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とある天才少女達の発明品 2 〈ルカ編〉


「お、遅すぎる! もしかして気付いてないの? いや、あの人なら絶対に気付く筈だわ! 何やってるのよ、もう!!」

 

 とある昼下がり、自分の人生の目的の一つを達成し終えた私は、本来なら直ぐにでも訪れる筈の訪問者が中々姿を見せない事に苛々していた。

 

 こっちから探し出すのは不可能なんだから、早く姿を表しなさいよ、全く! もう2ヶ月以上も待っているのに!

 

 ……もしかして本当に気付いてないのかしら? だとしたらどうしよう、あの人が来てくれないと、これを完成させるのにかなり時間がっ。

 

「……おーい! 誰か居らぬか? 少しばかり聞きたい事があるのじゃが」

 

 き、きたわ!!  

 

 長く待ち続けた事による不安を掻き消すチャイム音と、その後に響く聞き覚えのある声につられて私は急いで玄関へと向かって走った。

 

「ま、待ってたわ!!」

 

 勢いのままドアを開き、目の前に立つ女の人に声を張り上げた。

 

「な、なんじゃいきなり! びっくりしたぞ!」

 

 そんな私の声に驚いたのか、女は軽く身構えていた。

 

 そしてそんな女の姿を見て、私も同様に驚いていた。

 

 私が待っていた女の人はダーリンがリアと呼んで慕っていた人だ。 話した事はあるが見た事は無い。 

 でも、声を聞く感じだと私より随分と若い子なのだろうと勝手に想像していた。

 

 だからこそ目の前にいる大人びた女性の姿は私には予想外だったのだ。

 

 ほ、本当にこの人がリアなの?

 

「むっ、なんじゃその顔は? 友達か誰かと勘違いでもしておったのか? それはすまん事をしたのぅ。 

 じゃが我にも大事な用事があるのじゃ、すまんが娘よ、お主の姉か母かはわからぬがここにルカ・ルーレットと言う女がおるじゃろ? 呼んできてくれぬか?」

 

「……」

 

「ん? どうしたのじゃ? あぁ、そうか。 我が何者か名乗るのが先じゃよな、我の名前はリアメストじゃ。 

 要件は……お主にはちと難しいと思うから省くが、まぁ悪い事をしに来た訳ではない。 ただ話を聞きに来ただけじゃ」

 

 考えがまとまらず呆然とする私に、リアは子供を扱う様に優しく微笑みながら話す。

 

 こ、この人がダーリンの言っていたリアなのね。 見た目は予想通りではないけど、初めて話した時と同じく優しい印象を受けるわ。

 

 でも電話の時はリアリミアって言ってなかったかしら? もしかしてあの時は昔の自分の名前を忘れてたの? 


 ……だとしたら少し抜けてる所もあるのね。

 

「ど、どうしたのじゃ? そんな不安なのか? すまん、急に訪ねて来たのは悪いと思っておるから、泣かないでくれ」

 

 尚も黙る私にリアは見るからに焦りだした。

 

 子供扱いされているのは少しだけ癪だったけど、何も話していない私も悪いと思い、まずはリアへと自分の名前を告げることにした。

 

「黙っていてごめんなさい。 私がルカよ、会いたかったわリア。 

 それにしても遅かったわね? 貴方ならもう少し早くここに来ると思っていたのだけど??」

 

「い、いやいや娘よ。 我はルカ・ルーレットを呼んで欲しいと言ったのじゃぞ? 

 そりゃあお主の姓はルカなんじゃろうが……んー、とりあえずお母さん呼んできて貰えるかな?」

 

「だから私がルカ・ルーレットよ! それにこの家には私以外は居ないわ」

 

「……え? そ、そうか。 な、なるほどのぅ」

 

 私の言葉を聞いたリアはがっくりと肩を落とし、またかと言った表情で大きな溜め息を吐いた。

 

 えっ? なんでこんなにがっかりしてるの? 私に会いに来たんじゃないの??

 

「す、すまんな。 どうやらまたも人違いだったみたいじゃ」

 

 やる気のない声でそう言うと私に背をリアは項垂れながらゆっくりと歩いて行く。

 その姿とさっきの言葉を聞いてリアが私を見つけるまで間、相当苦労した事を悟った。

 

 ど、どういう経緯かはわからないけど大変だったのね……その状況で、かつ私の歳を考えれば、間違ったって思うのも無理はないか。

 

 でもこのまま帰らせるわけにはいかないわ! 次にいつ会えるかなんてわからないんだから!!


 私はリアへ聞こえるように出来るだけ大きな声を出して言った。


「ひ、人違いじゃないわ! 貴方は私を探していたのよ!!」

 

「……」

 

「信じられないかしら? じゃあ、貴方がここに来た目的を教えてあげるわ。 貴方が私に聞きたかった事、それはこの世界の魔素濃度の事でしょう?」

 

「っ!!」

 

 私の言葉にようやく足を止め、リアは再度こちらへ振り返る。 その表情は驚いていたと言うよりはどこか安心している様にも見えた。

 

「正確には淀魔素濃度かしら? どうして最近それが安定したのかを知りたいのでしょ? 

 勿論教えてあげるわ、貴方と一緒に作り上げた研究成果でもあるからね」

 

「お、お主、知っておるのか?? いや、それよりも我と一緒にじゃと? 一体どう言う事じゃ??」

 

 目の前の少女が何を言っているかわからない、リアの顔には本当にそう書いてある様だった。

 

「詳しく事は家の中で話すわ。 勿論聞かなくても良いけど……どうする??」

 

「………聞くに決まっておるじゃろ」

 

 そう言ってリアは私の家に向かって足を戻してくれた。


 

 それにしてもリアを帰したくなかったのに少し意地悪な聞き方をしてしまったのは、私をただの少女扱いした腹いせかしら? 


 はぁー、今になって自分を冷静に分析してるけど、本当にこう言う所は直さないといけないわ。 

 個人的にもリアとは仲良くしたいってずっと思ってたんだしね。

 

 まぁ、でもこれで全てのパーツが揃ったわ。

 

 ……待っててねダーリン、私は絶対に、もう一度貴方に会いに行くんだから。

 

 


 リアを家の中に招待し、ダーリンの顔を思い出しながら私は決意を固めていた。

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