33.宴会を楽しみましょう
「今日の主役シルバーウルフ様と王女フローラ様、そして勇者一行だあ!」
会場に到着したとたんステージに立たされ、真っ黄色の顔で一生懸命に叫ぶドワーフが俺達を紹介する。
---- 何でウルがメインなんだよ。
この街はギリギリではあるがジュラ王国内。王女であるフローラよりもウルを先に紹介するとは思ってもみなかった。
ドワーフ達からの歓声に気を良くしたウルは元の姿に戻りドヤ顔で座りだす。尻尾を密かに揺らしてまんざらでもなさそうだ。ドヤ顔のウルの横で微笑みながら手を振るフローラを見れば、なんら気にしてないのが分かる。
これがラズロだったらちょっと拗ねてたよなあ。前回の旅の途中、魔法師であるオズを崇拝してる研究者達とのやり取りが頭に浮かぶ。
あの時のラズロは面白かったよなー。オズに話しかけてばっかりで、ラズロに見向きもしない研究者達。
ラズロは歓迎されたりおもてなしを受けるのは当たり前だと思っていたようで、複雑な顔して拗ねたようにオズを見ていた。
ドワーフ達にとって王とか王女の存在はあまり重要ではないのかもな----
「みんな、シルバーウルフ様の協力によりジルベスター大陸へ行く日もグッと近くなるだろう! 目指す夢に向けて大きな一歩だ、今日は飲みたいだけ飲もう! 魔王討伐へ向かうフローラ王女様と勇者一行に感謝を込めて、かんぱーい!」
「かんぱーい!」
「飲めや歌えや踊れ〜!!」
ガイの乾杯により宴会が始まった為、サリーさんがいるテーブルへと皆で向かう。
「さあさあ沢山食べて頂戴! 飲み物は何にする?」
ウルとレーリアとサバンナは真っ先にお酒を頼み、ミンハさんとシロはジュースをお願いしたようだ。俺もジュースにしようか悩んでいた時、フローラから声をかけられた。
「夕間様。レッドベリーという飲みやすいお酒もあるようです。一緒に飲みませんか?」
------ 飲みやすいお酒ねえ。酒自体あんま好きじゃないんだよなあ。
そういえばオズやジジイは酒好きだったな。2人の楽しそうに酔っ払った姿を思い出す。ジジイは練習終わったら焼酎片手によく説教してきたし、オズなんて戦いが終わるたびに酒が飲みたいとラズロにお願いしてた程。
「嫌なら大丈夫ですわ。夕間様が飲まれないのでしたら私も飲みません」
明らかにショボンとするフローラを見て息を吐く。仕方ない、折角のご馳走だし一杯だけ付き合うとするか。
テーブルの上にはステーキやら魚やら果物が並び、お皿から今にもこぼれ落ちそうな程盛られている。その近くに赤い液体の入ったビンが置かれていた。
「フローラが飲むなら付き合うよ----」
こうしてドワーフ達との宴会は幕を開け瞬く間に時は流れていった。
***** 時は流れ2時間後。
おいおいおい、踊りや歌は何処に行った?
もはやここは乱闘場。真っ赤な顔をしたドワーフ達は暴れ回り喧嘩をしたり、宴会場の真ん中では相撲をして誰が強いか賭け事までしている始末。近くにいるサリーさんも若い衆を正座させて怒鳴り散らしている。
最初の頃は歌ったり踊ったりして楽しそうな光景だったのに----- ウルは酒を飲んで上機嫌に相撲を見ているし、サバンナやレーリアもウルの横で楽しそう笑っているようだ。
ミンハさんはシロを連れてドワーフ達と腕相撲、フローラはサリーさんの横で時たまうんうんと頷いている。
はあ---- 早く帰りてえ。コップやら皿が飛び交うのを眺めていたらレーリアとサバンナが酒を片手に移動してきた。
「勇者様ぁ〜楽しんでますかあにゃん〜?」
「夕間殿はお疲れの様子、私達で癒してあげましょ?」
俺を挟むように座る2人。酔っ払っているのか頬を赤く染めて体を近づけてくる。
いやいや、近すぎる!
「夕間殿はお酒飲んでますか?」
「さっきからコップの中身が減ってないにゃん〜」
「サバンナ飲ませてあげたら?」
「私がですかにゃん〜? 恥ずかしいにゃん」
「サバンナは可愛いわね」
レーリアに撫でられ猫のように喉をゴロゴロとさせるサバンナ。レーリアは酔っ払ったらキス魔らしく、俺の前に体を乗り出してサバンナの頬にキスし始めた。
俺を挟んでやるなよ---- 勘弁してくれ。
「レーリアあ、やめてくださいにゃん〜。勇者様が見てるにゃん」
「あら、じゃあ夕間殿にも----」
レーリアの潤んだ唇が近づいてきたと思った瞬間、ミンハさんの頭が目に映った。
「抜けがけは駄目」
「ミィ〜!」
「ミンハったら。ふふ可愛すぎるわ」
レーリアはミンハさんの頬を指でツンツンした後、頬にキスをし始める。ミンハさんはキスされると思ってなかったのか、レーリアから離れようともがいているがガッチリ肩をホールドされているようだ。
「やだ!」
「あらあら、やだだなんて」
レーリアが笑いながら更に頬へキスしている。サバンナも楽しくなってきたようで、尻尾を揺らしながらミンハさんの頭を撫で回した。
「ミンハは可愛いにゃん〜」
「可愛いわよねえー」
「酒臭い」
3人のやり取りを見てたら何だか笑えてきた。ミンハさんも諦めたように頬をぷくっと膨らましながらも2人にいいようにされている。
「ミンハったら2人に可愛がってもらって----」
「フローラ様あ、何処にいたんれすかにゃん?」
「早くこちらへ。ミンハの頬は滑らかでスベスベですよ」
「本当、ミンハったらこんなにスベスベさせて」
「酔っ払い。嫌い」
「酔っ払いなんて酷いわね」
「悪い子にはお仕置きにゃん〜」
ミンハさんを囲む3人は愉快そうに笑った後、ミンハさんの脇や首、足といった素肌が見える所をこちょこちょとし始めた。
「やっ、やめて」
「酔っ払いには気こないにゃん〜」
「私達酔っ払いですからね」
「ふふふ」
更にこちょこちょされてミンハさんは顔を真っ赤にして涙目。流石に可愛いそうになった俺は流石に見かねて皆へ声をかけた。
「おい、もうやめろ」
「にゃうん? 勇者様もして欲しいにゃん?」
何でそーなる? そんな訳ないだろ。
「ふふふ。夕間様は寂しかったのでは?」
「そうね、夕間殿を楽しませないと」
今度は俺へ愉快そうに微笑む3人。酔っ払った3人は俺に近づき囲むように立っている。
何だ?! 何が起きてる?!
「では夕間様。まずはお酒をどうぞ?」
「ふふふ、それから体をほぐしましょうね?」
「誰が1番か決めて貰うにゃん!」
「さあさあ、グイッとお飲み下さい」
フローラに押し付けられたグラスが傾いていく。中身は強い酒のようで苦い上に喉が焼けるようだ。
やめろっ!
喉にある酒が邪魔をして叫ぶ事が出来ない。グラスの中身を飲み干すと同時に、俺の正常な意識も消え目の前が真っ暗と真っ白を行きした後何が何だか分からなくなった。
「はっ! もうやめろ!」
意識が戻り最初に目に入ってきたのはレーリアの胸だった。服の空いた所から見える谷間に驚き上体を起こす。
いってえ--- 急に体を起こしたせいか頭の中がガンガンとうるさい。
痛む頭を抑えつつ周りを見れば宴会はもう終わっているようで、酔い潰れたドワーフ達が各々違うスタイルで寝息を立てている。
俺の周りにもレーリアを含め皆毛布に包まり眠っているようだ。ミンハさんだけはウルに体を寄せて気持ちよさそうに寝ている。
全然記憶がねえ---- あれからどうなったんだ?
最後にある記憶は3人の愉快に笑う顔。酔っ払う姿は初めて見たがあんな風になるとは----
皆が楽しそうに笑う姿を思い出す。
旅をしていてこういった時間はなかったよな。楽しそうにしている顔を見てない訳じゃないが、常にモンスターやら魔物に警戒していたし----
今は魔物とかに警戒する必要はないし、安心して楽しめたのかもしれない。そうだとしたら今まで避けてたけど、皆の為にこういうのに参加していくべきなのかも。
それにしても---- レーリアやサバンナはもちろん、フローラも意外に酒が好きなんだな。ミンハさんのあの真っ赤な顔も今思えば笑える。
楽しいってこういことか。思い出になるのって辛い時か楽しい時なのかも。今日の皆の顔、多分忘れないと思う。
何だか温かい気持ちになり、今までの事を色々と思い出す。まだ旅の途中、それなのに色々とあったな。
いつもの召喚と違いすぎて戸惑うけど、今回が1番生きてるって感じがする。暗い部屋でゲームしているのでは味わえない体験ばかり、新たな展開についワクワクしてしまう。
---- 早く帰りたいとは今だったら思わないかも。
幻のエンディングは気になるけど、戻った時でいいやと思っている自分に気づき笑えてくる。案外単純な思考してるんだな俺って。
ハハッと自分自身に笑ってしまう。誰とも関わりたくないと言ってた自分を懐かしく思い同時に恥ずかしくなった。
「あら起きた? あんな強いお酒飲んだら頭痛いでしょう?」
俺が起きたのに気づいたサリーさんが酔い覚ましのドリンクを手渡してくれる。臭い匂いを放つ黄色の液体を見て嫌な気分になったがフローラの言葉を思い出し一気に飲み干した。
まずっ。でもサリーさんのドリンクなら治るかも。
苦いやら甘いやら分からない後味に耐えているうちに何だか胃がスッとしてきて頭痛が無くなってくる。
やっぱり凄い効き目だ。
「サリーさん、有難う。あと毛布とか余ってないかな?」
俺は音を立てないよう静かに移動し、皆と離れた位置に毛布をしいて横になり直ぐに眠りについた。
読んで頂き有難う御座います!
他の方を参考にさせて貰い書き溜めタイムを頂き、ある程度溜まったら一気投稿しようと思います。
投稿日時は未定です。
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次の魔王四天王の話が終わったら更新しますね、宜しくお願いします!




