私にも条件がある
編集者の名前はレベッカといった。
その後、二度ほどメールをやり取りし、出版社の契約条件についても慎重に確認したうえで、アイリンはオンラインで打ち合わせをすることになった。
当然ながら、私は最悪の事態に備えた。
「その場で何かを承諾しちゃだめよ。契約書は必ず読んでからサインすること。それから、もし『あなたの作品には大きな可能性があります』なんて言われたら、その『大きな』が具体的にどのくらいなのか確認して」
アイリンはカメラの位置を調整しながら答えた。
「わかってるよ、オスクリタ」
「あと、緊張してるからって謝らないこと」
アイリンは髪を整える手を止めた。
「謝るつもりなんてないけど」
これは新しい展開だった。
私は、彼女には真剣に扱われる価値があるのだと説明するために、長い演説を用意していた。
どうやらアイリンは、私に相談することなく、その結論にたどり着いていたらしい。
数分後、画面にレベッカが現れた。
彼女は親しみやすく、話し方も率直だった。そして、私が大いに安心したことに、いきなり世界的な出版帝国を約束したりはしなかった。
代わりに、原稿について話し始めた。
「昨日、最後まで読ませていただきました。アイリンさん、正直に言うと、自分の人生を描かれているように感じた場面が何度もあったんです」
アイリンは微笑んだ。
「読者の方からも、似たような感想をいただいています」
「それが、ご連絡した理由の一つです。とても個人的な物語なのに、多くの人が自分自身を重ねられる。特に、いつも『自分はまだ十分じゃない』と言い続ける心の声の描き方が印象的でした」
私は即座に抗議した。
「いつも、ですって? 不公平な言い方ね。私だって休憩くらい取るわよ」
アイリンは笑いをこらえるように唇を結んだ。
レベッカは話を続けた。
「それに、ユーモアも素晴らしいと思いました。つらい経験を描きながらも、読者が思わず笑える瞬間があるんです」
「ありがとうございます」とアイリンは答えた。「ときには、自分のことを少し笑ってみるのも必要だと思うんです」
自分のこと?
ちょっと待って。
笑いの材料の大半を提供しているのは私なんですけど。
レベッカは、出版社として正式な出版契約を検討したいと説明した。原稿の修正や販売方法について話し合い、双方が前向きに進めたいと判断すれば、アイリンが確認するための契約書を用意するという。
私は注意深く聞いていた。
一夜にして有名になるという約束はない。怪しい支払いの要求もない。長男を差し出せという条件もない。
今のところ、実に健全で、拍子抜けするほどだった。
ところが、レベッカが興味深いことを言った。
「もう一つ、将来的な可能性として考えていただきたいことがあります。まだ具体的な話ではありませんが、この作品は映像化にも向いていると思うんです」
アイリンは目を瞬かせた。
「映画、ということですか?」
「その可能性もありますし、短いドラマシリーズという形も考えられます。ただ、今は少し気が早いですね。まずは本として、どんな形にできるか考えましょう」
私は即座に、職業上の義務を感じた。
「配役について聞いて」
アイリンは無視した。
「心の声にも個別のクレジットがつくのか確認して」
彼女は代わりにレベッカに礼を言った。
「特殊効果の予算についても聞いて!」
アイリンは水の入ったグラスに手を伸ばした。
私自身の社会的イメージに関わる交渉から、私は組織的に排除されていた。
打ち合わせが終わると、アイリンはしばらく静かに座っていた。
それから笑った。
「いやあ、びっくりした」
「そうね。読者が一人だったところから、テレビドラマの話まで来ちゃった。展開が速すぎる件について、正式に苦情を申し立てたいわ」
「まだ可能性の話だって言ってたでしょ」
「災難っていうのはね、最初はいつだって『可能性』なのよ」
アイリンは微笑み、次にやるべきことをカレンダーに書き込んだ。
私が驚いたのは、彼女が怖がっていないことではなかった。打ち合わせ中、緊張していたのはわかっていた。グラスの持ち方も、質問に答える前に慎重に言葉を選んでいたことも、私はちゃんと気づいていた。
でも、彼女はその緊張に自分の代わりに話をさせなかった。
以前は、その部署を私が担当していた。
どうやら組織改革が行われたらしい。
...
その夜、アイリンはアンドレアに電話して、今日の出来事を話した。
アンドレアはあまりにも大喜びしたので、私は彼女が最初からこうなると予想していたのではないかと疑い始めた。
電話を終えると、アイリンは再び原稿を開いた。レベッカから、もう少し詳しく描いたほうがよいかもしれないと提案された箇所が、いくつかあったのだ。
私は好機を見逃さなかった。
「詳しく描くといえば……」
アイリンは画面を見たまま笑った。
「ああ、いやな予感がする」
「その予感、正解。あなたの本には、人生の大事な時期が丸ごと抜け落ちてるのよ」
「もう十分長い原稿なんだけど」
「大学時代なんて、たった数ページでまとめちゃったじゃない。結婚生活は二十五年もあったのに、ほんの数章に収めたし。母親になってからの話なんて、言い出したらきりがないわ」
「全部は書けないよ」
「そう! だから、もう一冊必要なの」
アイリンはタイピングを止めた。
「もう一冊?」
「反対する前に言っておくけど、私には五十年近い実体験があるんだからね」
「五十年近い意見、でしょ」
「素晴らしい意見よ。無視されることが多かっただけで」
アイリンは笑った。
「それで、何を提案したいの?」
ついに来た。
私の企画を発表する機会だ。
「あなたの本は、私とどう付き合って生きていくかを学んだ物語でしょ。私はね、あなたとどう付き合って生きていくかを学んだ物語を書きたいの」
アイリンは画面から顔を上げ、少し考えた。
「オスクリタの視点から?」
「当然よ。編集上の重大な省略があるし、誤解もたくさんある。それに、私の意図は素晴らしかったのに、結果が少々残念だった出来事もいくつかあるから」
「いくつか?」
「数える必要はないわ」
アイリンはまた笑った。
「それで、どうやってその本を書くつもり?」
小さな技術的問題だった。
できれば聞かれたくなかった。
「ええと……そこで、あなたの出番なの」
「つまり、私が書くの?」
「あなたはキーボードを打つ。私は創作面の指揮を執る」
「なんだか聞き覚えのある話ね」
「安心して。もうあなたの人生を乗っ取ろうなんて思ってないわ。これは文学的な共同事業よ」
アイリンは少し考えた。
「じゃあ、タイトルは?」
私は固まった。
タイトル。
唯一、まだ解決していない問題だった。
「候補はいくつかあるわ」
「例えば?」
「『一人の人間を生き延びさせた、正当に評価されない天才』」
アイリンは吹き出した。
「長すぎる」
「『誰にも聞いてもらえなかった五十年間の素晴らしい助言』」
「大げさすぎる」
「『誰も認めたがらないけれど、実はかなり正しかった影』」
「それは正直じゃなさすぎる」
失礼な。
「じゃあ、あなたなら何てつけるの?」
アイリンは画面の原稿を見た。
「まず書き始めたら? タイトルはあとから浮かぶかもしれないよ」
私は考えた。
腹立たしいほど理にかなっていた。
すると、アイリンは新しい文書を開いた。
「いいよ」と彼女は言った。「あなたの物語は、どこから始まるの?」
今度ばかりは、考える必要がなかった。
「雨から」
アイリンの指がキーボードの上で止まった。
「あなたがベッドの上で丸くなっていた、あの午後よ。あなたはひどく落ち込んでいて、そこに私が現れた。経験も資格も何一つないくせに、あなたを守る方法なら何でも知っていると、完全に信じ込んでいたの」
アイリンは微笑んだ。
「自信だけはあったよね」
「誰かが持たなきゃいけなかったでしょ」
彼女はタイピングを始めた。
私はしばらく、画面に文字が現れていくのを見つめていた。
アイリンから見た出来事ではなく、私から見た出来事。
少なくとも、私が語りたい物語の始まりだった。
やがてアイリンの手が止まった。
「オスクリタ?」
「なに?」
「この物語を書くあいだ、一つだけ覚えておいてほしいことがあるの」
私は、また人間的成長についての講義が始まるのだろうと身構えた。
「自分を悪役にする必要はないよ。でも、無理に主人公になろうとする必要もない」
私はその言葉について考えた。
アイリンは、まだ書きかけのページを見つめた。
「ただ、あなたの物語を話して」
珍しく、私はすぐに皮肉を返せなかった。
困ったことだ。
皮肉は、ほとんど唯一の私の売り物なのに。
それから私は、もう一度最初の段落を見た。
雨の午後。
ベッドの上の少女。
そして、自分は何でも知っていると思い込んでいた、一つの影。
ああ、書くことなら山ほどある。
それこそ、山ほどね。




