表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
300/337

300話 格下との約束は破るのが定石。


 300話 格下との約束は破るのが定石。


「私は許さない」


「……」


「魔人は道具だ。道具に、人と同じ権利を与えるなど……異常だ。それは、『男の体を欲しがる男』と同じぐらい……汚らわしいことだ。虫唾が走る」


 性別不合という概念や状態は、この世界にも普通に存在している。

 そして、まともな倫理観が働いていない、このレベルの世界においては、

 当然、その手の状態は『汚らわしい害悪』『頭のおかしい病気』『気持ちの悪い精神疾患』という認識がされている。

 まともな人権という概念すらないので、性自認問題が慎重に扱われるわけがない。


 アボカは続けて、


「魔人の扱いは変えない。これまで通り、これからもずっと、魔人は道具だ。いいな」


「……しかし、それでは、あの犬との約束を無意味に破ることになります」


「いずれ処分する予定の犬との約束など果たす必要はない」


「まだ死にません。殺すのは、とことん使い潰してからです。キチンと使い潰すためには、約束を守る必要があります。私としても、『永遠に魔人を優遇する気』などありません。あくまでも、あの犬……センエースを操るためのエサとして、魔人に多少の便宜をはかってやるだけです。あの犬に利用価値がなくなれば、当然、その手の便宜をはかる必要もありませんので、お父様の言う通り、約束など知ったことかと、元に戻すつもりではあります……しかし、今は、それをすべきではない」


「私の命令が聞けないというのか……ガリオよ」


「話を聞いてください、お父様! 今は問題が山積みなのです! 『カドヒト率いる邪教団ゼノ』に、『強大なアンデッド・デス』に、『いるのかどうか分からないけれど、いたら大問題の邪神』……今、世の中には、対処しなければいけない大問題がたくさんあるのです。あの犬……センエースは、それらの問題を対処するのに有益な道具! とことん使い潰すのが賢い! 感情に任せて叩き潰すなど、あまりにも愚かしい!」


「私を愚かだと……言っているのか?」


「だから、話を聞いてくださいと、言っているのに!」


 感情を膨らませて大声を出すガリオ。

 そんなガリオに、アボカは、冷めた目を送り、


「……命令だ、ガリオ。魔人の扱いは変えるな。犬に迎合する必要などない。もしあの犬が『エサが足りない』などとワガママを言って命令を聞かないのなら……殺してしまえ。……そして、ゼノやデスの問題は、貴様かパルカで対処しろ。龍神族の誇りを忘れるな。貴様らがその気になれば、対処できない問題などない。あってはいけないのだ」


「……」


「なんだ、その目は。なにか文句でもあるのか。……返事はどうした」


「……はい……」


 文句なら腐るほどあったが、

 しかし、何を言っても、このガンコジジイは聞く耳を持たないと判断し、

 ガリオは反論するのをやめて、心のこもっていない返事をした。


(くそジジイが……くそ、くそ……ど、どうする……どうしたらいい? このバカジジイのいうことを聞いて、魔人の地位向上の約束を反故にすれば、センエースは、おそらく怒り狂う……あの犬は何をするか分からない……最悪、カドヒトやデスと手を組んで、龍神族に反旗を翻すかもしれない……流石にそこまではしないか? いや、あの犬の頭のおかしさを考えると……その可能性だってゼロではない……ぐぅ……)


 頭を抱えて悩むガリオ。

 『龍神族の当主』という、『誰も逆らえない最上の地位』にいるが、

 しかし、結局のところ、こういう場面では、

 『親子』という関係性の方が重くのしかかる。


 どの立場にいる人間であろうと、

 結局、人間関係では苦しむもの。

 それが人生。


(くそ、くそ、くそ……い、いったい……どうしたら……)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
現場の苦労を知る当主と、理想と選民思想を押し付ける先代。この対立は現実世界にも通じるものがあって、 胸に刺さります。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ