第4話
第四話
ガラッ
いきなりドアが開いた。
ドアの外からは病院の先生が入ってきた。
「どうしたんですか?先生。注射の時間じゃないですよね?」
私は聞いた。
「雪道さんのお母様達はもう、知っているのですが。雪道さん自身は知らないことです。みなさんも、知る権利があります。」
私は考えもしなかった。
辛い現実が待ってたなんて…。
「これから、お話することは、一回だけしか言えませんから。私には荷が重くて。雪道さんの脳に脳腫瘍がでています。雪道さんの寿命は、多くても、二ヶ月しかもたないでしょう。」
先生はつらそうな顔をして、私達につらい現実をつきつけてきた。
「そんな。」
私は苦しく何かこみあげてくるものをおさえるみたいに口元をおさえた。
(う、気持ち悪い。)
「すみません、ちょっとトイレ。」
私は病室のベットからおりた。
すたすたすた…
私は思わず吐いてしまった。
(すごく、気持ちが悪い。)
「すみません。急に。」
私はまた、病室にもどり先生の言うことを聞くようなかたちで、病室のベットに座った。
「さっき雪道さんはトイレに行ったけど何でだい?」
先生が私に真剣な目で聞いてきた。
「え?ちょっと気持ち悪くなって。」
私は正直に言った。
「そう、その脳腫瘍っていうのは頭痛や吐き気がしたり普通ではありえない病的反射をおこすこともあり、手足がしびれたり感覚がにぶくなっていくんだ。つらいと思うよ。私には、すごく荷が重くて、すごくつらいんだ。精精後悔しないようにしたほうがいい。」
先生はうつむきながら、私達に話した。
みんなは辛そうな顔をしていた。中には泣きそうな女子達がいっぱいいた。
「みんな、泣かないでよ。」
私は辛そうな顔をしているみんなをはげました。
現実はつらい。
私は先生に現実をつきつけられたときそう思った。
(なんで、世の中って意地悪なんだろう。)
私は泣きそうになった。
「先生、脳腫瘍は手術して、治せないんですか?」
言い出したのはあの、厚樹だった。
「手術は私の手では、百パーセント中、たった、二十パーセントしか確立がないんだ。」
先生は苦しそうな色の目をして、少しかすれた声で言った。
「そんな。」
厚樹はうつむいた。
「うまい人でも、六十パーセントしかないんだよ。一応、手術はできるけど、もっと大きい病
院に入院してもらうしかないな。」
先生は深い色の目をして、今にも死にそうなぐらい顔色が悪かった。
「先生、俺の父さんならできるかもしれません。父さんは病院を経営してて、今、由紀元病院
のドクターをしているんです。」
厚樹は必死に言った。
「それなら大丈夫かもしれない、由紀元病院では、きっと、道具もそろってるだろうし。たのむよ、君のお父様に相談をしてみてくれ。」
先生はすぐに明るくなった、多分荷物をおいたんだ。
「はい、がんばって、父さんにたのんでみます。」
厚樹は真剣な目をして言った。
覚悟をきめたかのように。
「大丈夫?厚樹。」
私は辛くて言った。
「何で。お前がこうなったのも俺のせいだし。」
厚樹は自身ありげに言う。
「いや、帚でぶったって言ったね。多分出血したのはそのせいだと思うけど。多分雪道さんのは前からなってたよ。だけど、病院に来るのが遅かったみたいで、もう、手遅れなんだ。」
先生は冷静な目で私達に言ってきた。
「そうだったんですか?」
厚樹は少しホッとしたようにも見えた。
「でも、助けます。」
厚樹は覚悟をきめたように真剣に言った。
私は何故か浮かない顔をしていた。
だって、本当に浮かない気持ちがあるから。
全部、厚樹のお父さんにまかせたら、厚樹のお父さんは責任重大になって、辛いと思う。
「期待なんかさせないほうがいいよ。」
私は真っ黒な目をして言った。
暗闇に落ちたような目をしていたに違いない。
「何言ってんだよ?お前生きたくねえーのかよ?!」
厚樹は黒くすんだ目を私にむけてきた。
その黒い目は綺麗で、私は目を合わせることができない目だった。
「生きたいよ!!でも、厚樹はよくても、厚樹のお父さんは責任重大なんだよ。医者になんか絶対って文字はないんだよ!!厚樹のお父さんのことも考えてあげなよ。」
私は暗闇に落ちたみたいな目を厚樹にむけた。
私の瞳には厚樹が映る。
「確かに絶対っていう文字はなくても、奇跡っていう文字がある!!」
厚樹は私に少しだけ顔をちかずけた。
必死な目だった。
「じゃあ!奇跡っていう文字に運をまかせろっていうの?!!」
私は泣きそうな目になって必死に言い返した。
だって、死にたくないのなんて当たり前のことじゃん。
なのに…。
「…。とにかく、父さんにたのんでみるから、あきらめんなよ。」
厚樹は優しく、私に言った。
「……。」
私は浮かない顔でうつむいた。
「とにかく、厚樹君がお父様にお話してくれるんだね?」
先生が困り顔で私達に言った。
「はい、絶対に話します。」
厚樹はキリッとした声で先生に顔をむけた。
「じゃあ、たのむよ、厚樹君。」
先生は厚樹の肩をポンッと軽く叩いた。
「はい。」
厚樹は真っ直ぐに先生の顔を見ていた。
「じゃあ、失礼。」
先生は少しだけペコリとお辞儀をして、病室を出ていった。
ガラッ・ピシャッ
病室のドアが開きすぐに閉まった。
「じゃあ、そろそろ俺達は帰るよ。」
先生が言った。
「はい。」
私は少し笑みをこぼして言った。
「私はもう少しここにいます。」
由梨矢は先生に言った。
「ああ、いいけど、お前もあんま長くはいるなよ?」
先生が心配そうに顔をしかめながら注意した。
「はい、そうします。」
由梨矢は笑顔で言った。
ガラッ…ピシャッ。
あんまり早くはドアは閉まらなかった。
ほぼ全員が出るのだからそりゃそうだ。
「大丈夫なの?家。」
私は由梨矢に顔をむけながら言った。
「うん、一応、遅くなるとは言っといたから大丈夫。」
由梨矢は笑顔で私に答えてくれた。
私はちょっと落ち着いて、心がやすらいだ。
「あんな厚樹、見たことなかった。私。」
由梨矢は急に話し始めた。
「え?」
私は首をかしげながら聞いた。
「厚樹があそこまでに必死になってるの、はじめて見た。」
由梨矢は窓の外を見た。
「ふーん。」
私は半信半疑で言った。
「それだけ?」
由梨矢はビックリ顔になって言った。
「え?」
「もうー。」
由梨矢はちょっとだけ怒ったように、言った。
「ごめんごめん。」
私はちょっとだけ笑った。
「厚樹は、多分、本当に霙を助けたいんじゃないかな。」
由梨矢はまた、窓のほうをみながら言った。
厚樹を思い出すように遠い目をして。
「何で、そこまで、私のためにしてくれるんだろう?」
私は由梨矢に聞いた。
「教えてくれたからだよ。友達の大切さ。」
由梨矢は私の顔を真っ直ぐに見つめて言った。
「え?」
「だから、前に言ったじゃない。頭から血流してるときに。」
由梨矢の目は少しだけ光っていた。
「あ、あの時の言葉?」
私は首をかしげた。
「それか…好きってことも考えられるわね。」
由梨矢は私にニヤッとして、意地悪そうな顔をして言った。
「もう!からかわないでよ!!」
私はちょっと怒って言った。
「わかんないじゃない。本当かは。」
由梨矢は冷静に言った。
「由梨矢は厚樹のこと今でも、好き?」
私は由梨矢の目を真っ直ぐに見た。
「え?まあ、今でも、好きよ。でも、もう、叶うことのない恋だからいいの。」
由梨矢はまた、窓の外を見つめて言った。
遠くを見るように。
「叶わない恋かー。」
私も窓の外を見つめた。
外には雪がちらちらと降っていた。
「綺麗だね。」
私は由梨矢に言った。
「うん。」
由梨矢は言い返してきた。
私達は少しの間曇った窓の外の雪をを見つめていた。
これからは、あんまりこの景色は見れないはもしれない。
「じゃあ、私も、そろそろ帰るわ。」
由梨矢はイスから立ち上がり、ドアの前に立った。
「また、明日来るね。」
由梨矢は病室のドアのとってをもちながら私のほうに振り返って言った。
「うん、待ってる。」
私は笑顔で言った。
ガラッ・ピシャッ。
ドアが閉まった。
私はもう、少しの時間しかないのか。
私は曇ったガラスを手でふき、窓の外を見た。
雪は降り続く。
でも、私には綺麗に光る蛍のように見えた。
(なんで、私がこんな思い病気になんなきゃならないのよ!)
そう思ったとき目から涙が零れ落ちた。
「ひっ、ひっ、ひっく、ひっく…。」
私は泣いてしまった。
私は夜までずっと泣いていた。
気がつかないうちに朝になっていた。
私は、目蓋がはれて赤くなっていた。
「ひどい顔。」
私は病室の鏡の前に立って、顔を近づけてつぶやいた。
私はずっと寝た。
朝の六時から二時まで寝た。
私は寝てる間、夢をみた。
よりによって私が死んでしまった夢だった。
「ありえない。こんなときにこんな夢見ちゃった。怖い。」
私は腕をさすった。
鳥肌が立っていた。
(なんでよりによってこんなときに。)
ガラッ
病室のドアが開いた。
誰かが入ってきた。
知らない人。
「誰…ですか?」
私はその人に聞いた。
「俺、ここに骨折で入院してる、夜厨喜 貝都。《やずき かいと》って言うんだ、よろしく。」
黒髪にちょっとだけくせっけがはねてて。
今時のかっこいい人。
「はあ、よろしく…おねがいします。」
私は戸惑いながら言った。
「何歳ですか?」
私は貝都さんに聞いた。
「俺は、十七歳。」
貝都さんは笑顔で言った。
「へえー私十四歳です。」
私はニコッとした。
「君可愛いね。」
貝都さんは綺麗な瞳で、私のほうを見つめてきた。
「そんなに近づかなくても…」
私は顔をひきずりながら言った。
「あ、ごめん。」
貝都さんは頭を手でかいた。
照れてる。
ガラッ
「霙ー!大ニュース…だよ。」
由梨矢はいいかけて止まった。
「何で?いるの?お兄ちゃんが…」
これからおこることは……
これもまた、辛い現実だったのです……




