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第14話その魂、男につき

 突然俺の目の前に現れた向日葵に似た少女。ただの偶然だとは分かっていても、やはり意識をしてしまう。


(勘違いには思えないくらい似ているよなあれ……)


 謎の少女を城の者に任せ、一旦気持ちを落ち着かせる為に部屋へと戻った。だが、戻った後もやはりあの少女の事が気になってしまい落ち着けずにいた。


(ただの偶然だと思いたい。今のこの状態で、余計な事をしてしまうと、変な疑いをかけられるよな絶対)


 何せ今の俺は、あくまで水の姫巫女ミスティアであって、春風咲田ではない。より慎重に行動をしなければ。


「巫女様、入りますよ」


 とりあえず少女が目を覚ますまではこの件は置いておくことにした直後、セリーナが部屋へと入ってきた。


「セリーナさん、先程は少々取り乱してしまい申し訳ございません」


 さっきは突然の出来事に、周りの言葉が耳に入らないくらい動揺してしまい、セリーナには迷惑をかけてしまったので俺は一つ詫びを入れた。


「いえ。巫女様が無事でしたならそれでいいのですけど、どうしたのですか突然取り乱したりなんかして」


「えっと、それはですね……」


 ここでどうやって誤魔化そうか悩む。だけど何も出てこず、俺は黙り込んでしまった。


「やはり私に隠し事をしていますね。昨日のアライア姫様との件といい、三日前の巫女様とまるで様子が変わっています。一体何を隠しているのですか?」


 黙り続けていると、セリーナがどんどん核心をついていく事を話す。まだ彼女とは出会って三日経つか経たないかの関係なのに、まさかここまで見抜かれてしまうとは、これじゃあ俺の逃げ道はどこにもない。どうすれば……。


「あなたの使いの一人くらいなら話してもいいじゃないのかしら」


 どうするべきか悩んでいると、部屋の入口の方から声が聞こえる。


「あ、アライア姫様、どうしてここに?」


 その声に一番最初に反応したのはセリーナだった。


「ちょっとこちらの方に用事があって、来ていたの。それで帰り道にここを通りかかったら、あなた達の会話が聞こえたの」


「もう盗み聞きしないでくださいよ。今重大な話をしているのですから」


「だから助け舟を出してあげたの。彼女……いえ彼に」


「ちょっ、ちょっといきなり何を言い出すんですか!」


「彼ってどういう意味ですか? アライア姫様」


「あなたは水の姫巫女の原理については知っているでしょ?」


「はい」


「実は今回の姫巫女は、その原理からすると異例の事が起きたの」


 アライア姫はそこから俺の事について説明を始めた。まさかまだ三日目なのに、セリーナに俺の事がばれてしまうなんて予想していなかった。確かに色々と不自然な所はあったけど、もう少し隠しておきたかったのが本音だ。


「えっとつまり、巫女様に乗り移った魂が、女ではなく男だったという事ですか?」


「そういう事。だから完全に女のように見えるけど、その魂は異世界から来た男の子、春風咲田君なの」


「そうなのですか? 巫女様」


「え、あ、うん。そうなんだよ」


 セリーナの問いに、本来の自分の口調で答える。声色はすごく女性なのに、口調は丸々男。まるでオカマにでもなった気分だ。


「うわ、本当に口調が男の人です。でもどうして最初にその事を言わなかったのですか?」


「最初巫女が無事に誕生した時に、すごく喜んでいただろ? わざわざそれに水を刺すような事は言えなかったし、俺自身も現状を理解できていなかったから言い出すことが出来なかったんだよ」


「そうだったのですか……。申し訳ございません、私達のせいで迷惑をおかけして」


「いいんだよ。俺、死んでいるから」


「そうだとしてもですね……」


 セリーナはどこか元気のない返事を返してくる。俺はやれやれと思いながら、彼女に言葉をかけてあげる。


「いいのですよセリーナさん。アライア姫様は必ず魂を元あるべき場所に戻してくれると約束してくれました。ですから、それまでは春風咲田ではなく水の姫巫女ミスティアです」


「巫女様……」


 アライア姫は言ってくれた。必ず魂を元あるべき場所に戻してくれると。そして俺は誓った。それまではミスティアとして生きる事を。だからこいつが気にすることは何もない。


「分かりました。私もこれまで通り巫女様の使いとしてずっといます。まだら先は長くなると思いますが、よろしくお願いします巫女様」


「こちらこそよろしくお願いします。セリーナさん」


 という事でこの件は一件落着。少し時間が経った後、ずっとその様子を見ていたアライア姫が口を開いた。


「さて、無事解決したそうだし、巫女様に一つ伝えることがあるの」


「私に?」


「正確には二人に、かしら。明後日、ウォルティア城の大広間で、新たな水の姫巫女の生誕を祝って、各国の人を集めた記念パーティーを開くことになったの。


「記念パーティーをですか?」


「そうよ。それで二人にはその場でスピーチをしてもらいたいの。頼めるかしら?」


「スピーチくらいなら構いませんけど、他に何かあったりしませんよね」


「それは分からないわ。何せ主役はあなたなんだから」


「何かちょっと不安になってきましたよ私」


(生誕記念パーティーか)


 もしかしたら、昨日会ったあの森の姫巫女にもあえたりするのかな。

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