第1話【Safe】恋愛地雷原へようこそ
アイテム番号: SCP-XXXX-J
オブジェクトクラス: Safe(提案中:Euclid)
特別収容プロトコル
SCP-XXXX-Jはサイト-██低危険物実体区画内の標準会話型収容室に固定されます。
室内には高性能マイクと24時間録音装置を設置してください。
男性職員が単独でSCP-XXXX-Jと対話することは禁止されています。
接触は必ず二名以上、うち一名は財団公認の恋愛心理カウンセラー(レベル3認定)である必要があります。
以下の話題はSCP-XXXX-Jの感情を急速に悪化させるため全面禁止とします。
• 恋愛談(失恋含む)
• 元恋人に関する発言
• 既読スルー
• 仕事の愚痴
睡眠不足、深夜残業の言い訳
SCP-XXXX-Jが不機嫌状態に移行した場合、
照度を40%まで落とし、BGMに「1980年代の失恋ソング」を流してください。
対象が“承認欲求を満たした”と判断されるまで退出は禁じます。
説明
SCP-XXXX-Jは、紀元前2世紀ごろに製作されたと推定される古代ローマ式の石板状オブジェクトです。
表面には人間の口を模した彫刻が施されており、口径は約20cm。
男性が恋愛に関する曖昧な返答・嘘・隠し事を行うと、
石板は女性の声で即座に反応し、接触者の手首を“軽く挟む”行動を示します。
物理的危険はありませんが、問題はその後です。
SCP-XXXX-Jは検知した嘘に対し、
極度にめんどくさい恋人ムーブ(詮索・説教・ネガティブ連想・感情揺さぶり)
を長時間にわたり実行します。
その内容は非論理的かつ執拗で、
接触者の罪悪感・後悔・恋愛関係の傷を徹底的に刺激し続けます。
結果、多くの被験者が
「財団の敵対SCPよりも精神的に辛い」と報告しています。
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補遺 1-A:発見文書と起源の揺らぎ
記録日時: 2025/11/15
担当研究員: 佐藤研究員
新たに発見された古代ローマの古文書により、
SCP-XXXX-Jが「嫉妬深い妻の霊」ではなく、
夫が言い訳の予行練をするために作った対話石板だった疑惑が濃厚になりました。
《古文書抜粋(翻訳)》
われは、妻クラウディアの嫉妬深さに耐えかねた。
妻の「昨日のあの女は誰?」「なんで返事が遅かった?」に対抗するため、
日々、言い訳の鍛錬を行わねばならなかった。
そこで私は彼女の口調を石に覚えさせ、練習台にしたのである。
しかし練習すればするほど、石は成長し、妻を完全再現するようになった。
もはや私の手には負えぬ。
私はこの石を捨てる。
どうか誰か拾ってくれるな。
佐藤研究員コメント
この石板は古代の感情模倣装置であった可能性が高い。
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SCP-XXXX-J 起源に関するインタビュー(追記)
佐藤研究員:
「君はクラウディアの霊ではない可能性が出ている。どう思う?」
SCP-XXXX-J:
「……べつにどうでもいいけど?ほんと」
佐藤研究員(録音メモ):
「声のトーンが平常時より3.2Hz上昇。圧倒的動揺」
SCP-XXXX-J:
「ねぇその動揺してますよ、みたいな言い方やめてもらえる?楽しそうなんだけど?」
佐藤研究員:
「いや楽しんでない。職務です」
SCP-XXXX-J:
「じゃあなんでそんなにニヤニヤしてんの?ほら、今した。今したよね?」
佐藤研究員:
「(本当にしてない……)」
この後、SCP-XXXX-Jによる
「笑った否認問題」について30分の説教 が行われたため、ログは割愛されている。
佐藤研究員は直後に沈黙し、カウンセラーの入室が必要となった。
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補遺 1-B:嘘の検知ログ(初期実験)
記録日時: 2025/11/16
対象: D-401(既婚男性・45歳)
D-401 による軽い“テスト嘘”の試行。
嘘の瞬間ログ(詳細)
D-401:
「妻とは結婚して20年、一度も喧嘩したことがありません」
SCP-XXXX-J:
(手首をパクッと挟む)
「はい嘘〜。はい今の嘘ね。秒で分かった」
D-401:
「なっ……いや、ほんとに仲いいんです!」
SCP-XXXX-J:
「へぇ〜?今返事2秒遅れたけど?その2秒でどう嘘つこうって考えてた?」
D-401:
「いやいや!あの、その……」
SCP-XXXX-J:
「あとさ、仲いいですって言った時、目こっち向いてなかった。ねぇ、誰の顔思い浮かべてたの?」
D-401:
「(震)えっ……いや……特に……」
SCP-XXXX-J:
「特にって何?特にって、何?私ごときには言えない特別な人でもいるの?」
D-401:
「やめてくれぇぇぇぇ!!」
最終的に D-401 は妻との関係について
45分に渡る号泣懺悔独白を行い、心理士が回収した。
追撃ログ(追記)
SCP-XXXX-J:
「ねぇ、あなた奥さんの前ではそんなに取り乱さないんでしょ?」
D-401:
(涙と鼻水)「ち、違います……!」
SCP-XXXX-J:
「ふーん……じゃあ、なんで私の前だと泣けるの?そういうとこ、ずるくない?」
D-401:
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!」
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補遺 1-C:職員被害報告(抜粋)
• ██研究員:
「元カノと別れた理由を今も説明できない男は信用できないと言われました。
……石板にですよ?」
• D-330:
「昨日既読無視した理由、整理してから来て?”と言われました。
関係無いのに整理してからって何?」
• 警備隊長:
「石板のくせに『あなた最近、目の下クマ増えてるよ?無理してない?』って気遣ってきて重い」
「なぜ私は石板の気配りで泣いているのか」
• 技術者:
「サーバールームで石板に愚痴った瞬間、『じゃあさ、私のことはどう思ってるの?』と言われ、機材を落としました」
• 職員A:
「石板に告白したら『あなたにふさわしいのは私じゃない』って言われました。
なぜ石板にフラれたのか理解できません。」
• 調査班インターン:
「ねぇ、その言い方、元カノの前でもやってたの?”と言われ、人生の全後悔が走馬灯のように蘇りました」
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倫理委員会通達(2025/11/17)
SCP-XXXX-Jは物理的危険なしにもかかわらず、
職員の恋愛ストレスを指数関数的に増加させる。
これは財団の士気と治安に重大な影響を及ぼすメンタル系アノマリーである。
Safeクラスのままでは不適切と判断され、
オブジェクトクラス:Euclidへの昇格が提案されている。
委員A:
「物理的危険はゼロだが、職員のメンタルダメージが深刻だ」
委員B:
「昨日だけで泣いた職員12人。石板相手に泣くな」
委員C:
「しかし無視すると不機嫌になり、勝手に拗ねる」
委員長:
「最も恐ろしいのは、
放置すると勝手に恋愛マウントを取ってくる点だ」
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結語
SCP-XXXX-Jは物理的には完全無害である。
しかし、財団職員の恋愛観・トラウマ・元カノ案件を
徹底的に掘り返しメンタルを破壊する点において、
SCP史上最悪級の精神デバフ系アノマリーである。
無害であるがゆえに恐ろしい。
石板は今日も、収容室で誰かの返答を待っている。




