第9話
【あ、お気づきになられましたか!】
…やっべぇ〜、心臓が滅茶苦茶バクバクいってる。
すぅ〜 はぁ〜〜、落ち着け落ち着け。
取り敢えず現状の把握をしよう。
確かAランクの卵が孵って、かなりでかい魔法陣が目の前に現れて光と一緒に消えたから、生物が現れたのかと思い魔法陣があった場所を目で確認したけど、そこにはゴブリン達以外に新しく召喚されて生物はいなかったんだ。んで、もしかしたら透明または地中生物なのか?と思い、これも確認したけど、そうではなかった。そしてゴブリン達にも確認を取ったのだが、ゴブリン達 (ゴブリンジェネラル以外) は空を見上げてそのまま固まっているから俺は何か空にあるのかと不思議に思って上を向いたんだ。そしたらーー
【あの〜、どうしましたか?】
そう、今俺に話しかけてる自称ワイバーンがいきなり空気を震わすほどの叫び声(ご丁寧な挨拶)を上げて、俺は威圧的な声と頭に入ってきた言葉のギャップに本日2度目のブラックアウト。おしまい。
「って!それより、目を覚ましていきなり目に飛び込んできたのが
ワイバーンのどアップの顔って!俺の心臓破裂させる気かっ!!」
【ご、ごごめんなさい!私がご挨拶した途端に倒れられたもので、心配で…】
「グルルルルゥ」
えっ、俺って威嚇されてんの!?めっちゃ怖い…しかも声と声の内容ご一致してないんだけど!あれ?声と声って、こいつ威嚇のとき以外声だしてないよな?
「な、なぁ、何で怒ってんのかは分からないけど、取り敢えずごめん。それよりさっきからどうやって俺と会話してるんだ?声に出してはないよな?」
【い、いえ!怒ってませんよ!すみません、ちょっと悲しくなって……はい、どうやって会話、ですよね
?えーっと、一応私は念話というスキルを持ってまして…そのスキルを使うと頭の中で会話をすることができるんですよ。念話は言語の違いに影響されず伝えたいことをそのまま相手に伝えることができるからとても便利なんです。あっ、でも念話のスキルを自分が持っていないと言葉を交わさないやりとりはできません。自分がスキルを持ってないければ、相手の伝えたいことは分かるのですが、相手に自分が思ってる事を伝えることはできないんです。】
え、あれは悲しい表現だったのか…
ふむ…念話か。
ゴブリン達は持ってないスキルだな。だけど、なんとなくだがゴブリンが言葉を出せば、その言いたいことは分かる。
これは絶対卵ダム創成のおかけだな。まぁ、声を出せないスライムに関しては全然分からないんだけど。
その点念話はかなり使えるな…なんとなくじゃなくて、はっきりと言いたいことが分かるし。これをゴブリン達にも取得させたいな。それか一層の事、こいつらに1から日本語教えるか?いや、今はやめとこう。時間がないし、何より1からとなると俺が面倒くさいからな!それは生活が安定した時にまた考えるとして…一応、まあ分かってるけどこいつに確認しとくか。
「なぁ、お前って俺の卵から召喚されたんだよな?いや、分からないか…取り敢えず、俺とお前は何かしらの契約を結んでるってことでいいのか?」
【はいっ、ここにどうやって来れたのかは分からないんですけど、あなたとは主従のような契約を結んでいるようです。どうやら過去の記憶も思い出せないようですし、もしかすると無いのかも知れませんが…ですが自分の能力についての知識はあるようなので一安心です。お役にも立てる思いますよ!】
なるほど、契約か…まぁ、あの迷路のような魔法陣が関係してるんだろうな。
自分の過去のことはどうやら覚えてない、若しくは無いだろうし余計なしがらみは無いと考えていいだろう。
自分のもっている能力のことは分かってるみたいだから、一々確認させなくていいということだな。
うん、それならこのワイバーンさんが言ってる通り早速役にたって貰おうか!
「ワイバーンさんよ、一つ頼みたいことがあるんだけど、やってくれるかな?」
というか、やって貰わないと非常に困る死んじゃうかも…
【はい!あなたは私と契約した、謂わばご主人のような方ですから、なんなりと仰って下さい!」
ふぅ、じゃあ一先ず安心
「分かった、じゃあ遠慮なく…単独で空を飛んで、この場所の近くに森や川があるか確認して来てくれないか?森や川以外でもいいが、取り敢えず今いる場所のような景色と違った場所を見つけたらここに戻って知らせてくれ」
【分かりました!見つけたら戻ってこれば良いのですね?契約のおかげかご主人の居場所をだいたい把握できるようになっているみたいですし大丈夫でしょう!それでは早速行ってきますね!】
「あっ、ちょっと待って!あと、もし何か動物を見つけたら狩って持ってきてくれるとありがたいな。流石に何も食べてないと空腹感がすごくてな。お前も腹が減ってたらそこで食事をしてきていいから、よろしく頼むぞ!俺なんかより分かってる思うけど、自分より強いそうなやつとの戦闘は回避してくれよ。今お前が居なくなってしまうと俺たちが本当に困るからな、安全第一で!」
運良くワイバーンが召喚されたけど、次にAランク以上の卵を手に入れるのはいつになるか分からないから現状の最高戦力を失くしてしまうのは危険だ。
【えっ!私のことを心配して下さるのですか…?なんとお優しい!任せてください!私が2つ共に解決してみせますよっ!」
おぉなんか気合い入ってるな。
そりゃ、心配するでしょっ!俺たちの命は君に掛かっているんだ!本当に頑張ってくれ!って、俺人任せ、いやワイバーン任せすぎだな。
俺も高速移動ができたら良いんだけど水魔法ではな…
こいつが探してくれてる間に何か良い魔法がないか考えとくか。
動物を狩ることに関しては、ワイバーンより強い生物がそうそうそこら辺にいるとは思えない、Aランクだし大丈夫だろう。まぁ、それ以上がいたら逃げて貰うしかないが…。
こいつ、話してて思ったけど性格がおとなしい感じだし無理はしないだろう、多分。
…一応ステータス見とくか、もしかしてってこともあるしな。それを見て動物の狩りの有無を決めよう。
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名称: ワイバーン
年齢: 162歳 性別: 女
HP 10000
MP 5600
STR 5120
AGI 4800
VIT 4300
DEX 4000
INT 3700
LUK 1000
ーーーユニークスキルーーー
火の咆哮 Lv10
ーーーーースキルーーーーー
威圧 Lv58 風魔法 Lv46 火魔法 Lv51
遠視 Lv39 気配察知 Lv42 暗視 Lv32
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……強えーーっ!
しかも、女だったのか!話し方と頭に届く声の高さでたいたい察してたけど!というか性別は雌じゃないの?
まさか初めての女性との出会いがワイバーンとは…中々面白いな…ふぅ
能力に関してはユニークスキルも持ってるし、スキルもかなり多い。火の咆哮って、なんかめちゃくちゃ強そうだし…それに威圧って…本当に敵じゃなくてよかった…これなら任せても問題ないだろう。
ていうかこいつでどうにもならない生物がこの辺にいたら短すぎる人生終了だな。
「よし、それじゃあ頼んだぞ!」
【はい!】
ワイバーンは応えるとそのまま大きな二翼を力強く羽ばたかせ、空を駆け上がっていった。
「行ったな。ここから近くなら良いんだけど、見渡す限りでは何も無いんだよな〜。ある程度の距離はあるだろうから戻ってくるのに時間がかかるだろう。よし、その間に魔法の特訓でもしておきますか!」
俺はワイバーンと会話しているのをじーっと見ていたゴブリン達にここに留まることと、その間各自近辺ならば自由にしていいという旨を伝えた。
「じゃあ、まずは水魔法のおさらいだな!MPの残量も考えなきゃならないけど、その後に他の魔法についても考えてみようかな!」
凛冶は気合いを入れるように両手で頬を叩き、魔法の行使時に感じることのできる体内にあるMPの流れを少しの慣れをみせるように操作するのであった。