第15話
目だけが見えるというのは何か恐怖心を掻き立てられるものがある。それは姿形が見えないことで人間特有の能力である想像力が大きく作用しているからだと思う。古来より人が闇を恐れていることと同じではっきり分からないものが怖いのだ。と、似非哲学っぽいことを言ったところで、目の前の状況にどう対応しようか…どうもあの目の主は俺たちを食事にしようとしてる雰囲気だし、退いていきそうにないんだよな。さっきからずっと一度も目を逸らさないし。野生の動物は自分より力を持つものに敏感で察知能力が高いって聞いたことがある。ってことは目の前の存在は俺よりも能力が高いってことか?それだと本格的にマズいぞ…他にも考えられるのは、能力の差を理解できないほど知能が低いのか、相手の強さは理解できているがそれでも俺たちを襲わなければならないほどの理由があるのかだ。その理由としては飢餓に苦しむ状態にあるってことも考えられるな。ま、何にしても目の前の奴がどんな奴か分からない限り充分な対応策が取れないことは間違いない。一応鑑定を使ってみたんだが、スキルの有効範囲が奴に届いていないみたいで名前も分からないし…出来れば日が明るいまでには方をつけたい。火は焚くが夜で自分の近くに敵対的な存在がいるっていうのは尚更怖いからな。
さて、どうするか…ワイバーンと緊急時の何かしらの信号を決めておけば良かったな。とりあえず今から上空にでっかい火魔法をぶっ放すか。ワイバーンは視力補強のスキルもってるし、音も大きくすれば耳に入るだろう。俺の居場所も何となく分かるって言ってたし、俺たちに何かあったと伝えることができると思う。問題はワイバーンがこっちに戻ってくるまでの時間までに戦闘が始まる可能性、だな。
よし、覚悟決めるか。
作戦はまず、上空に向かって火魔法を使用した後奴のいるあたりに木の実を取るために使った風魔法を1発威嚇攻撃、ここで奴が逃亡かこちらに攻撃をしてくるかのアクションを起こすはずだから、逃亡した場合は放置、こっちに向かってきた場合は・・・これでいこう
ゴブリン達もこの今の俺たちが置かれている状況が分かっているのか、さっきまで聞こえていた話し声が無くなっている。
少し驚くだろうが仕方ない、やるぞ!
「おらッ!」
ーーバアァアァン!!
多めに注ぎ込んだMPによって行使された火魔法が上空に音を響かせ花火のように炸裂する。そして続けざまに風魔法を1発奴に向かって放つ。
シュン!パサパサパサパサ!
サッ
「グルグルグルッ!」
木や草によって隠されていた奴の全貌がついに明かされた。体は大きく口には恐ろしく尖った牙が、大地を四肢で強く踏みしめ存在感を放っている。
でっか!地球にいたオオカミに似ているがそれしては大きい。
ザワザワザワ、、ザッザザッ!
「マジかよ…」
1、2、3…まさか、他に7匹も居たとは…オオカミって集団行動するっけ?
1匹目のオオカミよりは少し小さいがそれでも地球のオオカミより明らかに大きい。
俺が少し体を強張らせたのを知ってか、一際大きなオオカミは舌舐めずりし狩りを楽しむ様に少しずつ他のオオカミと共にこちらに近づいてくる。
背の先にいるゴブリン達に動く気配がある。張り詰めた空気が辺りを支配する。
まだだ、このタイミングじゃない
オオカミたちは遂に川に足を踏み入れる。川の横幅は20メートル程で俺との距離もその位に近い。一気に間合いを詰められたら俺の人生は終わる。集中を切らすな。
そして、オオカミたちは浅い川に全ての足を踏み入れた。
次の瞬間ーーオオカミたちは全速力で俺の方に駆け俺たちを食い千切ろうと一歩目に力を入れた。
ーー今だっ!
オオカミの力強く踏み込んだ足は次に動くことはなかった。全てのオオカミの顔は驚きの表情で固められている。何故だ、と。オオカミたちは動かない足を見る。すると川の水の流れが足と共に固まっているではないか。
「ふぅー、上手くいったか。出来る確証は無かったけど成功してよかったぜ。少し疲れた、MPもそこそこの量使ったからな。慣れないことはぶっつけでするもんじゃない。ーー川の水を凍らせるのは」
凍らせことができて本当良かったわ〜。ま、凍らせるって言ってもオオカミが居る周辺位しか凍らせれてはいないけどね。氷魔法は覚えたてで出来るかどうか不安だったんだよな。オオカミたちも抜け出せれてはいないみたいだし一応成功だ!これからのためにこいつらのステータスは見ておくか。
俺はまず他の奴より大きいオオカミとその横に居るオオカミに氷で滑らないようゆっくり近づき鑑定を行う。
ここで滑ったら相当精神的にくるものがありそうだし。
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名称: ラドウルフリーダー
年齢: 27歳 性別: 男
HP 178
MP 0
STR 91
AGI 237
VIT 80
DEX 74
INT 60
LUK 41
ーーーーースキルーーーーー
暗視 Lv6 気配察知 Lv16 隠密 Lv7
疾風 Lv2 威嚇 Lv4
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名称: ラドウルフ
年齢: 19歳 性別: 男
HP 67
MP 0
STR 43
AGI 101
VIT 31
DEX 32
INT 30
LUK 25
ーーーーースキルーーーーー
暗視 Lv2 気配察知 Lv4 隠密 Lv2
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…こいつらはラドウルフっていうんだな。
やっぱり大きい方がリーダーか。能力的にはDランクのゴブリンジェネラルと同じ位だが、AGIがかなり高く俺よりも上だ。疾風てなんか凄そうなスキルもあるしまったく、足を潰せて良かったぞ。
横のラドウルフはそこそこの能力でEランクの上位って感じだ。他のラドウルフもこいつと同じ様なステータスだったから、これがラドウルフの平均的な能力なのかもしれない。
「こいつらのステータスも確認出来たし、始末をつけるとするか。」
MPも結構使ってしまったが、まだ余裕はある。今の自分の能力でこれに一番向いているのはやはり風魔法だろう。より鋭くより速くをイメージにもって、ラドウルフの数だけ風の刀を生成…出来た。よし、いけっ!
ーーシュン、スパ…ドサっ
8つの頭が氷上に落ちる。赤に変わりつつある一面から鉄の臭いが少しずつこちらにも漂ってくる。
俺はその8つの死体を残りのMPのほとんどを注ぎ込んだ火魔法で燃やし、赤氷が完全に溶けて消えた時にはその場に8つの骨塊しか残らず小さな骨は赤水と一緒に流れて行った。
俺は背後に振り返ると戦闘態勢に入った姿のままこちらをみて呆けるゴブリンたちを見て少しの笑みを浮かべた。




