街並みに落ちて
視線を落として歩く
名前の分からない花を眺め
ふと思い出す
この町に僕はいなかった
遠い街に居た
その時 この町では
変わらずにこの花が咲いていたのだろう
遠い街であの花が今も咲いているだろうから
思い出をたどって視線を上げる
目に飛び込んでくる色は
空
ああ この空を見上げて
こっそり誓ったことがある
もう破ってしまったけれど
悲しくて苦しくて封じ込めていた
思い出して涙が流れそうになる
誰にも涙を見られたくなくて
立ち止まって目を閉じる
一つ深呼吸をして
顔をあげて歩き出す
逃げてきたけれど
今も逃げ出すけど
誓ったことを後悔はしてない
だから新しく願おう
二度と誓うことはしないと
足元に咲く花を踏みつぶさぬように
慎重に歩く
この町に僕は戻ってきて
僕は前よりもっと小さくなった
気付いただけなんだ
僕はちっぽけ過ぎて
この町に埋もれていくだけなんだと
心が欠けて落ちる
花になって咲いてくれればいいのに
そんな奇跡はおきないから
ただ町の片隅にひび割れた心の人間が独りいるだけ
この街並みが変わっていっても
その中で花は咲くだろう
そこに僕の落ちた心の破片が咲いていたら
どれだけ小さな花を咲かすのだろう
2012/03/03