↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレダンジョンから始まる祖国再興――亡国王子は『迷宮管理者』を継承する。  作者: 永礼経


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/65

第65話 『迷宮管理者』、悩む


「う~~~ん……」


 レンは今日の現象がどうして起きたのかを考えていた。

 だが、どう考えても、その原因に思い当たる節がない。


 ロジーナとノエリアが、手に持っていたエールのジョッキをタンッと音を鳴らしてテーブルの上に置いた。


「レン! なんだその辛気臭い顔は! 酒がまずくなるだろう!」

「レンさん! 飲むときは飲む、食べる時は食べる! それが冒険者の流儀ですよ!」


 二人がレンの顔の前にずいと首を伸ばして言った。


「『冒険者の流儀』って――。そんな流儀、ないだろ?」


 レンは二人の顔を押しのけながらそう呟いた。


「――いや、ほら。あの『石牢の迷宮』はランクC~Bあたりの設定になってるはずだったんだ。それなのに、A級モンスターが湧いたって、どうしたって説明が付かないんだよ」


 レンは実はそのまま最下層まで下りて行って、すぐにでも設定パネルの確認を行いたかったのだが、ユリアとアンの消耗がかなり激しかったため、今日のところは二人の救出を優先し、引き揚げてきたのだ。


「そんなこと、知るかぁ!」

「そうですよ! 私たちにそんなこと言われても、何も答えようがないじゃないですか!」


 たしかに二人の言う通りだ。

 説明がつくつかないなど、二人にとってはそれほど重要なことではないだろう。


 だが、レンにとってははっきり言って、非常に重要な事象である。 

 

(迷宮管理者能力がイレギュラーなことを回避できないとなると、運用にかなりの不都合があるんだよな――)


 今日は本当にたまたま気になって追いかけて行ったから大事に至らなかったものの、もし、レンが追いかけていけなかったとしたら、二人はあそこで死んでいたかもしれないのだ。


 所有迷宮を『探索迷宮登録』して安定した収益を上げることが、レンの計画の第一歩だと、そう考えてずっとここまでやって来た。


 だが、不測の事態が相当の頻度で起きるとなると、冒険者たちから敬遠されるのは目に見えている――。


 それが『仕様』だというのなら、計画の再構築が必要になるだろう。


(だけど、そんなはずないんだよな――。父上が俺と同じように『迷宮管理者適正』を使って、領土内の『迷宮』の設定を変更して運用していたのなら、その時にも同じようなことが起きていてもおかしくないはずだ。もしそうなら、一般人を自由に出入りさせるなんてことは絶対に許さなかっただろう)


「ん、なぁああ! わからん!」


 レンはそう声を上げると、エールジョッキを鷲掴みにして一気に飲み干した。


「――ふぅ。いずれにしても、『石牢の迷宮』の最奥まで行って『設定パネル』を確認する必要がある。明日、朝一で行ってくる――」


「おいおい、【アース・ドラゴン】はどうするつもりだ? まさか一人でやるつもりじゃないだろうな?」

と、ロジーナが眉を寄せる。


「仕方ないだろう。別にやってやれないわけじゃないんだ。相手は

A級、こっちはS級なんだからな」


 レンはそう応じた。


「それはそうですけど――。でも、危険なモンスターには違いないんですよ?」

と、ノエリアが眉間にしわを寄せてレンに告げる。


「――ったく世話の焼けるお坊っちゃんだ! 『石牢の迷宮』の最下層はたしか9階層だったな? そんなもの、午前中のうちに踏破できるだろう。午前は『石牢』、午後は少々危険度の高い『音切りの迷宮』ってのはどうだ?」


 ロジーナが折衷案を提示する。


 『音切りの迷宮』——。

 『石牢の迷宮』から一時間ほど先に進んだ場所にあるS級ダンジョンである。


 少々特殊な効果をもつ霧に煙る遺跡型迷宮で、出現するモンスターがA~S級しか出現しないという超級ダンジョンである。


「おほ! いいですねぇ! 前々から行きたいと話してたんですけど、さすがに二人じゃきついかもって後回しにしてたんですよね~」

と、ノエリアがやる気を見せる。


「お前、今日の回復術式でかなりの量の魔力を使ったろ? 回復できるのか?」

と、レン。

 ノエリアはアンとユリアの救援のために普段はあまり使わない回復術式を多用したはずだ。疲れていないと言えば嘘になるだろう。


「へっへ~~ん! 実は、ですね――。じゃ~ん!!」


 そう言いながら、ノエリアがローブの胸元に手を突っ込んで中からごそごそと何かを取り出す。


「はい! 『超聖水《エリクサー》』で~~す!!」


 テーブルの上に置いた小瓶は紛れもなく『超聖水《エリクサー》』だった。


「お前、いつの間にそんなものを――」

と、レンが目を見張る。ってか、どうしてそ(・)ん(・)な(・)場(・)所(・)から出てくる?


「ユリアさんから貰ったんですよ。あ、ちゃんとお代金分はお返ししましたよ? ユリアさん、念のためにって、3本ほど購入しておいたらしいんですよね――。ちょっとびっくりしちゃいましたよ。『超聖水《エリクサー》』って値段の割に希少性が高くって、なかなか手に入らないんですよね」


 しまった――。と、レンは思った。


 実はレンには、ユリアが『超聖水《エリクサー》』を複(・)数(・)本(・)買えた理由に心当たりがあった。

 そして、ユリアに『超聖水《エリクサー》』は希少な魔道具だけど、メモを持っていけば必ず買えるからと告げてもいたのだった。


(ユリアとアンのやつ、結構貯めてやがったんだな――)


 おおかた、魔道具屋が二人の財布の中身を推察して売りつけたのだろう。


(あそこの店主、そういうところが抜かりないんだった――)


「これを飲んで一晩寝れば、魔力なんて朝起きた時には満タンですよ! だから問題ありません!」


 なるほど――。それで、『音切りの迷宮』——か。

 これはまた、『二人の術中(ロジーナとノエリア)』に嵌められたかもしれない。


「――わぁかったよ! じゃあ、それでいこう! 午前は俺に付き合ってくれ。午後はお前たちに付き合うよ」


 レンは白旗を上げるしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。