9. 女って強い!
「ミンハー!!」
熊のようなデカいモンスターは、高く上げた太い腕をミンハへと勢いよく振り下ろす。
やばい。ミンハを助けないと!
モンスターへ魔法攻撃しようと前に手を翳すと、攻撃を受けた筈のミンハがいきなり上へジャンプした。小さい体で大きな杖を持ったままモンスターの頭より高く舞い上がる。杖を両手で持って振り上げたかと思うと杖に炎を纏わせてモンスターの頭を思いっきり叩きだした。
------ うわ、オズじゃん。
ミンハは炎を纏ったままの杖でモンスターを2、3発ぶっ叩くと地面にふわっと着地した。
「フリーズラッシュ!」
レーリアはミンハが地面に着地すると同時に凄い速さで剣を動かし、モンスターを凍らせながらダメージを与えていく。
ガガォー!
雄叫びをあげたモンスターが地面に膝をつけて怯むと、皆の後ろにいたフローラが矢を射るような体勢を取り始め、手元には光の粒が急速に集まり出す。
「ライトアロウ」
光がフローラの手から勢いよく放たれ、大きな光の矢に姿を変えてモンスターへと突き刺さった。
------ 攻撃ぃ? フローラって治癒師の筈だよな? 攻撃までするなんて、プリーストみたいなもんか?!
スゲェ---- 光の攻撃ってあまり見た事なかったけどああやって矢にもなるんだなあ。
「もうこれで終わりだにゃん!」
サバンナが素早い動きでモンスターの肩へと飛び乗る。双剣を手にしてニィッと口元を作りモンスターの首へ剣を振り下ろした。
「ダブルトルネードにゃ!」
ゴォォっと風が巻き上がり音を立てる。双剣が竜巻の様に動き出しドンっとモンスターの首が地面へと落ちた。
------ やばっ。何あれ? あれじゃ一溜りもない。
ってか皆強くねえか? 俺の出番全然なかったじゃん。
「倒したにゃん!」
「安心しました。良かったですわ」
「サバンナの攻撃凄かったわね」
「ミンハ、戦い足りない」
倒れたモンスターの横にいるサバンナへ皆集まっている。
キャッキャッと会話する四人は誰が見ても顔面レベルが高い筈、なのに---- モンスターの首を囲んで楽しそうに話す姿はギャップがあり過ぎてちょっと怖い----
ハア。もしかしたら俺の出番なんて無いんじゃ---- 楽はしたいけど、それはそれで嫌だな。
女だけのパーティーなのに、もしかしたら今までで1番強いパーティーかも---- もう10回の召喚で面倒くさいと思っているけど、戦わないっていうのも複雑なもんだな、あー俺自身が1番面倒くせえ。
ガィガギィィー!!!
ああ? 煩いなあ少しは感傷に浸らせろよ。
「ダークチェイン」
俺自身から闇の鎖を出して何となく見えるデカいモンスターを拘束する。
ああ、どうしたもんかな。あれだけ強いならフローラ以外は全員前衛として動けるし---- ミンハってオズに教えて貰ったのか? 幼女が杖で敵を叩くってやばいな。面白すぎる。
サバンナは双剣だから近接距離が良いだろうし、サバンナと俺を先頭にして戦うか? いや違うなサバンナとレーリアを先頭にして、ミンハと俺を中央に置くのが良いかもな。俺が中央なんて---- 今までなかったわ。ちょっと試してみたい。
ガッガィガギィー!!
折角考えてるのに邪魔だな、少しは静かにしてろよ。
俺は拳を強化しながらモンスターへ拳を入れて魔法を放つ。
「ライトニングボルト」
ビリビリとした感覚を感じながら電撃を放つとモンスターの声が聞こえなくなった。
あ、静かになった。気絶したのかな?
とりあえず、フローラを後衛に置いて前衛と中央をローテーションしていくのが良いかもな。後でレーリア以外のスキルと属性を確認するか。
何だ、ちょっと面白くなってきた。早く伝説の大蛇に会って戦いてぇ!!
「夕間---- 様?」
「ん? 何だ?」
声をかけられた方へ顔を向ければ皆の顔が何か変だ。目を見開いて皆同じ所に視線を送っている。
俺、なんかしたっけ?
「夕間様---- それ----」
ん? 何だ? フローラが指差す方へ視線を辿ると大きなイノシシみたいなモンスターが倒れていた。
あ、そういえば俺倒してたな。
「それ? モンスターがどうかしたのか?」
「そのモンスター、この辺りでは1番大きなモンスターの筈ですわ---- 1人で倒されたのですか?」
「あ、そうなんだ。強くなかったな、直ぐ気絶したけど。拘束してるから大丈夫だろ、あの黒い鎖みたいのは俺の魔法だ」
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「えっえぇ! 勇者様1人ぃ?! 凄いですぅ! どうやって倒したにゃん?!」
「え? 普通に拘束してHP削ってから電流流しただけだけど----」
「夕間殿は流石ですね。簡単に倒すなんて」
「ミンハ、くやしい」
「夕間様---- と、とりあえずきちんと倒して素材と肉を回収致しましょうか。サバンナお願いしてもいいかしら?」
「了解したにゃん!」
「私も手伝うわ」
「じゃあ俺も----」
「「勇者様、夕間様、夕間殿は座ってて下さい!!」」
「は、はあ----」
な、何だ? 皆して声を揃えて座ってろだなんて----
「ユーマ、馬車いこ」
ミンハと俺以外の3人が何やら真剣な顔で話してる中、ミンハに手を引っ張られて幌馬車へと向かう。
幌馬車には乗らず荷台に背をあてて、太陽の光でキラキラと輝く湖をミンハと眺めた。
ハア。何か疲れたな。
今日は街に泊まるんだよな、早く街につかないかな----
「ユーマ、強い?」
ん? ミンハは何が聞きたいんだ?
「俺か? どうしたんだ?」
「ユーマ、1人で簡単に倒した」
「あ、ああ。弱かったからな」
「あのモンスター強い、ミンハもユーマみたいに強くなりたい」
------ ミンハは強くなりたいのか。俺的には十分だと思うけど---- 何か面倒くさい流れだな。
早く終わらせよう---- こういう時アニメの主人公だと慰めていたよな? 俺もやってみるか。
「オズに教えて貰ったんだろ? 戦い方なんて一緒だったしな。ミンハは十分強いだろ」
「---- フン。じーちゃと同じこという」
そうきたか、ますます面倒だな。
「俺から見て強いんだし、オズも言うなら間違いないだろ」
ハア、仕方ねえー。繋いでいた手を離し、ミンハの頭を撫でる。
紫色のくせ毛の髪は柔らかく、犬や猫を撫でた感触に似ていた。少し乱暴に頭を撫でると、ミンハは顔を真っ赤にして俺から顔を逸らして頬を膨らませている。
あ、照れてんのか、これは俺でも分かるわ。今まで顔を逸らしてたのはそういう事かと納得しながら笑っているとミンハはまたもや顔を逸らしつつ、俺の服を掴んで近寄ってきた。
あーもしやこれが俗にいうツンデレってやつか?
扱い方は分からないけど、幼女だと可愛く感じるな。ま、オズの孫だし可愛がってやるか------ オズには優しくして貰ったしな。
「ミンハ。俺が色々と教えてやるよ。強くなりたいんだろ?」
「う、うん。ミンハ強くなる」
顔を逸らしていたミンハが目を輝かせて俺を見てきた。ピンクのまん丸の頬に、パッチリの目は近くで見ると余計に可愛い。
------ やばっ。以外と破壊力あるな---- 幼女趣味はないけど。
「じゃあ、移動中にまずはステータスを見せてくれるか? スキルとか確認したいし何を伸ばせばいいか一緒に考えよう」
「うん」
はあ? ミンハにギュッとされ俺は身動きが出来ない。俺の腰辺りにあるミンハの顔は上から見えないし、ギュウッとしがみつかれて息が止まる。
何でこうなるんだよ、これはミンハの悪ふざけなのか? 幼女こえー。
これは黙ってそのままでいた方が良いのか? いやいや、違うだろ。早く離れてくれ---- このままでいい訳なんか絶対にない。
ふざけてるならやめてくれ!
複雑な気持ちでミンハの肩に手を置こうと腕を上げると、他の3人の声が聞こえてきて体がビクッと動く。
やばい、やばい、やばい。
こんなとこ見られたら何か言われるに決まってる。サバンナの時でさえ煩かったのに---- もうあんな顔で皆から見られたくない。
3人の足音が馬車の反対側から聞こえてくる。どんどんと足音が近づくにつれ額から汗が噴き出てきた。
ミンハを無理矢理引き剥がすか?! いや、そんな事してミンハに触ったりなんかしたら変に誤解されるかも---- でもこのままじゃ何て言われるか---- どっちもいいことねぇ。
ああ、神様。いるなら教えて下さい。
俺はどうすればいいのですか?
神に聞いても何も返ってこない。
当たり前じゃねえか! あー何してんだ俺は!
足音が大きくなり急に音がしなくなった。視線を感じて横を向けば3人の姿が目に映る。
やばい、やばい、やばい、やばい。
どうしたら良いんだ----
あー、頭回らねえ----
3人と目を合わせた俺は、ドキドキと緊張からか胸の音が煩いまま直立してしまった。
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