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26話 ふるのは雨か雪で良い


「な、何よ! その顔は! もしかして私と結衣がこの時代に残るって言うのが不満なのかしら?」


 俺の反応に怒ったのか青蜜は僅かに頬を膨らませて話す。

 

「いや、そう言う訳じゃないんだけど……」 

 

「そうですよ、まどかさん。 ここは素直に喜ぶ所じゃないですか! これでも私は結構恥ずかしいんですからね!!」

 

 戸惑う俺を追撃する様に結衣ちゃんが顔を赤らめる。

 

 い、一体何が起こってるんだ? 青蜜も結衣ちゃんも本気で言ってるの?

 本気で俺の為にこのままこの時代に居ても良い言ってるのか?

 

 混乱する頭をフル回転させても二人がどうしてこの結論に至ったのか俺には全くわからなかった。

 

「一体どうしたんだ二人とも? 青蜜も結衣ちゃんもわざわざこの時代に残る事を選ぶ必要なんて無いだろ?」

 

「……どうもしてないわよ。 まどかちゃんとルカちゃんの事を考えたらこれが一番良い方法だと思っただけだわ」

 

「私もあかねちゃんに同じです。 それにこれまでまどかさんには色々と助けてもらいましたからこんな時くらい役に立ちたいんです」

 

「青蜜、結衣ちゃん……」 

 

 しんみりとした雰囲気で話す二人の真剣な表情がこの言葉に嘘がない事を証明しているかの様に思える。

 

 そうか、二人とも俺の為に……やっぱ優しいよ、二人とも。 ……さっきまでクズとか思っててごめん。

 

「も、もう良いでしょ? 話も纏まった事だし、早くルカちゃんの家に向かいましょう。 またあの狼に出会いでもしたら最悪だし!」

 

「そうですね! 私も動物達を殴るのは気が引けますし、この場所は少し肌寒いですからね!」

 

「あぁ、そうだな。 じゃあ早速ルカの家に向かうか!」

 

 

 そう言って俺達三人はルカの家とへと歩き始めっ……いやいやいやいや! 何これ?? 怖いんだけど!! どう考えても可笑しいだろ! 一瞬流されそうになったけど、冷静に考えたら青蜜や結衣ちゃんが俺の為だけに行動するなんて有り得ないし!! 

 だって救世主に憧れてるお馬鹿さんとおっぱい思想の阿呆の子だよ?? 

 二人が俺の為に何かをするなんて全く信じられないんだけど??

 

「ん? まどかちゃんどうしたの? 早く行きましょう??」 

 

 ……ここはちゃんと聞こう。 もしかして二人とも偽物の可能性もある気がしてきたぞ。 

 

「な、なぁ青蜜。 このままこの時代にいたらお前の夢だった世界を救うって事が出来なくなるんだぞ? 本当にそれで良いのか??」

 

「そ、それは……」


 俺の言葉に青蜜は目を見開き、その後ゆっくりと視線を下へ逸らした。

 

 目の前の青蜜が本物なら絶対にこの意味不明な夢を諦めたりはしないだろう。

 この答え次第で偽物かどうかわかっ。

 

「い、良いわけないじゃない!  で、でも今は良いのよ!! あー、もう!!

 自分でも何言ってるかわからなくなってきたわ! 今更変なこと言わないでよ!!」

 

「あっ、すいません……」

 

 ……こ、この圧力だけは間違いなくいつもの青蜜だな、反射的に謝っちまったし。

 

「もう良いでしょ!! 私の事を考えるのは辞めなさい。 今はルカちゃんの事を考えてたらそれで良いのよ! ……私のもう一つの夢はそのうち叶えて貰うつもりだし。 

 そうよ、こうなったらせめてお嫁さんになるって言う夢くらいは叶えてもらわないと割に合わなっ」

 

「ごめん、ちょっと聞こえないんだけど……」

 

「な、な何でもないわよ!! さ、さっさとルカちゃんの家に行くわよ!! はいこれ、返すからね!!」

 

 そう言って青蜜は俺にスマホを返し、背を向けて歩き出した。

 

 ……うん、あの感じは本物だな。 いつもの事ながら何で怒ってるかわからんし。

 

 

「はぁー、まどかさんはもう少し乙女心を理解した方が良いですよ? あれじゃ、あかねちゃんが可哀想ですよ! あっ! それから一様、私も可哀想なのを忘れないで下さいね!」

 

「えっ?」

 

 どう言う意味だ? いや、今はその前に結衣ちゃんにも聞いてみよう。 結衣ちゃんにもリアに頼んでる夢があったからな。

 

「ちょっと待って結衣ちゃん!!」

 

 歩き始めようとする結衣ちゃんの肩を掴んで、俺は青蜜に聞こえない様に小さな声で耳打ちした。

 

「ゆ、結衣ちゃんもさ、本当にこれで良いの?? このまま大人になったら、おっぱっ……いや、胸を大きくする夢を叶えられなくなっちゃうかもしれないんだよ??」

 

 リアを殺そうとするくらい拘ってた事なのに、簡単に諦められるとは思えないんだよな。

 

「まどかさん……セクハラですよ??」

 

「あっ、ごめん!! そんなつもりじゃ!!」

 

「ふふっ、冗談ですよ。 ですがどうやらわかっていらしゃらない様なので、もう一回だけ言いますね? 

 まどかさんはもう少し乙女心を理解した方が良いですよ? ……私と、あかねちゃんを可哀想な女の子にしない為にもお願いしますね?」 

 

 微笑みながらウィンクする結衣ちゃんに俺は思わずドキッとする。

 

 この可愛さ……やっぱ結衣ちゃんも本物なんだろうな。

 

「では、私も先に行きますね」

 

 そう言って結衣ちゃんは青蜜に続いて歩き始めた。

 


「あっ! すいません、まどかさん!

 質問に答えるのを忘れてましたね! 勿論私は夢を諦めてませんよ?」

 

 足を止めた結衣ちゃんが振り返る。


「……だって私の胸はまどかさんが成長させてくれるんでしょ??」

  

「えっ? そ、それって」


 そう言い残し結衣ちゃんは俺の言葉を待たずに青蜜の元へ駆け出した。

 


 な、何がどうなってるんだ? 青蜜も結衣ちゃんも一体何考えてるんだ?


 

 

「……良かったではないか」

 

 呆然と立ち尽くす俺の耳に今度はリアの声が響く。

 

「リア! まだ繋がってたのか! なぁ、青蜜と結衣ちゃんの様子が可笑しいんだ! もしかしてリア、変な魔法使っ………今、良かったって言ったか? どう言う意味だ?」

 

「そのままの意味じゃ。 言っとくが我は何もしてないぞ? 全部彼奴らが自分で決めた事じゃ。 

 青っ子も貧乳っ子もお主と共に生きる事を選んだって訳じゃな。 まぁルカとやらの気持ちも多少は考慮しての結果だとは思うがのぅ」

 

「じ、じゃあ二人とも本気でこのままこの時代に残るって言ってるのか??」

 

「何じゃ、お主まだ信じてないのか? 貧乳っ子が嘆く気持ちもわかるのぅ」

 

「いや、だって……」

 

「む? 何じゃその顔は? どうしてそんな悲しい顔をしておるのじゃ? こう言っては何じゃが、お主はもっと喜ぶべきではないか? 

 ルカ・ルーレットだけではなく、青っ子と貧乳っ子をも手に入れうる可能性が出てきたのじゃぞ? お主の言うハーレム目前ではないか! 

 わ、我もたまになら遊んでやっても良いしな」

 

 ……確かにリアの言う通りだ。 このままこの時代にいるのが俺にとって一番良い事なんだろう。 


 ルカと一緒にいれるし、青蜜や結衣ちゃん、それにリアだって居る。 俺の夢のハーレムを叶える千載一遇のチャンスじゃねぇーか!!

 こんなの迷う事もないんだ。 今回のおっさんの条件は、十中八九ルカに研究を再開させる事だろうから、それさえ気をつけてたらずっと一緒に居られる。 

 

 例え150年後の未来にこの世界が無くなろうが俺はその頃まで生きてない。

 だったらそんな未来なんて関係なっ……。

 


「……なぁ、リア手伝って欲しい事があるんだけど」

 

「ん? なんじゃ??」

 

 そうだ、迷う事なんて一切ないじゃないか、最初から俺達はその為にここに来たんだから。

 

「どうした? い、言っとくが今すぐ会いたいとかそう言った頼みは不可能じゃぞ?」

 

「ははっ、確かに今すぐ会いたいけど頼みは別のだよ」

 

「そ、そうか? あ、会いたいのか? まぁ我も久しぶりに会ってやっても……って今は無理じゃったな。 で、頼みってのはなんなんじゃ?」

 

 リアの言葉に俺は一拍置いて答えた。

 

 

「………ルカと別れようと思う。 協力してくれるか? リア」

 

 

 今までの人生で一番やりたくない事をする為に、俺はスマホ越しの魔女へと頭を下げた。

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