330話 城塞都市ガリオ。
330話 城塞都市ガリオ。
この上なく偉大な主『センエース』のオーダーを受けた『デス(セラフィムスパーダ)』は、命令に従い、城塞都市ガリオに降り立った。
この世界の支配者『龍神族のガリオ』が直々に統治している都市だけあって、
『城下町の豊かさ』が違った。
他とは、桁も品も格も違った。
この街に住んでいるのは、この世界の勝ち組ばかり。
メイドも下男も、『その界隈の中では高位に位置する者』ばかりがそろっている。
もちろん、インフラ整備のため、『馬車馬のように働く奴隷階級の一般人』もいるが……『魔人』は存在しない。
ほかの街だと、奴隷階級の仕事は、魔人が担うのだが、気品に溢れるこの街に、魔人が足を踏み入れられる余地はない。
よって、便所掃除や死体処理やゴミ処理などのような、魔人専用の仕事も、人間が行っている。
普通の賃金では誰もやってくれないから、かなり高い給料を払ってやらせているのだ。
その上で、民衆全体に『その手の仕事を任されているのは、誰もやりたがらない仕事を請け負ってくれている気位が高い者』という意識を植え付けることで、モチベーションも高めている。
結果、都市内部は清潔に保たれている上、汚らわしい魔人も存在しない、という、
上流思考の人間にとっては理想の楽園になっている。
汚いものには綺麗にフタをする。
そうやって、この都市は、
超一等地、勝ち組の街、もっとも品格高い場――というブランド化に成功した。
成功者が住む町。
この世界のエリート・富裕層の上澄みが集まるパラダイス。
……そんな理想郷に、
地獄を見せるべく……デスは動き出す。
魔法を使い、『人間の子供』の姿に擬態したデスは、まず、『街の調査』から開始した。
勝手にやっているのではなく、全ては、偉大なる支配者センエースの指示。
・『真っ当に生きているだけの者』に害を与える必要はない。
・調査した上で、クソだと判定した者は消していい。
・ガリオと親衛隊はボコボコにしろ。
・流石に、子供は殺さない方向で。
・民衆の恐怖を煽るだけなら無制限で許可する。
ほかにも無数の注意事項を与えられているデス。
その全てを完璧に守った上で、街の調査を進めていく。
この街は、『くさいものに全力でフタをして、極端に品性を底上げしている街』なので、
『わかりやすい胸糞』みたいなものはあまりなかった。
ブランド化が過剰すぎて、住んでいる者が、多少、息苦しさみたいなものも感じている様子だったが……『この街に住んでいる』という優越感が、多少の息苦しさを完全に凌駕しているので、大半の者は、まあまあ幸せそうに生きている。
『多くの人間が住んでいる場所』なので、当然、人間関係のいざこさ……つまりは『イジメ』みたいなものも存在するわけだが、どれも許容範囲内というか……普通に、どこにでもある程度のものばかりで、エグすぎる集団リンチ・生贄みたいなものはなかった。
スラムも存在しないし、反社組織も……そんなに存在しない。
本当に、綺麗な街だった。
正確に言えば『綺麗にしようと必死になっている街』だった。
(……『穢れ』は全て外部に排斥することで、この街の中だけは綺麗に保とうとしている……それを悪だという気はないが……妙な気持ち悪さを感じるのも事実。よそが地獄であればあるほど、ここで生活する者のアイデンティティや優越感は高まる。人間は、対比に価値を見出すものだから。不公平を何よりも嫌い、特権を何よりも尊ぶ。……人間だけではなく、動物とはそういうもの……)




