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36-2話 天才と言う名の免罪符

「人間凍結機じゃと?? ……ふむ、なるほど、さっきルカが我と一緒にやっていた研究と言うのはそれか。 

 そうじゃな、結論から言えば可能じゃろう。 原理から説明するならっ」


「あっ、原理は別に良いかな」


 ……どうせ聞いても1ミリも理解出来ないだろうからな。


「そうか? まぁそもそもあの時代の我ならそんなものを作らんでも、小娘1人くらい一瞬でこの時代に連れてこれるがのぅ。 そうしなかったのは、ルカなりの、いや、研究者としてのプライドなのじゃろう。

 そしてそれを成功させたのもまた凄いのぅ、流石は我が認めた天才じゃな!」


 まるで我が子を褒めるかの様にリアが嬉しそうに話す。


 あの時も長い事話してたし、リアにとってもルカの存在って大きいんだろうな。


 ………うん、後、これは今更なんだけどさ、何でもかんでも天才って言っとけば良いみたいになってない?

 いや、確かに説明聞いてもわからないし異世界だからそう言うものって事で納得してきたよ??

 それが浪漫でもあったし!!

 だけどそろそろ厳しいと思うんだよ、そんなに世間は甘くないからね。


「何をぶつぶつ言っておるのじゃ?? まぁ良い……では、我もそろそろ失礼するぞ、慣れたとは言え、先生に怒られるのは嫌なのでな」


 あー、そう言えばリアって日本じゃ園児なんだもんな。 

 ってか怒られてるの? ギャップが凄いんだが。


「わかった。 また連絡するよ、リアにはまだ色々聞きたい事が残ってるしな」


「き、聞きたい事じゃと?? なんじゃ? 好きなタイプとかか?? はっ!! もしや子供が何人欲しいとかって話か? よ、よせよせ! 我はまだそこまで深く考えてはおらぬぞ!! 

 ……も、勿論出来る限りの希望は叶えるつもりじゃがな! って何を言わせるんじゃ!! こ、この話は禁止じゃ! ではな!!」


 俺の言葉にリアは焦った様に早口で話し、その勢いのまま電話を切った。


 ……全然そんな話じゃないんだけど、まぁ今は良いか。 

 

「……ねぇ、ダーリン。 とりあえず話は終わったのかしら?」


「あ、あぁそうだな。 今日はこれで終わりかな。 あれ? そう言えばルカはこれからどうするんだ? 一旦家に帰るのか??」


「……帰らないわよ。 これからはここに泊まる予定なんだから。 あのおっさんにも許可は貰ってるわ」


 いつの間に? まぁこのお城はかなり大きいから、部屋はいっぱい空いてるもんな。 俺の部屋も大き過ぎるくらいだし。


「じゃあ俺達も休むとするか。 ルカも疲れただろ? 今日はゆっくりと休っ」


「ま、まだ疲れてないわ!!」


「そ、そうなのか? じゃあ、どうしようか? 城の中とか案内しようか??」

 

「……ううん、今は良い。 それよりもやりたい事があるの、もう我慢出来なくて」


「やりたい事??」


 なんだ? まだ何かあるのか?


「……私に言わせるつもり?」


 顔を赤らめ、ルカは甘えた声でそう話す。



 ……こ、これって、もしかするともしかするのか??

 いや、この雰囲気は間違いないだろ!! 童貞の俺でも理解出来るわ!!


 興奮でどうにかなりそうな身体を深呼吸で落ち着かせ、俺は出来るだけ格好つけてルカの目を見つめた。


「お、俺の部屋に来るか??」


「……うん」



 ルカは小さく頷いて俺の元に近付き、そのまま俺達はゆっくりと歩き始めた。



 遂にこの時が来たのか……本当にありがとう、異世界。



「ねぇ、ダーリン。 私、出来れば3発くらいやってみたいんだけど良いかな?」


 さ、さんぱつも!!


 どうなんだろ、やった事ないから出来るかどうかわからないぞ? 

 いや、俺はまだ高校生なんだ!! そのくらいノリと勢いでなんとかなるだろ!!


「3発と言わずに5発くらいは大丈夫だよ」


「ほ、本当に?? ありがとう! ダーリン大好き!!」


 ……見栄を張ったかな? クソっ、こう言う時のスマートな返し方も参考書に載ってれば良かったのに!!

 

 そ、それにしてもこんなに喜んでくれるなんてルカって結構エッチなんだな。 

 いや、最高なんだけどね!! すまんな、みんな! 一足先に俺は大人の階段を登らせてもらっ。


「それにしても今日が木曜日で本当に良かったわ!! 後1日でもズレてたら3日も待たなきゃいけなかったんだもん! そんなの耐えられないわ!!」


 そうそう、今日が木曜日で本当に良かっ……え??


 隣で満面の笑みを浮かべるルカのその言葉に、俺の額から汗が滲み出る。


「……あ、あのさ、一様確認したいんだけど、これから俺はどうすれば良いのかな? ほら、その、準備とか必要かなって」


 この不安が勘違いであって欲しいと心の底から祈りながら俺はルカへと尋ねた。


「え? あっ、ダーリンは何もしなくて大丈夫! 近くに居てくれたら後は私が勝手にやるから!! 

 そうね、さっきは頬を叩いたから今度はお腹とか叩いてみたいから、寝そべっていても良いわ!!」


 興奮してそう答えるルカに俺はそれ以上言葉を返す事は出来なかった。



 ……ごめん、みんな、さっきの発言は取り消すし、なんなら土下座して謝るから助けてくれない?? 


 誰も助けてくれないと分かっていても、顔も知らない誰かに助けを求めてしまう。 

 それくらいさっきのビンタは痛かったのだ。


「そろそろダーリンの部屋に着く? 私、男の人の部屋に入った事無いのよね。 うふふ、楽しみだわ」


 こんな状況じゃなきゃ嬉しい言葉も今となっては死刑宣告の様に感じてしまう。




 ねぇ、こんなのってないじゃん、可笑しいじゃん。 

 こんな事ならあんな見栄を張る必要無かったじゃん、なんで俺だけこんな目に。



 ………やっぱり異世界なんて来るもんじゃ無いな。


 刻一刻と迫るその時に恐怖を感じながら、俺はまたポンコツなおっさんにこの異世界に召喚された事を後悔していた。


 



 

 

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