怪獣を倒せ
「よっし、できた!」
ユーハがそう声を上げた。待ってました!
「俺が注意を引き付ける。罠にかかったら、射撃は任せた」
俺が頷くのを確認していたのかどうかはわからないが、彼はユーハが仕掛けたという罠の方に向かっていった。
グルゥギャアアアアアアァァァアァァァァ
奴はタケシシが走った方向に続いて、走っていく。と、そのとき奴の動きが止まった。
「よし、動かないなら当てられる!」
矢を番い、弦を引きながら正確に狙いをつける。鱗の部分は堅そうだ。胴は狙ってもうまく刺さらないどころかダメージを与えることすら不可能な気がする。当ててダメージを与えられそうな部位はどこだ。足も鱗で覆われている。尾の部分は刺さることは刺さるだろうがダメージにはならなさそうだ。弱点としては目、だろうか。俺は目を狙うことに決めて、矢を放った。
目は狙い通り、刺さった。怪獣は咆哮を上げてもがいている。目に刺さった矢を引き抜こうとしているようだ。しかし、足は動かない。その足を引き留めているのは、粘着質な大きな板だった。虫を捕まえるようなあれだ。獣サイズで大きいものだ。俺たちが引っかかれば、抜け出せないような罠だ。
「続けて攻撃して!」
ユーハの声でタケシシが斧を胴に向かって叩きつけた。その瞬間、割れた鱗が宙を舞った。
これで俺の矢が刺さる!
そう考えて、俺は次の矢を番った。しかし、その矢が放たれる前に隣に、何かが通った。その風圧で、矢が弓に当たって、カタカタと音を鳴らしていた。何が起こったというんだ。
何かが通ったその場所を見る。隣にいたユーハはいなくなっていた。そのまま後方に視線を向けると、その視線の先の壁にユーハが奴の前足で押さえつけられていた。慌てて矢を奴の方向に向けるが、傷ついたはずの鱗は見えない。大きな傷ではなかったし、俺からは見えない方についているのかもしれない。それでも、俺は引いていた矢を放った。少しでもこちらに気を引き付けられれば。
案の定、矢は鱗に弾かれた。しかし、奴の視線が一瞬こちらに向いたのを俺は見逃さなかった。ユーハもその隙を狙っていたのかもしれない。その一瞬の隙で彼女は奴の少し開いていた口の中に何かを入れた。入れたというより飲ませたと言った方がいいかもしれない。そのものは液体のように見えた。
それから数瞬して、怪獣の体が砕け散った。何が起こったのかわからず、ぼうっとしてしまう。そのまま、ユーハの方を見つめてしまった。
「いてて。さすがに強いね。でも、何とかなった!」彼女は後頭部をさすりながら、そんなことを言った。
それから、彼女は俺がぼうっとしているのを見て、不思議そうな顔をした。
「何、どしたの」
「ああ、いや、それは俺が質問したい」
変な返事をしてしまった。
「え、ああ、もしかして、どうやって倒したのかってこと?」
俺はそれに頷いて返す。
「爆薬だよ。試験管に入れてたやつ。こういう用途もあるって知ってたからさ。外が堅い奴は中から攻撃ってね」
最初からそうしろよ、と思ったが近づいて攻撃すら難しいのに、どうやってあの薬を飲ませるのか。それに動きを止めても、口元になんか近づいたらかみ殺されるかもしれない。それを試せと言うのは酷だろう。それに結局は倒せたので文句を言う必要はない。
「そんな方法があるなら先に言ってくれればよかったのに」
それは俺の言葉ではなく、タケシシの言葉だった。案外、思ったことは口に出るタイプのなのか。
「いやぁ、ごめんごめん」
「全く、大変な思いをした」
「倒せたんだしいいだろ。それより先に進もう」
俺は怪獣が出てきた鉄格子の先を指してそう提案した。
鉄格子の先も刑務所のような作りになっていた。しかし、扉は一向に見つからない。曲がりくねっていて、進みづらいというのもあるが、薄暗くてよく目が見えないというものまた辛い要因の一つだ。
どれほど歩いたのだろう。いくつもの角を曲がって、その先にあったのは、小さな部屋だった。作りはそれまでの廊下と変わらず、古びたコンクリートの部屋だ。そして、その部屋の中心にあるのは青く光る正方形の物質だった。
「これをどうにかするのか」俺は前にいたユーハにそう訊いた。
「これ、多分、巨人を動かしてるやつだと思う。巨人の心臓的なもの」
「じゃあ、これを取れば、巨人を攻略したことになるのか」
彼女は首を縦に振った。
「そうか。俺が取ってもいいか」先頭にいたタケシシが俺たちに確認する。
それに俺たちはそれぞれ頷いた。
頷いたはいいが、もしかしたら、これを取ることによって何かの罠が発動する可能性も考えていた。タケシシを囮にしたつもりはなかったが、今のメンバーなら一番頑丈そうだ。爆破トラップでもなければ死ぬことはないと思う。
結局、その物質を取ると、今までいたダンジョンの中に静けさが生まれる。今まではどこか怖いような雰囲気を持っていたが、それがなくなったように感じた。クリアしたということなのだろうか。
その場で待ってみたが、何か起こる気配はない。俺たちは今来た道を引き返すことにした。
続く




