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BATTLE ARENA 1  作者: リクルート
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13/27

先を越せ

 森林を抜けて、木々が少なくなっていくとともに寒さが増してきていた。砂漠とは真逆の意味でつらい。というか、暑いところから寒いところまでが近すぎる気がする。

「うう、寒いね」

 セガハナも体を震わせている。しかし、誰一人として町に戻るとは言わなかった。町に戻ればきっと防寒具ぐらいは売っているはずだ。寒いままだと体力は減らなくても動き自体は悪くなるに決まっている。だが、俺たちよりも先に進んでいるプレイヤーを抜かさない限り街に戻るとは誰も言わないと思う。

「寒いですけど、早く進んで先のプレイヤーに追いつきましょう」

 デアンカが先頭で進んでいく。彼を先頭にしたのは、この寒い中ではセガハナの素早い動きができなさそうだからだ。


「よし、できた!」

 最後尾でユーハが大きな声を上げた。どうしたというのか。

「皆、ホットドリンクはいかが?」

 彼女が後ろで一言も話さずにしていた作業は俺たちを救うものだった。それぞれ彼女にお礼を言って、そのドリンクをもらった。暖かい液体が喉を通っているのがわかる。それが全身に染み渡っているように感じる。

「このドリンクは三十分は寒くならないはず。まだ予備のも作ってあるからこれで二時間ぐらいは寒くても大丈夫そうだよ!」

 それぞれがユーハに頭を下げ、お礼を述べた。


 寒くなくなったおかげで、進行具合もよくなった。しかし、この場所でも敵は出てこないのか。寒さにやられたのか、そんなことを考える。とそこで何かの音が聞こえてきた。耳を澄ませるとその音は犬の吠えるような音だ。誰かが戦っているのかもしれない。

「ララ、なんか聞こえる。見に行ってみようよ」彼女が先に走っていったのでそれにみんなで付いていった。


 そこでは、一人で白く大きな狼と戦う戦士の姿があった。大きな斧を振るって、狼の牙や爪を弾いて、どうにか攻撃しようとしているが、振りが大きくなる分、攻撃を当てる前に狼の攻撃を食らいそうになり、それを弾くというのを繰り返しているように見える。きっとそれまでもいくらか戦闘方法を試したのだろうが、どれも上手くいっている様子はなかった。その証拠に狼の白く綺麗な毛は一切傷を負っているようには見えない。傷というなら、明らかにそのプレイヤーの方が多く負っている。

「加勢しましょう」そう言ったのはデアンカだった。

 それから、セガハナが同意して、彼の戦闘に加わった。


「誰だ、あんたら。援護ならいらんぜ」

 そうは言いつつも息は切れてしまっている彼。言葉に説得力がない。

「そう言うな。疲れてるだろ」俺はそう返事しながら弓に矢を番えた。

 セガハナは彼に何も言わずに、狼に突っ込んでいく。それを慌ててデアンカがフォローに回った。ユーハは何かアイテムを作っているようだ。俺は狼の頭に狙いを付けた。

 すぐには狙いはつけられなかった。しかし、当てる。予測しながら、弓を少しづつずらしていく。

 ――――ここだ。

 

 シュッッッ


 放った矢は見事に頭部に当たった。しかし、狼は倒れない。多くダメージを負わせたみたいだが、倒れるほどではない。これはレベルのせいかもしれない。レベリングもしないで、ここまで来てしまった。アクションRPGだと回避テクニックと正確な命中性、つまりはプレイスキルがあればなんとかなるものだが、さすがにレベル差が酷いのかもしれない。実際、レベリングは最初の方にしかしていない。そこから、少なくとも三つはフィールドを進んでいる。特に先にエリアボスを倒していた場所に関しては全く敵と遭遇しなかった。それはレベルも上がらないわけだ。


「セガハナ、一旦退いた方がいいかもしれない」

 俺は頭で考えた結果、それが最善だと思い、それを彼女に伝える。しかし、彼女に俺の声が聞こえていないのか、彼女は一切の返事をしなかった。目すらこちらに向かない。仕方ない。

「デアンカ、ここは一旦退いた方がいいかもしれない。町に戻ろう」

 しかし、彼もこちらを一瞬見ただけで、声は発さなかった。しかし、何かを伝えようとしているような瞳だ。なんだ、あまり忙しなく立ち回っているようには見えないのだが。

「もしかして、あの敵に接近戦は最悪の手なのかも」いつの間にか俺の横に立っていた。ユーハが言う。

「どういうことだ」

「いや、あの戦士さんも接近戦だったけど、あまりダメージを負わせてなかったじゃん? それって、あいつがそう言う特性みたいなの持ってるのかも」

 なるほど。このゲームは接近戦の武器がメインで作られているとはいえ、俺の弓みたいな武器もある。チャクラムに苦無、投げナイフ、手裏剣。飛び道具は種類がある。これも使ってうまく倒す、みたいな敵ってことだろう。つまり、俺やユーハの出番ってわけだ。

「セガハナ、デアンカ。今から飛び道具で攻撃する。間違って当たらないようにな」

 彼女たちなら大丈夫だとは思うが、一応、声をかけておく。


「ユーハ行くぞ。飛び道具の準備だ」

「もうできてるよー!」彼女の手には試験管が何本もあった。

 俺は矢を取り出し、思いっきり弦を引く。その弓の狙う場所は狼の真上の空だ。


「アタックスキル、エスレグネット!」

「うりゃりゃりゃりゃりゃ!」


 俺の放った矢は、空の方へと飛んでいき、やがて見えなくなった。その間、爆発する試験管が狼に降り注いだ。その爆発が止む前に、空から無数の矢が落ちてくる。爆発に紛れて、矢がまるでゲリラ豪雨のように降り注ぐ。その中心にいる狼にはかなりの数の矢が当たっていることだろう。爆発で全く見えないので、想像になってしまうが、セガハナとデアンカはきっと効果範囲から出てくれていることだろう。


 爆発が止むと、焦げた狼が煙を出しながら、消えていった。それから地面、狼共に刺さっていた矢も消えていく。しかし、そこに彼女たちの姿はなかった。もしかして、躱せなかったのか。そう考えてしまったとき、地面がもぞもぞと動き始めた。


「ぷはぁ、生き埋めってこんな感じなんですかね」

「土の中とは。デア、やるわね」


 その地面から生えてきたのは、まぎれもなく、セガハナとデアンカだった。まさか、地面の中にいたとはな。一瞬焦ったが、どうということはなかったのだ。

 何はともあれ、狼を倒すことには成功した。

「狼だろうが、雨には勝てない」

 俺は決め台詞を呟いたが、ユーハは何も言わなかった。俺が一人で格好つけているようで恥ずかしい。しかし、決め台詞は忘れないのは俺とセガハナのルールだ。それを破るわけにはいかない。


「あんたら、何者だよ。ここのフィールドはまだ到達してるやつの方が少ないし、あの狼、β版では倒せないって言われてるぐらいだったんだ。それをこんな簡単にやってのけるなんて、普通じゃない」

 戦士の人は俺たちの事をそう評していた。彼の顔には安堵も見て取れたが、何が一番出てきているかと言えば、悔しさに違いなかった。苦戦していた相手をものの数分で片づけてしまったのだから仕方ない。

「何者って言われても、私たちは私たちだよ。このβ版を誰よりも早くクリアしたい。それを目標としてるだけ」

 その言葉にそれぞれが頷いた。ユーハもそこは同じ目標を持っているらしい。

「なるほどな。だから、こんなところで躓いてられないというわけか」

 彼は納得したように、何度も首を縦に振った。それから、何かを考えるようにして拳を顎に付ける。少しの間をおいて、彼は意を決したように言葉を放った。


「俺も混ぜてくれないか。その攻略に」


 その言葉は意外ではなかった。多分、セガハナもそう思っているはずだ。というか、彼女自身彼を仲間にしたいと思っていたと思う。彼女は強い人や、このチームに足りない要素を補える人が欲しいと毎回ゲームをするたびにそう言っている。今回、戦士の彼は、実際にこのゲームには職業という概念はないが、あるとすれば、高火力アタッカーになれってくれるはずである。


「もちろん。あなたが加わってくれるのは嬉しいよ!」


 俺の考えた通り、セガハナは彼を仲間にする提案を受け入れた。これでまた新しい人を仲間にすることができたのである。彼のプレイヤーネームはタケシシ。武器は斧、屈強そうな戦士の姿をしている。これは心強い。このエリアボスもクリアできそうだ。

続く

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