とある天才少女達の発明品 3
「だから何度も言っておるじゃろう! そのやり方だと身体への負担が大きすぎるのじゃ、もし目覚める事が出来ても歩く事も出来ぬぞ!!」
「な、何よ! そんな言い方しなくても良いでしょ? それにこれはまだ研究途中なの! これからそのデメリットを無くそうとしてたんだから、少し黙っててよ!!」
「お、お主が我に聞いてきたんじゃろうが!」
「聞いてないわよ! リアが勝手に見てきたんですぅ! 覗かないでよ、この変態!」
「へ、変態じゃと! わ、我の事を変態と言ったか! そこまで言うならもう良いわい! 勝手にするが良い! このへそ曲がり娘が!! もう知らんからな!」
「ふんっ! 最初からそのつもりよ!!」
そう言い残し、ルカは我の部屋の扉を勢いよく閉めて出て行った。
……何じゃあいつは、毎回毎回我がちょっと文句を言うと怒りおってからに。
一体何をそんなに焦っておるんじゃか。 あー、なんか我までむしゃくしゃするではないか!
もう良い、次に何か聞いてきても絶対に教えてやらぬからな!
この研究が終わったら直ぐにでも出て行ってやるわい!!
心の中で鬱憤を叫び、我は再び目の前にある完器樹に視線を向けた。
あの日、我がルカの元を訪ねてかれこれ3年程になる。
最初に会った時はこんな子供が何を知っているんじゃとも思ったものじゃ。
ルカの話は意味不明で未来から来たダーリンだのこの世界の滅亡危機だの、それにそいつらが異世界人だの、頭の悪そうな話ばかりで聞く気も起きなかったしのぅ。
それに何より嘘くさかったのは未来の我がそいつらに協力している所じゃ。
我ならこの世界くらいどうとでも救ってやれるし、そもそもこのクソ星が滅びようがそこまで興味ないし、むしろこの手で滅ぼしてやりたいくらいじゃわ!
……じゃが、この目の前の完器樹を見せられた事で我はルカの言っている事が事実だと一様納得する振りをした。
それくらい我にとってこの物質は魅力的じゃった。
生意気な娘の可哀想な妄想も聞き流してやれるくらいにはな。
そして我はこの樹を研究に使う事を頼み、ルカも条件付きでそれを許してくれた。
そのうちの一つが先のアレじゃ。 どうやら彼奴は本気で未来に行きたいらしくその為に我の知恵を貸してほしいとの事だった。
まさかここまで頭のぶっ飛んだ奴だとは思ってなかったが、まぁ本人がそれを望むならと今までその手伝いをして今に至る。
「全く、そんなに未来に行きたいなら我が今すぐにでも行かせてやると言うのに」
「それじゃあ意味ないのよ。 私は私自身の力でダーリンに会いに行くって決めてるの!!
って事ではい、これならどうかしら? さっきよりは良い案だと思わない?」
「うわぁ!! い、いつからそこにいたのじゃ! いや、それよりもさっきの会話をもう忘れたのか? 我はもう勝手にしろと言ったはずじゃが?」
思わず出ていた独り言に返事をされ驚く我にルカは知った事ではないと言わんばかりに話を続ける。
「そんな昔の事なんて忘れたわ。 それよりどうかしら?
リアの言ってた事もこれなら解消されると思うんだけど??」
いや、昔って……はぁー、まぁ良いか、此奴にとってはいつもの事じゃもんな。
ルカの満足そうな顔を見て我は諦め、差し出された資料に目を向けた。
………うむ、確かにこれなら我が言ってた問題点もなくなるかもしれんな。
まさかこの一瞬で我の言った事を理解し、その答えを持ってくるとは。
頭のネジは外れておるが、此奴は本当に天才かも知れぬな。
「どうかしら?」
心配そうに我の顔を覗き込んでルカが言う。
「……まぁこれなら確かにうまく行くかも知れんな」
「ほ、本当に!! ありがとうリア! 貴方のおかげよ!!」
我の言葉にルカは嬉しそうに部屋中を飛び跳ねまわった。
「調子に乗るではない! あくまで理論的には可能ってだけじゃ、それに細い所を言えばまだまだ直すべき事柄も多いぞ!」
「そうね! でも今は良いの! この3年で初めてリアから認められたんだもの! 今は素直にこの状況を喜ぶわ! 今まで手伝ってくれてありがとうね、リア!!」
「よ、よせ。 我は別に何もしておらん。 むしろ完器樹を貸してもらっておるのじゃから、手伝うのは当たり前じゃ、そう言う条件じゃったんじゃからな」
満面の笑みで幸せそうに喜ぶルカの言葉に、我は思わず照れてしまった。
……いつもこのくらい素直なら良い娘なんじゃがな。
「それにしてもそんなに嬉しいのか? お主は未来に行ってダーリンとやらに会いに行きたいと言っておったが、前に聞いた話じゃ其奴からはもう振られたんじゃろ?」
何時迄もニヤニヤと我の顔を覗き見るルカに耐えられず、我は話を変える事にした。
「振られてないわよ! 多分あれは演技ね、直ぐには気付かなかったけどダーリンがあんな事言うわけないもの。
きっと何か事情があったんだわ!」
「もし違ったらどうするんじゃ? 本当に振られていたとしたら?」
「……うーん、そうね。 まぁ、有り得ないけどその時はもう一回私に惚れさすわ。 今は胸も成長した事だしね!」
見た目はまだ子供なのに、その言葉を話すルカはどこか大人びていて不覚にもドキっとさせられた。
ふふっ、これだから人間は面白いのぅ。 話す言葉次第でまるで別人の様な姿に見えてしまうのだからな。
「つまりダーリンとやらと復縁したいのじゃな? お主の事は天才だと思っていたが、それと同時に一人の女だったって事じゃな」
ルカの言う事が全て真実なら、随分と純愛な娘だったんじゃな。 ここまで一人の男を愛するとはなかなかっ。
「そうよ! 復縁して思いっきり引っ叩くの!! あぁもう今から楽しみだわぁ、早くダーリンのほっぺを叩きたくてうずうずしちゃうわ」
これこれ、一様お主はまだ歳は幼いんじゃから、そんな話はしない方が……ん??
「叩く?」
「ええ、そうよ? 初めて人の頬を叩いたあの感覚がどうしても忘れられないのよ!! あんな興奮できることは他に無いわ。 はぁー、早く会いたいわ、ダーリン」
顔をうっとりさせ頬に手を当てながら悦に入るその表情から、我は久しぶりに恐怖を感じる。
……頭のネジが外れてているとは思ったがまさかここまでとは。
あれが本当に今年15になる娘の顔とは思えんな。
「ま、まぁやりたい事は人それぞれじゃしのぅ。 好きにするが良いわ」
これ以上深く話を聞く事が怖くなり、我は一先ず話を終える事のした。
「そうね、ありがとうリア。 さてと、じゃあ私はこれからリアの言う細かい所を精査して行くわ。 またね!」
笑顔のままそう言い残し、ルカは我の部屋のドアに手をかける。
「……ねぇ、リア。 貴方には本当に感謝してるわ。 貴方は私の初めてのと、友達なんだから!
また改めてお礼が言いたいから絶対未来で会いましょう? や、約束だからね」
部屋を出る際、ルカは小さな声でその言葉を言い残していった。
なんじゃ一体? 急にしおらしい声を出しおって? もしかして未だに彼奴の中では本当に我が力を失うとでも思っておるのか?
ふふっ、そんな事万に一つも有り得んと言うのに心配性なやつじゃな。
「それにしても、友達かぁ……わ、悪くない響きじゃな」
まぁ、彼奴の行きたい未来と言うのがいつなのかは知らんが、その時はまた友達とやらになってやるとするかのぅ。
身体をくすぐられる様な妙な感覚を感じながら、我も再び自身の研究へと手を戻す事にした。




