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【書籍化】未来で冷遇妃になるはずなのに、なんだか様子がおかしいのですが…  作者: 狭山ひびき
第二部 ラファエル王太子の最愛

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エピローグ

お読みいただきありがとうございます!

これにて完結となります!

 ――困ったお姫様だね。


 誰かがそっと、耳元でささやいた気がした。

 けれども睡魔に捕らわれたローズの瞼は重くて、そして、ゆらゆらとゆりかごのように小さく揺れる振動が心地よくて、誰だろうと思いながらもそのまま深い眠りについてしまう。

 なんだか幸せな夢を見た気がして目を覚ましたローズは、ぼんやりと目をこすりながら隣を見て、小さく息を呑んで固まった。


「おはよう、俺の眠り姫」


 にこやかに微笑む婚約者が、なぜか隣にいたからだ。

 密着するほど近くで当然のようにベッドに横になっていたラファエルに、ローズの頭の中は「?」でいっぱいになる。


「え? あ、お、おはようございます、ラファエル様。……え?」


 ここは自分の部屋であっているだろうかと、ローズはきょろきょろと視線を彷徨わせる。

 天蓋の帳は完全には閉じられておらず、まるでわざとそうされているかのように、一部がベッドの柱に括りつけられている。

 その隙間から部屋の中を見やったローズは、確かに自分の部屋だと思った。


(どうしてラファエル様がここに?)


 思い出そうとしたローズは、昨夜の記憶が途中でプツリと途絶えていることに気が付いた。

 ジゼルの部屋で、ブランディーヌやエメリーヌを交えて楽しく夕食を食べたことは覚えている。

 だが、デザートを食べはじめたあたりから記憶がなかった。

 どうやって部屋に戻って来たかも覚えていない。


(あれ?)


 今までこんな不思議な現象が起こったことは一度もない。ローズの身に何があったのだろうか。ローズは青ざめ、ラファエルを見た。


「あの、どうしてラファエル様がここに? 昨日の記憶が途中からなくて、その……」


 ローズはつながらない記憶に泣きそうになった。


「本当に困ったお姫様だよ」


 ラファエルが手を伸ばして、ふに、とローズの頬を軽くつまむ。


「昨夜、ローズは母上に散々酒を飲まされたみたいで酔いつぶれたんだ」

「えっ」


 言われてみれば、かなりの量を飲んだ気がする。途中まではほどほどにしないといけないと考えていたはずなのに、最後の方はそんな理性もきれいさっぱり消え去っていたような。


(え? じゃあ、わたし、何か失態を……⁉)


 成人を迎え、酒が飲めるようになると、アリソンから酒の席での失敗しないように気を付けるように注意を受けた。これまでその忠告に従って、必要以上に飲まないようにしてきたのに、失敗してしまったのだ。

 ローズがさーっと顔色をなくすと、どういうわけかラファエルの方が慌てだした。


「酔っぱらったローズをここまで運んだのは俺だが、誓ってそれ以上のことはしていない。ローズがシャツをつかんで離してくれなかったから隣で休んだだけだ!」


(それ以上のこと?)


 それ以上というのが何を指すのかは理解が及ばなかったが、ローズが迷惑をかけたことに変わりはない。


「すみません、本当にご迷惑をおかけいたしました!」


 部屋まで運んでもらったばかりか、ローズの隣で眠らせる羽目になってしまったのだ。

 見れば、ラファエルの目の下には隈ができていた。きっと、自分の部屋じゃないから落ち着いて眠れなかったのだ。どうしよう。ラファエルを寝不足にしてしまった。


「ごめんなさい……。わたしの隣だと眠れませんでしたよね?」

「あ、ああ……それはまあ……」

「そうですよね? 寝相が悪かったでしょうか? それとも寝言がうるさかったのでしょうか? 眠っている間のことなのでよくわからなくて……。本当にごめんなさい!」

「いや、寝相も悪くなかったし寝言もほとんどなかったが……なるほど」


 ラファエルは納得したような顔になって、こめかみを押さえた。


「俺が隣にいて、君はまず寝相と寝言の心配をするのか。……ここまで信用されていると、どうしていいのかわからなくなるな」

「もちろんラファエル様のことは信用していますよ! でも、どうしてそんな疲れた顔をしているんですか?」

「なんでもないよ、ローズ。ちょっと……その、君の純真さにあてられただけだ」

「?」


 わけがわからない。

 ローズがきょとんとしていると、ラファエルは気を取りなおしたように咳ばらいをして、ベッドに上体を起こした。


「それで、昨日の夕食会はどうだったんだ? 覚えている範囲で教えてくれないか」


 ローズはぱっと顔を輝かせて、ラファエルに習って上体を起こす。


「すごく楽しかったです! 王妃様もブランディーヌ様もエメリーヌ様もみんなお優しくて!」

「へえ、そうなの?」

「はい! ブランディーヌ様は、わたしがまだこの国に不慣れだろうからって、いろいろ教えてくださるそうなんですよ!」

「なんだって⁉」

「ほかにも、お茶会や夕食会にも、今後たくさんお誘いいただけるって言ってくれて……! あ、そうそう、王宮にお部屋も用意していただけるそうです!」

「……最悪だ」


 ラファエルが両手で顔を覆った。


「え? どうしてですか?」


 どれもいい話なのに、なぜラファエルは嫌な顔をするのだろう。


(わたし、どこか間違えた?)


 ローズの知らない、裏の意味があったのだろうか。ジゼルたちと仲良くなれたと思ったのはローズだけで、本当は嫌われていたのだとしたらどうしよう。

 ローズがおろおろしていると、ラファエルが腹の底から疲れたような声を出した。


「はあ。ローズは間違いなく母上たちに気に入られたんだ。王宮に部屋が用意されたら、母上たちに独占されるのは間違いない。……これは何としても阻止しなくては」

「ど、どういうことですか? 気に入っていただけたんですよね?」


 何が悪いのだろうか。ラファエルは何を阻止しようとしているのだろう。


「母上たちはローズとの仲を深めようと、何かにつけて誘いを入れて来るだろうと言うことだよ」

「それは、いいことですよね? わたしも王妃様たちと仲良くなりたいです!」


 ローズが胸の前で拳を握りしめると、ラファエルは片眉を跳ね上げた。

 そして、何を思ったのかニヤリと口端を持ち上げ、ローズに覆いかぶさるようにしてベッドの上に押し倒す。


「ローズ。俺は以前、警告しなかったかな?」

「警告?」


 はて、何のことだろう。

 ラファエルに両耳の隣に手をつかれて囲い込まれるような体勢で、ローズは首を傾げる。

 ラファエルはさらに笑みを濃くした。


「俺はローズを独占したいし、ローズの唯一で一番でいたいんだよ。そう言わなかった?」

「ラファエル様はわたしの一番ですし唯一ですよ? わ、わたしもラファエル様の一番だと、その、すごく嬉しいですけど……」


 ローズが顔を赤く染めると、ラファエルが虚を突かれたような顔をした。


「……そう来るのか」


 しばし沈黙したラファエルが、ローズの隣にごろんと転がって突っ伏した。


「ああ、もう、どうしてくれよう……」


 ラファエルは少し赤い顔をあげて、ローズをぎゅうっと腕の中に抱き込む。


「俺のお姫様は可愛すぎるだろう。……はあ、今日は一日こうしてすごそう。それがいい」

「え? さすがにそれは、まずいんじゃないでしょうか? お仕事もありますし……」


 ローズだってラファエルと一日中一緒にいられるのは嬉しいが、王太子である彼はそれが許されない立場だということは承知している。

 ラファエルは愛おしそうにローズの頭を撫でながら口を尖らせた。


「それなら、朝食の時間までだ。まだ一時間くらいあるだろう? その一時間で、ローズは俺を嫉妬させた報いを受けるといいよ」

「それは、どういう――むぅ⁉」


 最後まで言い切る前に、ローズの唇が塞がれる。

 ラファエルの宣言通り、彼を嫉妬させるといかに大変な目に遭うのかということを、ローズはこのあと一時間かけてしっかりと教えられることになったのだった。




これにて完結です!

面白い!続きが気になる!続きが読みたい!と思ってくださった皆様、

ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ


本作ですがノベルの方が集英社Dノベルf様より1~2巻。

コミックスの方がヤングジャンプコミックス(電子の場合はマーガレットデジタル)より1~4巻。

現在発売中です!

コミカライズの方はニコニコ静画内にて連載しておりますのでよろしければ!

漫画は貴里みち先生が描いてくださっています(*^^*)


どうぞよろしくお願いいたします!



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