第39話 アイアンメイデン〜あの日の君を探して〜完結編(上) 光の中へ
「目指すはアンソレイユ城、本丸は来愛の部屋だ! 敵はその守護者の栞と美優! この町きっての武士だ。皆の者ぬかるなよ、生きてまた相まみえようぞ! いざ出陣だ!!」
「おおーー!!」
めっちゃ恥ずい。
「一華、これやる意味あったのかよ?」
一華がどうしてもと言うからやったのだが恥ずかしくてたまらん。
「あった、あった! ほら、皆んなの士気が上がったじゃん! 響介は大将なんだからしっかりね!」
確かに皆んなのやる気は一気に上がったが、こんなノリで空回りしないよな?
でもこれは俺が挑んだ戦じゃないのか? 俺について来てくれる仲間がいるんだろ? 迷うな一択だ! 来愛の正体がなんであれ必ず助けるんだ! 当たって砕けるな、邪魔な壁はぶち破れ! いざ参らん!
俺達はアンソレイユに着いて入り口の塀に隠れた、作戦開始だ。
「翔子、合戦の狼煙を上げるのはお前だ、任せたぞ!」
「OK、任せて!」
「もしもし、警察ですか? アンソレイユというシェアハウスで住人が無理矢理追い出されようとして激しいケンカが起きてます! ああ、今また1人ゴリラみたいな怪力女に投げ飛ばされてる! 早く来て! 死人がでちゃう!!」
そこまで言うか!? 後で怒られそうだが、まあ言っちまったもんはしょうがねえか。
「次は一華と花音、頼んだぞ!」
「ヨシ、行くよ花音!」
2人にはアンソレイユへ行って栞さんと美優さんを外におびき出してもらう。2人が出てきたら俺と先輩が美優さんを挑発しケンカへ持ち込む、そこへ警察が来たところで先輩が大袈裟にやられた振りをすれば、美優さんを警察が取り押えてくれるはず。その隙に俺は来愛の部屋に突入だ、一華と花音にはその瞬間だけ栞さんの邪魔をしてもらう。
程なくして栞さんと美優さんが出てきた、やるじゃん、上手くいったな。
次は俺達の番だ、美優さんと本当にケンカにならない様に煽るのが今回1番気を付けたいところだ。
「行くぜ、先輩!」
「おおうよ!」
さて、どうなりますか。
「そこをどけてもらえますか、美優さん」
「響、お前よくツラを出せたもんだな!」
「うるせー、覚悟しろゴリラ女! 海でのリベンジだ、オリャッ!!」
いきなり聡士のハイキックが炸裂した。
な、何やってんだよ!?
「聡士、待てって! 話しで時間稼ぎするって言ったじゃんか!」
「ハハ、わりーな、コイツのツラ見たら吹っ飛んじまったわ!」
「時間稼ぎ? 何企んでるんだお前ら!」
聡士のハイキックをガードした美優さんはすかさず同じハイキックを返した。
ガードした聡士が吹っ飛ぶ、なんちゅうパワーだよ、紗夜子さん並じゃないか!
「私とやる気かよ面白い、久々に″軍神″と呼ばれていた頃を思い出すよ。まとめてかかって来い、ガキ共!」
ぐ、軍神って。何者なんだよこの人!?
「おまわりさん、こっちです!」
その時塀の外で待機していた翔子が警察を連れてきた、ヨシ! 後は先輩が予定通り大袈裟に倒れてくれたら。
「ざけんな、テメー!」
先輩のハイキックを美優さんがスウェーしたところで先輩は追撃の回し蹴り。しかしそれを美優さんは後ろへステップしてまたもや華麗に交わす、やるな。
じゃない! 何やってんだよ、聡士!
「聡士! 倒れろよ!」
「ふざけんな、まだまだこれからよ!」
この脳筋バカ!
「美優姉、やめて!」
えっ? 花音が美優の方へ走って行く。台本と違うだろ、お前もか!?
「来るな花音、邪魔だ!」
「キャー!!」
花音が美優の前で倒れた。
「か、花音! だから来るなと言ったろ! 何やってんだ勝手に転んで」
「そこまでだ! 抵抗するなよ!」
花音に気を取られている隙に警察官が美優さんと聡士を取り押えた、さすがだな。
「これ以上危害を加えるんじゃない!」
「違っ! 今のは花音が勝手に転んだんだよ!」
そういう事か! 聡士の暴走を花音はフォローしてくれたのか、突入するなら今だ!
「サンキュー、花音!」
俺は玄関へ向かってダッシュした、後は栞さんを交わして、ゲッ!?
「ママ、ダメ! 動かないでよ!」
栞さんの後ろから抱きついて必死に止めようとしている一華を引きずったまま栞さんが俺の前に立ち憚る。この人も化け物か!?
「ここは通さないわよ、響ちゃん!」
俺だって譲れないんだよ、栞さん!
「俺を信じてくれ、栞さん!」
「えっ!?」
動揺した? 一瞬フリーズした隙に俺は栞さんを交わし中へ突入した、ヨシ、目指すは来愛の部屋だ。
《俺を信じろ、栞。全部なんとかしてやるよ》
「ママ?」
「響ちゃんが、あの時の慶ちゃんに見えた……」
リビングに入るとココがいた、震えてる?
「ココ、色々ごめんな。もう少しだけ待っててくれ、必ず俺が元のアンソレイユに戻してみせるよ、俺がこんなんにしちゃったんだけどな、ハハ」
「うん、ココはお兄ちゃんを信じてるよ。はい、コレ来愛ちゃんから預かってたお部屋の鍵だよ」
ココに鍵を? 来愛、全てはお前の手の平の上だって事なのかよ。
来愛の部屋に入るとすぐTV台の扉を開けた、あのゲームはCD-ROMだったはず。
「あった、夏グラ。夏色グラフィー」
このゲームは主人公の小梅が憧れていたハリウッド女優を目指すストーリーだ。最後は全てを捨てて何故か駄菓子屋をやるという、あらすじだけでは良く解らないゲーム内容だったが。来愛が呟いた駄菓子屋というキーワードで思い出したのはこのゲームだった。
《海斗くん!》
そう呼んでた来愛が懐かしく思えた、あの来愛もウソだったのかよ。ん、何だコレ? TV台の棚の奥に可愛らしい絵柄の封筒があった。手に取るとガサガサと音がする。
来愛に悪いと思いながらも開けてみると中にはガラスの破片が入っていた。
ビー玉の破片か、さすがに洗ったようで血の様なものは付いていなかった。
ふと気になり俺はゲームのケースを開けた、何故なら次に繋がるメッセージが何処かにあるんじゃないかと思ったからだ。
そこには1枚のメモ紙が入っていた。
″大人になったら僕も小梅の様にハリウッド女優になりたい″
「響介、早く! シオりんが戻ってくる!」
「花音! わかった、今……」
待てよ、何かが気になった。
「響介、どうしたの? 早く! もう来ちゃうって!」
「ちょっと待ってくれ、花音」
夏グラは小学生の頃のゲームだ。でも、このメモ紙新しくないか? しかも端が歪だ。
ハサミで切った?
俺は来愛の机の本棚にあるノートを片っ端から調べた。
「響介! シオりんが戻ってきた! こっちに来る!」
「あっ、あった!」
見つけた、不自然にページの片隅だけを切り取ったノートが。高3の世界史で使っているノート、つまりあのメモは最近書いたものだという事になる。
あたかも小学生の時に書いた夢だと思わせるような擬装、何故だ? これが意味するものとは一体。
「待って、シオりん! 話しを聞いてよ!」
「避けなさい花音。く、来愛は? なんで来愛がいないの!?」
ヤバい、栞さんは来愛が出て行った事を知らなかったのか! 俺のせいだと思われたら栞さんとバトルになってしまう!?
「ママ! 来愛ちゃんはお昼頃出て行ったよ。ママと美優ちゃんには内緒にしてって」
「えっ!? あんな状態なのになんで止めなかったのよ、ココ!」
「だってアレは演技だよママ! 来愛ちゃんは普通だったもん! それにゴメンって言ってた」
「ウソでしょ? そ、そんな……来愛は私達を騙してたっていうの?」
栞さんは力無くその場に崩れ落ちた。
来愛は昼にはもういなかったのか、何処へ行ったんだ? この部屋に来愛が示したものがある筈だが、これといって見当たらない。が、誘導すると考えたらアレだ、あの不自然なメモだ。
「あのメモ紙が来愛のメッセージ? ハリウッド女優といえばアメリカだけど」
実際の来愛とはどうにも繋がらない、でも手掛かりがそれしかないなら行くしかない、俺を誘導したいのなら凝った仕掛けにはしないはずだ。
来愛は既に出てる、今から間に合うか?
「響介、何かわかったの?」
「多分あそこだろう、空港だ。時間がない、急ぐぞ!」
リビングへ向かうと美優さんが戻ってきた。ゲッ、鉢合わせかよ!
「響、お前、来愛に何をした!」
クソッ、今は一刻も早く空港に行かなきゃならないのに。
「美優! 響ちゃん達を行かせてあげて。来愛がいなくなってしまったの!」
「何だって!? お前が何かしたんだろ!」
今の状況で俺が説明しても聞く耳もたないだろうな、どうする? 時間がないぞ。
「美優ちゃん! 来愛ちゃんがいなくなったのはお昼だよ、お兄ちゃん達は関係ないの! それに来愛ちゃんはまともだった、狂った振りをしていたんだよ。なんでこんな事をしたのかな、来愛ちゃん」
いいぞ、助かったよココ、ファインプレーだ。
「そ、そんな、アレが演技だって? なんで、なんでだよ! なんでそんな事をするんだよ!!」
美優さんの矛先を失った怒りはリビング中に響き渡った。
「行くよ、皆んな。新千歳空港だ」
「空港? そこに来愛さんがいるのか?」
「ああ、理由は移動中に説明する。昼に出ていたのならもう間に合わないかもしれないが、とりあえず急ごう。表通りに出てタクシーを拾う」
結構な距離だがケチってる場合じゃない、少しでも早く着かなきゃ、時間を買うんだ。
「待て! 私が連れて行く。響、来愛について知っている事を教えてくれないか? 今アイツに何が起こっているのか知りたいんだよ。車借りるよ、栞」
美優さんの運転で俺達は空港へ向かった。
「なあ響介、来愛さんの部屋で何かわかったのか?」
「ああ、来愛の好きなゲームのケースに小学生の頃に書いたであろう、メモ紙が入っていた。そのゲームの主人公の様にハリウッド女優になりたいと」
「そっか、だから来愛は普段からにゃー子とかを演じてたって事か!」
一華の言う通りならそれは夢を叶える為にか。わからん事もないが来愛の夢は漫画家じゃなかったっけ?それもウソだったのだろうか。
「あの半狂乱になった姿もそうなのだとしたら凄い演技力だわ。でもね、だからといって皆んなを騙してアンソレイユをメチャクチャにする必要なんてないでしょ!」
花音の気持ちはわかる。そうなんだ、そこなんだよな、わからないのは。来愛のシナリオは俺を空港へ導いている、ハリウッド女優に憧れてアメリカへ行きたいのなら、俺達を仲違いさせてまで精神異常者を演じる必要があったか?
《あんのクソジジィ、成敗してくれるわ! 今どこにいやがる!》
《アメリカでしょ、同じ会社なんだからアナタの方が詳しいでしょう?》
ま、まさか……マズい、マズいぞこれは!
「美優さん、急いで! 来愛の目的がわかったかもしれない!」
これは、最悪のシナリオだ。
「響、何がわかったんだ? それと空港に行く理由はなんなんだよ!」
「来愛はアメリカへ行こうとしているんだよ」
「それはさっきのハリウッド女優になりたいって言ってた夢の為だろ? それならさっき花音が言った様に、ここまでする必要があったのか?」
「それがあったんだよ美優さん、精神に異常をきたし心神喪失とみなされれば、犯罪を犯しても刑罰に処されないケースがあるからだ」
「何言ってるのよ響介、それじゃ来愛が罪になるような事を企んでいると言うの?」
「なんかエグい話しになってきたな。来愛さんは何をしようとしてんだよ、何か気付いてるんだろ響介、勿体ぶらないで話せよ!」
確証も無いのにこんな事、主観の推測で言っていいのだろうか、皆んなを不安にさせてしまうだけではないか。でも俺の中では可能性が高い話しだ、念の為皆んなに聞いてもらった方がいいのかもな。
「あくまでこれは俺の推測だが、来愛は父親の事を憎んでいる。自分が辛かった時に助けてくれるどころか更に追い詰められていたんだ。母親の精神疾患も父親が関係しているのかもしれない」
「何よ、来愛先輩も苦労してんじゃん。それでも学校では才色兼備なお嬢様を演じていたなんて何か泣けてくる」
「そんな父親を来愛は手に掛けようとしているんじゃないか」
「手に掛けるだと!? お前それって……」
「来愛が父親に何かしようとしているのは間違いないだろう、場合によっては最悪なケースも想定しなければ」
「それって、まさか殺害……ちょっと美優姉、飛ばし過ぎだって!」
「こんな話し聞かされてチンタラ走っていられるか! 来愛はアンソレイユに馴染みきっていないように見えてた、どこか冷めてるようなそんな気がしてた。だから響の言った事があながち検討外れなんて思えないんだよ! ダメだよそんなの、アイツだって犠牲者だろ? そんなヤツが加害者になんてなったらダメなんだよ! だって悲し過ぎるだろうよ、そんなの」
美優さんの言葉に車内の空気は重たくなった、皆んなどこかやり切れない気持ちをどう扱っていいのか、わからないでいるようだった。
そして俺達は空港に着いた。
「デカい! ショッピングモールの3倍はあるんじゃないか!? ここで来愛を探すのか」
「響介は新千歳空港初めてなんだ? 皆んなアタシに着いて来て、アメリカ行くなら国際線でしょ」
やけに慣れてるな花音。でも、お陰で迷わず行けそうだ、俺1人なら絶対無理だったな。
「うわー、ここが国際線? 雰囲気が違うね、外人が沢山いる! ハロー!」
浮かれてる場合かよ一華。
「見て見て、あの人! 芸能人だよきっと! ミステリアス、めっちゃオシャレー!」
「指差さないの。あの人は芸能人ではないわよ一華、確かにスタイリッシュでそう見えなくもないけど一緒にいる男がチャラいわ、不釣り合いよ」
俺はその女に目を奪われた、なぜならその姿は俺が想像する魔女の姿に似ていたから。
「えっ、ウソ! こっち来るよ!」
「アンタが指差すからよ」
ウエストが絞られ身体のラインがハッキリわかる漆黒のワンピース。胸元から上と腕にかけて透けたレースのデザインは上品な雰囲気を醸しだす。黒くつばが広い帽子に付いているベールで顔は見えにくかったが、俺にはそれが誰だかわかっていた。
「あの帽子めっちゃオシャレじゃん! ベールもいいよね、やっぱ芸能人っしょ! わわっ! アタシ達のトコに来たー!」
その女は美しくも妖艶で周りの視線を悉く攫いながら優雅に歩く。その様はまるでレッドカーペットを歩く女優さながらだった。
「キャペリンハット、別名、女優帽。ハリウッド女優にでもなった気分かしら? 来愛」
「ええっ!? く、来愛!?」
驚く一華に一瞥をくれ、クスリと笑う姿は今まで見た事もない来愛の姿だった。
「ご名答、さすがはお嬢様ね、お詳しいこと」
お嬢様? 花音に向けた言葉なのか?
「それと、おめでとう響介くん。流石ね、よく辿り着きました。それとどうかしら、今日のコーディネート、響介くんの希望に添えられたかしら?」
「俺の希望?」
「アイアンメイデン。いい響きね、思わず調べちゃった! 魔女狩りの拷問器具ですって、ゾクゾクしちゃうわ。だからご希望通りに魔女風にしたの」
聞かれていた!? 盗聴されていたのか!
「おめでとうだと? 来愛、お前何をしたかわかっているのか! 何だその格好は、ふざけやがって!」
興奮する美優さんが来愛に詰めよるもそばにいた男が割って入る。
「誰だ、お前! 邪魔すんじゃねえ!」
「俺か、俺は……」
「西川翔真だな」
「!?」
「流石、響介くん! ホント君は聡明で素敵な男の子だよ」
だからあの時、西川楓が来たのか。兄は来なかったんじゃない、来れなかったんだ。でも何で西川兄妹は来愛に協力するのか。それと来愛の行動だ、アメリカに立たず空港で俺を待っていた理由はなんだ?
とりあえず父親殺害の予想が外れて安堵はしたが怖さが増していく。ここまで大袈裟な仕掛けをしてまで何かを企んでいるという事は、きっとそれに見合った何かがあるという事を意味するからだ。
「そんなキミに出す問題はあと2問! 次の問題はね、これからボクは何処に行くのでしょうか?」
「来愛、何の冗談? いい加減にしてよ! あんな芝居までしてそれがホントの姿? だったらウチに来た時からずっと、ずっとアタシ達を欺いてたの? ママは来愛に寄り添ってくれてたじゃないか!!」
一華……。
「ゴメンね、今はそれしか言えない。それじゃボクは行くよ。響介くん、またボクを探してよ、次が最終ステージだからさ」
「待ちな、来愛!」
「行かせねえよ」
「どけ! お前如きが私を止められるものか!」
「おいおい、ここは空港だぜお姉さん! 俺が大声で騒いだら警備員がわんさか来るだろうな、最終ステージに行けなくなっちまうぜ」
「そいつの言う通りだよ美優さん、今は従おう」
来愛の目的がわからなくなってしまった今、来愛の意に反する行為は危険だ。
「それじゃ頼んだよ、翔真。優秀な響介くんのお陰で丁度いい時間になった」
そう言うと来愛は1人、人混みの中に姿を消した。
「響介、わかんのか? 来愛さんの行く場所はよ」
「調べればわかるとは思うが折角だから利用しよう」
「何をだよ?」
西川翔真は来愛を1人で行かせる為の障壁か? いや違うだろ、本当の役目は。
「翔真くん、来愛の行き先を教えてくれよ」
「あん? 何言ってんの、俺が教えるワケないだろ」
「そうだぜ響介、そんなの俺にだってわかるぞ」
「じゃあしょうがない考えるか。皆んな腹減ってない? この空港、飲食店も沢山入ってるみたいだね、何か食べながら考えようか」
「真壁、何言ってんの? 早く来愛先輩追わなきゃだよ」
「そ、そうだよ、お前早く考えろよ! そんな悠長な事してる場合か? 最終ステージって言ってんだろ!」
翔真の慌て振り間違いないな。
「じゃあ教えて下さいよ翔真くん。アンタの役目は万が一、俺が答えを見つけられなかったり、時間が掛かり過ぎた場合の保険だろ?」
「グッ!」
「さっき来愛は時間を気にしてたもんな、ここまで仕上がったシナリオ、アンタのせいでポシャッてもいいのか?」
「クッ、腹立つなお前! ああ、その通りだよチクショー! 案内してやるよ、20分後にな」
「この後に及んで抵抗? ショボい男だね」
「ちょっと一華、思っても言わないの! 皆んなそう思ってるんだから」
「ち、ちげーよ! すぐ行ってもダメなんだよ! 下準備があるんだから!」
一華と花音、絶対ワザと言ってるだろ。
そして20分後、西川翔真のナビで俺達は来愛が用意した最終ステージへと向かった。
「ところで真壁、お前はどこに行くか検討がついてんのかよ」
「ああ、アンタと来愛が小学生の時に行ってた駄菓子屋だろ? 今もあるのか知らないけどね」
「お前何者? 今回の件で来愛の事怖い女だと思ったけど、お前も中々だよ名探偵」
「そりゃどうも、で、来愛は何をしようとしてるんだい?」
「そこまで言うかよ。でも終わるんだよ、色々とな」
遠い何かを見るような目で翔真は車の窓から景色を眺めていた。
====== 栞 ======
「変ね、誰が掛けたのかしら」
「どうしたのママ?」
「ココ、ママの携帯からお婆ちゃんに電話した?」
「してないよ、するなら自分の携帯使うし」
「そうよね。来愛のお母さんに電話しようと思ってね、この前掛けたから履歴から掛けようと思ったの。そしたら今日の午前中にお婆ちゃんに電話されてる履歴があったのよ」
「間違って押したんじゃない? よくある話しだよ」
それは考えられないわ、だって今日は携帯触ってなかったもの。お義母さんに掛けても繋がらないし、誰かが私の携帯を使ってお義母さんに電話してる。
一華? ううん、一華が来たのはその後。ココでもないとすればその時他に家に居たのは美優と……来愛。
見えない何かが迫ってきているような焦燥感に思わず心の中で呟いた。
響ちゃん、お願い。皆んなを守って
遂に来愛の公開処刑が始まる! 裁かれるのは誰なのか、アンソレイユを巻き込んだ理由とは? そして響介は来愛を救う事ができるのか。
次回 第2章完結! 2/1 お昼に更新します!




