我の戦闘準備期間
4月中に書きたかったのですが無理でした。
今回はいつもより短めです。
あれから4年近くが経とうとしておる。
城は時が経つにつれてどんどん賑やかになっていくのは我の気のせいではない筈だ。
ラズリーナは来る度にあの子達に玉砕されては嘆く。
アルバやオロールの元にたまに同族達が来れば戦闘になる。
さらにそれにクローヌも人化した力でどこまで力が出せるか試すものだから城を何度も修理する羽目になっておる。
ミーナはミーナで実験だと称しては時たま爆発をおこす。
爆発と言っても窓を壊す位程度だがな。
修理と言っても魔法で対処できることだが、それでも限度と言う物を考えて欲しい。
少なくとも二人は我より年上なのだから。
まぁ、これはこれで平穏と言えるのかもしれぬが我の望んでいる平穏とは全く異なる。
とはいってもラズリーナの報告で勇者の動向をきにしつつも後はきたら反撃するしかやることがないのからな。
その対応として訓練も必要なのは我とてわかる。
だけどどうしてこうも戦闘狂が多いのか疑問で仕方がないのだ。
我から見たら絶対に訓練じゃないと思うのだが、アルバ達は訓練だと言い切る。
確かにくたくたになっていても次の日には元気になった居るのだから問題はないのかもしれぬがな。
勇者等が来る前に城が壊れるのが先ではないかと思うのは我だけはないはずだ。
ん?
何故、今のうちに勇者を叩こうとしないのだと?
何を言うのだ。
幼子を殺すほど我等は落ちぶれてはおらぬぞ。
あの剣は確かに厄介だがな。
脅威なのは剣だけで勇者ではないのだ。
それに今回は聖女とやらがいるとラズリーナが言っておるのだが、カトレアからは”ありえない”と言われておる。
それも含めての様子見しかないのだ。
何故カトレアがありえないというかだと?
聖女とはどういう存在か知らぬのか?
聖女と言うのは有翼族から加護を受けた人族の女性の事を言う。
ちなみにが男性だと聖騎士と呼ばれるな。
ぬ?何故不思議そうな顔をしておるのだ。
あぁ、もしかして光の加護を受けたのなら勇者かと思っておったのか?
勇者とは全ての種族が認めた存在の者を言う。
だからこそ大昔は勇者になる事に憧れて冒険の旅に出る者が多かったと聞くな。
我等魔族の者も勇者を目指していた物がいたそうだ。
今の人族はあの剣を抜けたものを勇者といっておるがな。
本来の勇者とは意味が違う。
かといって他の呼び名を付けるのも面倒だから勇者と言っておるがな。
昔の人が聞いたら憤慨するかもしれんな。
話がそれたが、有翼族達は魔力の差はあれ誰もが光属性を扱える。
その中でも魔力が高い有翼族は加護と言う形で人族にも光属性の魔力を与えることが出来ていたそうだ。
といっても光魔法の素質のある子供にしか加護を与える事はできなかったらしいがな。
それに光属性の素質があれば誰でもと言う訳でもなかったらしく今迄加護を受けた者は両手で足りると聞いておる。
ただそれもアンフェールが国として存在していた頃の話だ。
今では有翼族と人族の交流はなく、加護を与えたと言う話は聞いておらぬ。
となると今いるといわれている聖女はなんなのかと言う事になる。
ラズリーナも聖女にあったわけではないが、街中では聖女の噂が絶えないのだと言う。
何もない所に煙は立たぬからな。
カトレアにも協力してもらったのだが全く分からなかった。
ラズリーナ達も教会に潜入するのは難しいし、教会関係者の夢を覗いたそうだが、それらしい情報はなかったそうだ。
考えられることは光魔法が使える者を聖女と言っている可能性だ。
ただ、どんな理由で聖女を名乗っているのかが判断できぬのだ。
わからぬうちに余計な手出しをしては危険だからな。
ただ不思議ではあるのだ。
どの種族も魔力の属性は親と子では同じことが多い。
親が火の属性と水の属性を持っていたら両方かどちらかを受け継ぐだろう。
それ以外の属性を持つ場合はその前の親の世代から引き継ぐ場合も稀にあるな。
ただ、それは生まれ持った属性であって自分で魔力を磨いていけばその他の属性も覚える事は可能だ。
ただし、子に受け継がれるのは親から受け継いだ属性だけだな。
受け継いだ属性は後から覚えた属性よりも威力はあり、家系によってはその家系でしか覚えられない魔法もある。
その辺は秘密事項だから、今はどれくらいの魔法が引き継がれているのかはわからぬがな。
そして属性と言うのはその土地柄の影響も受けやすい。
だからこそイルシオーネには後から光属性を学ぶことは出来ても親から子へと引き継がれている者は今までいなかった。
だからこそ加護なしに聖女と言われる者は存在しない筈なのだ。
だが、パールみたいな存在もイルシオーネに存在しないともいいきれない。
ならば何かしらの影響が現れる筈なのにそれもなく、全く情報が掴めないと言うのが解せぬ。
ちなみに我の種族である魔人族の特殊魔法は血筋ではない。
魔人族は有翼族とは反対に誰もが闇属性の魔法を扱える。
そして闇の魔力が高い者の中にある魔法が継承されるのだ。
それが魔王の証である生命の木に実をつけられることと、あともう1つ。
だが、こちらは秘密だ。
あの子達でさえ知らぬことだからな。
他の種族にもあるのだろうが、その事を探らぬのが暗黙の了解だ。
人族達も特殊な魔法を引き継ぐ一族があると聞くが、彼等は短命でいくつか絶えた魔法もあると噂では聞くが真実はわからぬ。
ただ、人族の中には時たま全属性を極める者もおる。
確か今も南の国にある人族の国で全属性を使える魔術師がおる。
その国の夢魔達とよく交流があって我とも一度夢魔の夢を介してあった事はあるぞ。
我はこの土地から出る事は出来ぬし、そやつもここまで来るわけにもいかぬからな。
夢の中で会う事になったのだ。
人族にしては話の分かる面白い奴でな。
今でも交流はしておる。
奴は特殊な魔法が使える事はできないようだが、奴自身が新たな特殊魔法を編み出すのではないかと我は思っておる。
人族はたまにありえない事をしてしまうから面白い種族だとは思うがな。
それに奴のお蔭で南の方からは今回のイルシオーネの勇者騒動は何もしない動きになっておるから助かっておる。
ついでに聖女についても聞いてみたのだが、奴の国にはそんな話は届いてないようだ。
というより奴も聖女がいる訳がないと驚いておったな。
人族でもちゃんと知ってる者はおるようだ。
他の人族の国も様子見らしいが、人族の中にも脳筋はおるようだ。
冒険者がこの勇者騒動でイルシオーネに集まりつつあるとラズリーナから報告が来ている。
目的は力比べ。
別に我らではなく魔獣と戦えば十分ではないかと思うのだが、より強い奴と戦いたいらしい。
脳筋は種族は違っても考えは同じなのかも知れぬ。
まぁ、なるようになるだろう。
何も考えていないわけではないのだぞ?
でもこればかっりはなるようにしかならぬのだ。
それに我等は人の領土を攻める事は禁じておる。
我が率先して破る訳にも行くまいし、向こうから攻めてくると言うのであれば迎え撃つのみであろう?
それにな。
勇者がここまでこれる可能性のが低いのだ。
この魔王城へ来るまでに瘴気はどんどん濃くなる。
城の中は瘴気はまったくないが、一歩出れば魔族とて場合によっては瘴気に飲まれるレベルなのだ。
耐性が弱いものは瘴気に飲まれてお終いだ。
まぁ、連絡体制は常に整っておるしな。
後は勇者が来たら丁重に出迎えるだけだ。
今は勇者よりも今は魔獣対策のが重要になるな。
剣を抜いたおかげでいつも以上に魔獣の出現率が上がれば魔族領にも影響はある。
パールには領土ギリギリの場所で広範囲に定期的に浄化の歌を歌ってもらっておる。
もちろん人の耳に聞こえない音域で歌っているから人族は気付かぬだろう。
遠いから効果は薄いだろうがそれでも何もしないよりかはマシと言える。
今日もパールは人族との領域の境の森の瘴気が一気に上がったので浄化に向かっておる。
今迄国内で修行をしていた勇者が国を出てこちらの近くまで訓練に来ると言う情報がラズリーナから来た。
それの先発隊として人族の兵士や冒険者達が森にやって来るから最近森では争いが多く、瘴気もたまりやすくなってしまったのだ。
そう、瘴気は負の感情の場所に溜まりやすいからな。
そんな訳で人族を追い払った後、パールに浄化をお願いしておる。
イルシオーネからここに来るまでにかなりの日数があるから次の偵察隊が来るまでに森は元通りになる。
パールと人族が接触することはないだろう。
だが、また人族と争って森に瘴気が溜まっての繰り返しは困る。
森ではなく違う場所に誘導してそこで争わせた方がいいかもしれぬ。
森で歌っているパールの歌声を音だけを拾う魔道具で聞きながらこれからの事を考えていると任務を終わらせたルビー達も近くによってきて歌声に耳を傾ける。
こういう時でなければ心の底から楽しめるのになと思っていると歌声がやんだ。
どうやら浄化が終わったようだ戻ってきたら皆でお茶でもしようと思っていると我と四天王達専用の通信魔道具から声が聞こえた。
<報告です!!勇者パーティーが迷いの森に現れました>
このラストの部分で短編と同じ時系列に到達です。