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本当に寝入ってしまった彼に、私は笑いが込み上げてきた。


ああ言われたけど、ちょっとは期待とか、もしそうなったら、とか・・・という気持ちはあったのよ。勝負下着じゃないけど、見られて恥ずかしくないものにはしたし。


それが本当に眠ってしまうんだもの。


でも、裏を返せばそれだけ今まで眠れなかったのだろう。無防備な寝顔に愛しさが込み上げてくる。


背中に回された彼の大きな手の温かさを感じながら、私も眠りに落ちたのだった。


私が目を覚ました時には、彼は先に目を覚ましていた。目が合うと彼は微笑んでくれた。


「おはよう、響子さん」

「おはよう、淳一さん」


挨拶をして微笑み合う。彼が身体を起こした。そして体を起こそうとした私を引っ張って起こしてくれた。


「名前にしたのね」

「昨日響子さんが呼んでくれたから、同じにしようかと」


・・・もう、朝から言うことがかわいいんだから。ニヤつきそうになる頬を何とか引き締めて彼の顔をみた。そうしたら彼が頬を染めて言った。


「その、キスしていいですか」


私は返事の代わりに、彼の唇に唇を重ねた。離れたら彼はまた、耳まで赤くしていた。


「な、何をするんですか、響子さん」

「朝から可愛いこというから、キスをしたくなったの」


彼は「あ~」とか「う~」とか呻きだした。私はベッドから降りると、昨日の着替えを持って彼に行った。


「私、着替えをしたら帰るわね」

「あっ・・・」


ベッドの上の彼は何か言いたそうにしていた。


「着替えをしたらうちに来て。一緒に朝食を食べましょう」


部屋に戻り、彼が来ても大丈夫なように準備をする。今朝はパンにした。ベーコンエッグにレタスとミニトマトを添える。他にスープと・・・。ヨーグルトって女性的過ぎるかしら。

あと、コーヒー。いつでも入れられるようにカップにセットして・・・。


彼が来て朝食を取った後、これからの付き合いかたを話した。平日は朝食は自分でとるという彼に、一人分も二人分も手間は変わらないといったら、一緒に食べることになった。昼食は基本別で。まだ、彼の仕事がどうなるかがわからないから、会社では別の方がいいだろうということだ。夜も別にとることが決まった。これもどうなるか読めないからだ。

休日は予定がなければ一緒に食事をしようということになった。


それからお泊り。これは週末だけ。金、土曜のみ。今までもこの二日に睡眠薬を使って睡眠を確保していたから、大丈夫だろうとのこと。


それからデートはもう少し落ち着いてからにしようということになった。彼は今日一緒に出掛けようと言ったけど、私は彼には休んで欲しかった。明日から大変になるのだから、休める時に休むべきだと言ったら、不満そうな顔をされた。

だけど私が「出かけるのもいいけど、お家デートもいいよね」と言ったら、頬を染めて頷いていた。・・・何を想像したのか聞きたいような聞きたくないような?


なので今日も、昨日買いそびれた日用品や食材を買いに行った。

そんな感じで一日を過ごし、夕食を一緒に作って食べて、片付けが済んだら彼は帰って行った。


翌朝、月曜日。昨日のうちに炊飯器をセットしていたから、朝起きたらご飯は炊き上がっていた。お味噌汁に糠漬け、のりと納豆を用意していたら彼が来た。

一緒に朝食を食べて、片づける。それから、出勤のために支度をして玄関を出た。


彼もちょうど出てきたところだ。私はその姿を見て、つい金曜のことを思い出して睨みつけてしまった。


彼は、髪をオールバックにしてきっちりと固め、黒縁の眼鏡を掛けて眉間に少ししわを寄せて私を見ていた。表情をなくしたような顔で彼は言った。


「では、行きましょうか」

「ええ、そうね」


対する私も、薄いメタリックピンクのフレームの眼鏡をかけて、表情があまりない顔をしていると思う。


きっと二人で並んでいても、たまたま一緒になったと思われるだろう。


エレベータに乗り込んで二人だけだったから、彼に私は言った。


「そう言えば聞き忘れたけど私達の交際って隠した方がいいの」

「巻き込みたくないので、しばらくは黙っていた方がいいでしょう」


そう言って私を見つめてきた彼が屈んで、素早く唇を重ねて離れていった。

突然のことに心臓が早鐘を打ったようになった。


「なっ、なにを」

「駄目ですよ。そんなかわいい顔で見上げてきては」


そう言ってニヤリと笑う彼は、どうやら仕事モードになると強気男子になるようだった。


・・・なんか、いろいろ早まったような気がするのは気のせいだと思いたい。



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