ドラゴンとの戦い
セガハナの動きがおかしい。口から出たあのかまいたちの攻撃をタケシシに助けられてから、切り替えられていないように見える。俺が行って、代わりをした方がいいかもしれない。一応、接近戦もこなせるし、近くにいたほうが、矢の通りもいいはずだ。しかし、デアンカの守りもなしに向こうに行けば、餌食になるかもしれない。それは多分、無駄死にに等しい。そんな行動はできない。この戦い、誰か一人でも欠ければ、バランスが崩れて、一気に俺たちが負ける可能性がある。人数が多いから、ドラゴンもうかつに動けないのだ。俺たち遠くの敵も警戒しつつ、接近戦を行うのは難しい。今の状態がベストなのだと思う。
「セガハナ、なんかおかしいね」
ユーハも俺と同じことを考えていたらしい。
「私たちも前に行く?」
「いや、それじゃドラゴンの攻撃の的だ。ここには障害物になりそうなものがない。スナイパーがいるとわかっていて、草原を駆け抜けるようなもんだ」
彼女は顎に手を添えて、何かを考え始めた。
「今のままだと、あいつは俺たちを警戒しつつ、デアンカたちと戦うという構図を取っているということになる。もし、俺たちが向こうに行けたとして、今度は五人で接近戦を行うことになる。それはドラゴンは接近戦にだけ集中できて、俺たちが負けるかもしれない。今、あいつの集中力はこっちとあっちに分散している」
「なるほど。じゃ、やっぱりここから攻撃するしかないかな」
「だが、下手に攻撃すれば、味方に当たりかねない」
「下手に攻撃しなきゃいいんだよ!」
そう言って、彼女がアイテム袋から取り出したものは何か液体が入った試験管だった。
「じゃじゃーん! 追尾システム!」
「追尾システム?」
「そう! これの液体をかけた武器は狙った獲物に確実に当たる。そんな属性を付けます」
俺の持っていた弓を俺の手から奪って、その液体をドバドバとかけてしまった。俺が止める隙などはなかった。
「これで、放った矢が追尾するようになるよ!」
そう言われたので、俺は試しに矢を放ってみた。適当に狙いをつけて、適当に放つ。こんな弓道はしたくなかったのだが、どうしてもその性能を疑ってしまったのだ。
適当に放った矢は見事、ドラゴンの目に刺さった。適当な軌道を描いていたものだから、ドラゴンも対策を講じることができなかったのかもしれない。これならやれる。
「すごいな、これ。ありがとな」
ユーハに向けて言ったのだが、返事は帰ってこなかった。彼女はもう一つ、アイテム袋から取り出そうとしていた。出てきたのはパチンコだった。そして、俺の弓にかけた追尾の液体。彼女はパチンコにその液体をかけた。つまり、パチンコにも追尾の能力がついたわけだ。
「というか、最初からそれ出してくれよ」
「いやいや、三人が前でドラゴンの気を引き付けている間に作ったんだよ、これ。その間に二つも作れるのはむしろ、ほめてほしいぐらいだよ!」
なるほど、そう言うことだったのか。俺は戦況が気になって、ずっと向こうに気が行っていた。
「悪かったよ、ユーハ」
「頭撫でて?」冗談のつもりなのだろう。彼女は悪戯する子供のような笑顔だった。
俺はそれを見て、わざとに彼女の頭を撫でてやった。本当はこんな冗談のやり取りをしている場合ではないのだが。
「ふふ、ありがと! じゃ、元気も回復したし、援護しましょうか!」
俺は弓に矢を番えて、ユーハは爆薬をパチンコにセットして、それぞれ援護を開始した。
***
矢が変な軌道を描いて、ドラゴンの目に刺さっていた。ドラゴンは悶絶する。ララの矢だ。私がこんなへなちょこな動きをしている間にも彼らは何か策を考え、実行していたらしい。そう思うと今まで以上に情けなくなる。そして、そんな自分に怒りが湧いてくる。こんな情けない私でいいのか、いや、そんなはずはない。ララに情けないところは見せたくない。さっきまでの戦い方だって、彼は見ていたに決まっている。大切な友人に情けないところは見せたくないし、私自身も許さない。じゃ、こんな落ち込んでいるばあではないはずだ。私は剣を強く、強く握りしめた。
「フラクツァー!」
握る剣を後ろに引いて、腕を思いっきり振る。そして、剣から手を離した。その剣は真っすぐに対象に向かって、白い尾を引いて飛んでいく。そして、私の目の前にあった足の鱗を破壊した。
このスキルは対象が近ければ近いほど、その威力が増すという仕組みになっている。少し離れているとはいえ、私とドラゴンの距離はそれほど開いているわけではない。おかげでドラゴンの固かったドラゴンの足の鱗が破壊で来た。ここに攻撃を集中すれば、ドラゴンは移動ができなくなるはずだ。私は足に刺さった剣を抜いて、そのむき出しになった足に向かって攻撃を叩きこんでいく。デアとタケシシは私を見て、安心したのか、もう私を気にすることなく、攻撃を叩きこんでいた。そして、爆薬と矢の援護が来た。鱗のない部分の多くなったドラゴンに防御は無いに等しい。矢が突き刺さり、爆発がその身を焼き焦がす。それはドラゴンにとって致命傷だったに違いない。敵は弱弱しい鳴き声を上げながら、体から力が抜けていく。ドスンと大きな音と少しの風が来た。ドラゴンの体力がなくなったのだ。
そして、その瞬間、盛大なファンファーレが鳴り響いた。
「クリアおめでとうございます。本作はβ版ですので、最終ボスの第二形態などはございません。これでβ版はクリアとなります。しかしながら、製品版までの間、クリアしたままというのは、βテスターに申し訳ございませんので、エリアボスを復活させていただきますので、ご安心を。そう言うわけで、遊んでいただきありがとうございます。まだまだお楽しみくださいませ」
音と音声はそこで終わった。
「クリア、したんだ」
私はその場にへたり込んでしまった。デアは安心した顔をして、タケシシの表情はあまり変わっていないように見えた。ララ達がこちらに走ってきていた。彼はユーハとこっちに来ながらも、その途中で何度もハイタッチをしていた。私もしてもらおう。
ようやくクリアだー!
そう叫ぶ力はなかったが、そんな心境だった。
続く




