岩石巨人を攻略せよ
俺とユーハ、タケシシはゴーレムの肩に乗っていた。ここにいてもらちが明かないのはわかっているのだが、どうしていいのか全く分からないのだ。ゴーレムが俺たちに危害を加えてくるということはない。まるで人がアリを気にせずに歩くというような無関心ぶりだ。もしかしたら敵ではないのかもしれない。ということは他にボスがいるはずなのだが。そんなものを見当たらなかった。
「ねぇ、あの目の部分から中に入れそうだよ!」
隣できょろきょろしていたユーハが指でその場所を示した。
確かに目の部分が空洞になっていて、中に入れそうな雰囲気だ。俺が入っていいものか思案していると、ユーハは器用に顔を登って行って、目の中に入りこんだ。その眼のくぼみからユーハは顔を出して、両手で丸を作っていた。安全ということだろうか。それを合図にしたのか、タケシシも顔を登って中に入って行った。俺一人がここに残っていても仕方ないので、俺も顔を登って中に入ることにした。
当たり前だが、中もコンクリートのような素材でできていた。それから、なんと階下に続く階段がある。
「お手柄だな」タケシシが一言呟いた。
階段を降りると、そこは外から見たよりも大きいと思われるような、空間ができていた。
「この大きさおかしくない? 外からじゃ絶対こんな大きくなかったでしょ」ユーハも同じことを思ったらしい。
この空間はまるで外国の映画で見た刑務所の地下のようだ。薄暗くて肌寒い。コンクリートもどこか黒ずんでいるところがある。
ここまで来たのはいいがボスか何かがいるのだろうか。それともゴーレムを操縦するような場所があるのだろうか。とりあえずまだ一本道だし、進むしかない。
少し進んだところで、大きな広間にでた。大きいとは言っても、学校の教室二つ分くらいだが。俺たちが入ってきた方とは逆側には扉三枚分くらいの鉄の格子がついていた。その格子が上にゆっくりと上がっていく。敵が来るのだろう。俺も含めた皆が身構えた。
グギャァァァァァァァ!
それは大きな体を持っていた。何に例えたら伝わりやすいだろうか。とにかく四足で立っていて、細く長い尻尾がついている。尾の先には筆のようなものがついている。顔は狼のようで顔の周りにはたてがみがある。胴は緑で爬虫類のような鱗でおおわれている。足は大きな爪が五枚確認でき、その足は細いものではなく、筋肉を極限まで鍛えたような太さをしている。ここだけを例えるなら、前にテレビに出ていた競輪選手の足だ。総合してそれは威圧的で怖いと思わせるような風格を持っていた。
「行くぞ! 俺の斧が役に立ちそうだ」
タケシシが先行して、突撃した。斧は重い武器であるが、あの遅そうな怪獣相手に外すことなどないだろう。
ガンっ
しかし、斧が当たった音にしては軽い気がした。そして、次の瞬間にはタケシシは俺の後ろの壁に叩きつけられていた。
「おい、あの姿でその速さは反則だろ」思わずそれを見ながら、呟いてしまった。
三人では分が悪いか。それに俺の弓の技術だって、あんなに速くては歯が立たない。ユーハの道具で何か役に立つものはないのだろうか。そう考えているとき、俺に何かが起こった。
気づいた時には俺は宙を舞っていた。鉄格子が大きな音を立てて、俺を止めた。俺が考えている間に、この広間の端から端まで飛ばされたらしい。体力も大きく削られている。正面を向くと、怪獣が俺に向かって、爪を立ててきていた。俺は横に大きく飛んだ。
まずい、まずい。近くにいたであろうタケシシ、ユーハを狙わなかった理由はわからないが、ゲームにそんな疑問を持っても仕方ない。それよりも先にこの場所を抜けなければいけない。そのためにはあれを倒さなくては。
とにかく攻撃しなければ、俺たちに勝機はない。俺は腰に付けた短剣を抜いた。こんなものでは怪獣の攻撃を受け止めるなんてことは出来なさそうだ。しかし、少しずつダメージを負わせることはできるはずなのだ。目の前にいたそれはすぐ目の前にいる。飛び掛かってくるような距離ではないせいか、ゆっくりと近づいてきている。そう思った矢先、それは俺に向かって飛び掛かってきた。
俺は手に持った短剣でそれを受け止めようとしてしまった。先ほど、受け止められないと思っていたはずなのだが、とっさに手が出てしまった。回避は間に合わない。
ドッッッ
鈍い音がして、俺はまた、端から端へ飛ばされたようだ。背には壁があり、ユーハとタケシシが近くにいた。
「このアイテムなら何とかなるかも」
そう言ったのはユーハだった。ずっと黙っていたが、その間にないかアイテムを作っていたらしい。そのアイテムとは相手を粘着質な床で捕えるというものだった。あの速さの奴に通じるのだろうか。
「とりあえず、設置するから気を引いといて」
そう言うと、彼女は設置の為に走り始めた。その行動は怪獣の気を引いてしまう。怪獣の視線が彼女の方に向いてしまった。それを阻止すべく、タケシシが斧を投げ、奴に当てた。斧は投げる用ではなく、重いものなのだが、それだけパワーがあるのだろう。
「こっちだ、バカヤロー!」
威勢のいい声をあげながら、何も持たずに怪獣に突進していく彼。ぼうっと見ている場合ではない。俺も彼に続いて走る。片手に短剣、もう片方には矢を持っている。これらではダメージを与えることは出来なさそうではあるが、牽制ぐらいにはなるだろう。
怪獣との距離はほとんどない。相手が飛べば、俺たちを越してしまうだろう。しかし、相手が攻撃すれば、確実に当たる距離でもある。早くしてくれよ、ユーハ。
続く




