それはまた追々教えるとしましょう。」
何か引っかかる言い方ではあったが、喰らうと言うことはその時間を使用出来るということなのだろう。それより最も気になるのは、
「ということは、私にも能力が!?」
「えぇ、お嬢様にも間違いなく能力が備わってますよ。」
「それってどうやってわかるの!?」
「意図的に能力を見つけられるわけではありませんし、これからも勉強あるのみですね。」
「えぇ~そんなぁ~。」
双子の妹が出来るのに、私にはまだ出来ないことが何よりも悔しかったし、お姉ちゃん面出来なくて心から落胆した。シオンはそんな姉を見て少し心が傷んだ気がした。そんなことなど自らの行いには影響することなく、執事としての義務を果たす為に姉を励ました。
「お嬢様は私より吸収力が速いのですぐにでも覚えられますよ。」
シオンは姉へ1つだけ嘘を付いてしまった。
有翼者各々が司る能力の発現は勉強や偶然などで見つかるものではない。条件があるのだ。その条件を満たした瞬間でなければ発現は出来ず、勉強するだけでは不可能なのだ。
ただ、その条件を達成するには少なからず主を危険に晒してしまうし、最悪の場合トラウマも植え付けさせてしまう程危険なのだ。そうやすやすと教えられるわけがない。執事としてもその判断は正しいと思われる。
それに、『時の捕食』があれば危険な状況など先ず起こりはしまい。
「それで、これからどうなさいますか?堕天してしまった以上天界には戻れませんよ。」
「そうね~、この人達も解放したいけれど、一人ずつやってたらさっきみたいに気づかれちゃうしね。」
そもそもどう管理してるかにもよるんだけどね。糸が切られた場所にいた魔力の持ち主に向かって自動で発射されるのか、その魔力の持ち主を特定して発射されるのか。その他にも考えれば幾つもの方法は思いつくけど、要するに切らなければ良いのだ。
「なら、糸そのものを少しずつ改善すれば後は勝手に自分で切ってくれるんじゃないかな。」
「なるほど、確かにそれだと切ったのは私達ではないので対象にはならないと。ただ、その改善を見逃すとは思えません。」
名案だと思ったらバッサリ切られた。
神と出会ったのは私の出産した時だけならしく、それ以来一度足りとも見たことのない私にはどういう存在なのか皆目検討もつかない。その神と私よりは多く会ってるであろうシオンから見るにこういう姑息な手段は通用しないほど、堅物潔癖なのだろう。それとも用意周到なビビリなのか。
「でも、シオンの能力があれば無敵じゃない!」
時を巻き戻すにしろ喰らうにしろ、どんな障害を前にしても過去に帰り、対策が出来るなんて最強クラスの能力で間違いないだろう。他にどんな能力があるのか全く知らないし、当然ヴェルサンディ先生の能力も知らない。とある書物でヴェルサンディは運命や現在を司る神というのは書かれていたからもしかしたらヴェルサンディ先生も時間系の能力かもしれないが、シオンの能力を前では無力だろう。
如何なる能力も発動しなければ意味がない。仮に発動したとしても全てを無に帰すのなら意味が無い。それこそ、シオンが能力使うのを止める以外は基本的に無敵である。それに、シオンの能力をどれくらいの天使達が知ってるのかは知らないが、時を喰らえばその確認した記憶も無くなるのだから相手からすれば対策も確認もしようのない能力である。
「私の能力とて無敵ではありません。抜け道など幾らでもあります。ですから、私の能力は無いものとして扱って下さい。これはあくまで奥の手ですから。」
宛てにはせずに新たな案を立てるにしろ、ミラビリスの案はなんとしても試してみたかった。それが凶と出るのか吉と出るのかはわからないが、要するに切らなければ良いのだ。
「中途半端にまで改善して、改善が出来ることだけ確認したらある一定のラインまで帰ってくるとかはどう?」
「結局、私の能力に頼ってるじゃありませんか。」
言われてみれば確かにそうだが、少なくとも先程の案よりは安全性は確保出来たと思う。それに神とて森の中の一本の木など気にしないだろう。どの規模の管理をしてるかわからないのも確かだが、仮に国1つとしても多少の誤差などあってないようなもの。シオンは少し気にし過ぎなのだ。
「それじゃあ、その案に沿って準備を整えましょう!」
「ちょっ……お嬢様!!」
シオンの説教など聞く耳は持たず、路地裏の奥へと歩いて行く。シオンも呼び止めようとするが、その態度から察するに一度決めたことはどうであれひっくり返す気が無いのがよくわかる。数百年もお嬢様の元で執事をやってるのだから、そういうところも知ってる。そして、今までだって頑固となったミラビリスを止めることは出来なかったことも理解してる。
路地裏の奥に今はもう使われてないお店があったので、魔力を使い修復し新たな店にする。魔力を使えばバレるというわけでもなく、何事もなく修復は完了した。魔力を使うだけなら私達に留まらず未だに無数に存在する堕天使達や悪魔だって各地で使用してる。神とてそれだけの範囲となると難しいらしい。そもそも糸に集中してる為に魔力にまで手が届いてないのかもしれない。
この新しくした店でやるのは占い師だ。操り人形のように見えたあの人々も人形ではなく人間だ。未来は固定されてるとしてもその道中までは自由だ。だから、少し誘導するだけでお客は幾らでもやってくるだろう。その時に気付かない程度の少しを改善していけば、とりあえずの目標は達成されるということだ。
「上手く行くかなぁ。」
「さぁ、どうでしょうね。でも、占いは夜なのでそれまで勉強タイムですよ。」
「えっ……………いやだぁぁぁぁああああ!!」
過去に何回かシオンの授業は受けたことあるのだが、容赦のないスパルタ形式でヴェルサンディ先生も止めたほどであった。あれから何十年か経つが少しは成長したのだろうか。いや、してくれないとこちらが困る。もうあの地獄に相見えたくはないのだ。
色々と抵抗はしたものの、追われてる身でもあるので下手なことは出来ず結局のところ授業を受けさせられてる。でも、昔ほどスパルタ要素も減り、理不尽なことはなくなった。昔と比べたらであって、スパルタであることには変わりない。
「では、天使が神になる最低条件は何でしょう?」
「えぇっと~、信者の数が国1つの1%以上になった時……かな。」
空間の何処かを凝視しながら集中して答えたのだが、シオンが怖くて間違ってるかもなどと疑心暗鬼となっている。そのせいで曖昧に答えてしまったのだが、それが駄目だったらしい。
「すぐに答えられなかったので減点。」
謎の減点をさせられた。
「えぇぇぇ、そんなの良いじゃない!」
「口答えしたので減点。」
そして、理不尽な減点付き。
「酷い!酷すぎる。シオンは堕天してしまったのね!」
「お互いに既に堕天使ではありませんか。」
「ジョークぐらい察しなさいよ!!」
ふと思えば、こんな時くらいしかシオンと沢山話せたことがない気がする。いつもいつも執事として接して来て最低限の会話しかしない。こうしてる間だけ姉妹だったんだって思い出せる。実感が出来て、姉らしくしないとなんて思うのだが、まだ無理そうだ。
♦ ♦ ♦ ♦
そうこうしてるうちに夜となってしまった。シオンはあまり中身の詰まった授業が出来なかったとぼやいていたが、そんなことはどうでもいい。スパルタ授業が少しでも早く終わったのは私としては嬉しいことだ。
テーブルを装飾し、わざとらしく水晶を置く。部屋の中は既に占い師っぽいデザインにし終えてるので後は格好のみだが、裁縫も得意なシオンによって完成してる。執事たるもの主人の望む物はいつでも提供出来るようにしておかなければならない。あらゆる技術を習得しているのだ。
今回は魔術の応用で家を改築したりなどとやってはいたが、人間には出来ない芸当であるし、悪魔や堕天使も出来るものは少ないほど繊細な魔術である。ここまで出来るようになるには相当の研鑽が必要である。それは彼女にとってはスパルタではないその教育方針は実際に経験したからかも、と思わせる。シオンの受けた執事教育がスパルタだったのか、はたまたミラビリスの為を思っての努力かは本人しか知らぬことである。
この占い館はここまでの誘導はシオンが行い。客の話を聞くのはミラビリス。その途中で糸を改善するのはシオンである。
改善するに際して知識だけならシオンが多かったがその応用はミラビリスの提案によるものである。しかし、技術面では劣るため、シオンがそれを行うことにしたのだ。
早速一人目の客が館に迷い込む。
「迷える子羊よ。占いの館へようこそお出で下さいました。貴方のお悩みは?───」
♦ ♦ ♦ ♦
「あー、疲れたぁ。」
「お嬢様、お疲れ様です。」
労うかのように一杯の紅茶を差し出した。テーブルに置かれたそれを見て体を預けたまま啜る。それを背後から見たシオンの笑みは別のものへと変わる。
「お嬢様!!お行儀が悪いですよ!!」
「はいぃぃぃ!」
咄嗟に驚いたことにより溢しかけたが、そこは長年生きてるというのもありなんとか対処出来たようだ。別段、その長年を費やして大道芸を学んでいたわけではない。あくまでマナーを学びそれを熟練することにより今のような対処が可能になっただけのことだ。
とはいえ、習得し熟練するのに100年も掛からなかったのだし、その後の練習など一種の大道芸と言っても過言ではないのかもしれない。如何なることが起きても対処は出来るようになったが、9割方必要はないと誰しも確信するだろう。
「とりあえず、今日は何にも無かったねー。」
「えぇ、神ならすぐ気付くと思ってましたが、杞憂だったようです。」
シオンに向かって自慢気に笑うミラビリスを見て、調子に乗らせぬ為に叱咤を浴びせた。
「とはいえ、神は脅威です。この程度で安心しては先が思いやられます。」
「うっ……。」
「さて、睡眠の前に勉強タイムですよ。」
「や~~~め~~~~~て~~~~~!!!」
「今日は精神干渉魔法について勉強するとしますか………。」
結局のところ朝まで付き合わされ眠れなかったミラビリスだが、天使は眠る必要が基本的にないのだから、そのまま2日目の勉強へと突入した。
♦ ♦ ♦ ♦
「貴方は妻子持ちで妻が風邪ですね?」
「は、はい!そうです!」
2日目も大して変わったところはなく、今日も一人目のサラリーマンを占う振りをしてる。魔術を使えば真似事など容易でそれに対して的確なアドバイスを送ることもまた年長者の知恵により可能だ。人間達から見たら既にお婆ちゃんであるなど思いたくもないが、30代後半の彼よりは10倍以上生きてるのも間違いないので特に悩むところもない。
今回は妻の風邪の原因を調べると、夫に対して何を言うべきかすぐにわかった。夫から料理を美味しいと言ってもらえずそれについてお風呂場でずっと悩んでたら風邪を引いてしまったのだ。なんともしょうもなく奇怪な理由だったが、妻にとってはそれはそれは重要なことなのだ。当然、子供も含まれてるが愛する夫から料理の感想を何も言われなかった時の不安はとてつもなく重い。それを直接聞けるような性格もしていないようだし、そうなって当然なのかもしれない。
それにしても、風呂場で風邪引くとかそういうことが有り得るのだと勉強にはなった。まず、そんなことをする相手など聞いたことないからだ。それだけ思い悩んでいたからこそ、と捉えておこう。
一人目のサラリーマンは帰り二人目を待ってるとシオンが紅茶を差し出した。天界にあった茶葉などこちらにあるはずもなく、今飲んでる茶葉も見たことのないものだ。しかし、入れる人が上手ければ味も美味しく仕上がる。私の好きな温めになるよう温度調整もされてるし、ミルクと砂糖は少なめというのも忠実にこなしてる。正に私の為の一杯ということだ。
「今日は今のところ人が来ないわね。」
「もしかしたら、今日は人通りが少ないのかもしれません。それに誰しもがここに誘われるわけでもありませんから、のんびり待ちましょう。」
ミシッ!
その音にお互いにその方向のした壁へと視線を向けた。
ただでさえ、昨日の一件があるのだ。正確には昨日というよりは未来での出来事といったほうが良いのかもしれない。糸を切り離した直後に空より降ってきた神の一撃。超高熱線で天糸の体すら消滅に追い込んだ程の威力が狙撃されたのだ。食らった本人としては2度と食らうのは御免だ。
バキッ!
壁の木が思いっきり折れた。それを見た二人は流石に異常を察した。その瞬間、シオンがミラビリスの肩を触り発動する。
『時の(タイム)捕食』
占いの館が数段階に分かれて、無理やり球体へと圧縮をしてる内に時間という概念をどんどんと口から吸っていく。1つの一軒家が片手で持てるくらい圧縮を重ねた頃には、2日間の時間は食い尽くされていた。
男性のサラリーマンが向こうからこっちにやって来るのを遠目で見て、思い出す。これはシオンの『時の捕食』で戻ってきた世界なのだと、自覚する。その横ではゲフッとお腹の時を圧縮してるかのように空気を口から漏らす。
「汚いわよ。シオン…。」
「これは失礼。お嬢様。」
サラリーマンが通り過ぎる前に翼を畳み込み、明日の夜のことを思い出し始める。明日と使うのが何ともこそばゆい。思い出すなら本来昨日のことなのだが、明日のことを経験してしまった以上思い出すのは明日となる。しかし、同じミスを2度は踏む気は無いので明日のアレは遠い彼方へと消えてゆく。
確認すべきことはどの時点で気付かれたかによる。
「明日の夜含めてどの程度弄ったの?」
「ほんの些細なことを少しだけ変えました。例えば、いつもなら右の道に行く相手を今日は左から行ってみようみたいに生活には影響のないものばかりでした。」
「もしかしたら、私達が家を作った時点で気づいてたとか?」
よく考えてみればわかることだが、極論を言ってしまえば地形を変えたのだ。神がどういう視点でこの街や人々を覗いてるのかは定かではないが、上から見下ろすという形なら突然降って湧いたような家があれば不自然に思うのも間違いない。それに魔力が付加されていれば尚の事。
つまり、見つからずに作ればいいのだ。
そこから導き出される答えは、
「そうだ!今度は結界を張ってから家を作ってみよ!そうすれば、魔力の遮断してるし、限りなく透明にしていれば見つかる可能性も少ない。それにここは廃墟だったのだから結界で廃墟に見せかけても気付かれる危険性は少ないというわけ!」
自信満々に胸を張って言うが、シオンからすぐには言葉は返って来ず、一考している。つまり、シオンには引っかかることがあり、今回の案も素晴らしいものとは言い難いということだ。
「言いたいことは大体わかりますが、それだけだと不安は拭えませんね。結界なんて見破られたら終わりです。」
大胆にやるからこそ逆に気付かないかもしれないという高等な技術のつもりだが、確かに不安要素は1つも消せていない。寧ろ、露出してしまってるまである。
「そのときはシオンの『時の捕食』よろしくー。」
最後はシオン頼みという流れが出来始めたが、シオンの言葉を思い出す。この能力も万能ではない、みたいなこと言ってた気がするが万能でなくてなんと言うのだろうか?それとも食うのだからそれを消費しなければならない。その消費は食べなかった時間分とか、そういう制限が存在するならこれからは下手に動けなくなる。
だから、本当にシオンの能力を宛てにするのはあまり得策でないのもまた確かだ。とはいえ、名案も思いつかないのだから時間稼ぎをやってるわけだけど、本当に時間稼ぎしたいなら何もしなければ良い。ただ、何も情報は手に入らないのも間違いない。堕天使や悪魔と会えば、何かわかるかもしれないが、何処にいるのかもわからなければ、味方になる保証はない。特に悪魔は自分の感情を優先する傾向があると聞いている。それが本当ならば、話し相手にすらならない可能性もある。つまり、頼れるのは自分とシオンだけということになるのだ。
「私の能力は最終手段って言ったと思いますが?」
「え、それが?」
あっけらかんとしてる私を見て、溜息をつく。なんだかんだ言ってシオンは私には甘いのだ。それが執事としてなのか妹だからなのかは定かではないが、こういう時に役立つ。本当ならその辺の話をきっちり済ませておかないといけないのだが、何かと理由をつけていつも逸らされていた。今もそういう話をする状況じゃないからやらないけど、私達は姉妹だよね…。
「はぁ、わかりました。その案で行きましょう。」
「やったー!」
「今回だけですよ!」
「はいはい。わかってるてば。」
恨めしそうな顔をされたが、まぁ、気にしなくても良いだろう。それじゃあ、早速結界の構築を考えますか。
魔力遮断と迷彩にどんな形の結界作ろうかな。
球型と正六面体のどちらが効率良いかも考えないといけない。結界の展開時は極力魔力を抑えての発動が最も大切だし、慣れてる方が良いよね。
♦ ♦ ♦ ♦
「昨日は何もなかったけれど、問題は今日よね。」
結界を張ってから似たように客を作り、少しずつ改善して様子を見ているのだが、1日目は問題なくセーフだった。とはいえ、神からの攻撃を受けたのは今日であるため、その時間帯が過ぎるまでは安心出来ない。それまでに時間は空いてる為、今はシオンのスパルタ教育を受けている。とりあえず、3日かけて精神魔法は最低限学べたと思う。成長するのは嬉しいが、何気に一度も寝ていない。今日で4日目の徹夜だが、天使は眠らなくても良いの一点張りで休ませてくれない。流石に疲れたのをそろそろ察して欲しい。いや、察してはいるだろうし、手加減をして欲しいものだ。
「問題が起きるまで数日待ってみるのはどうでしょう?」
シオンより1つの名案が飛び出た。
確かに昨日は全く同じ行動を果たし何も起きないのなら、前の行動に何かしらの問題があったに違いない。仮に問題がないとすれば、昨日弄った時に問題があり、今日それが起こったことになる。つまり、少なからずどちらに問題があったのか確認ができるのだ。
もしも、数日経つようなら今日の行動を見直せば良いのだし、その名案を呑み込み、今日は勉強をすることにした。
♦ ♦ ♦ ♦
-昨日の異変と同時刻-
「お嬢様、同時刻となりました。」
突然、トラウマ級の講座から手を止めると共にシオンがミラビリスの元へと近付いた。これでいつでも『時の(タイム)捕食』が発動出来る準備が整った。ミラビリスも少し緊張しつつその時を待つ。
そして、次の瞬間、そこには天神がいた。
真横にいたはずのミラビリスは扉の前に立つ天神によってお姫様抱っこされている。
「全くミラビリス、こんなところにいたのか。来い、穢れを取ってやるから天界へと帰ろう。」
そんな天神の言うことを聞くはずもなく、ミラビリスは天神へと魔法で生成した剣で不意打ちをしようとした。それは当然のごとく未然に防がれ、その剣は腕ごと切り落とされる。
「あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁぁ!!!」
「全くこの私を斬ろうなどとよくできたな。」
「お嬢様ァ!!」
超絶久し振りです。
もしや放りなげたとでも思いました?
多忙なので書けなかったのですが、落ち着いてきましたしとりあえずの一話分です。
では、次出会えるのはまた来月かな(笑)
お楽しみに~!