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25話 思い思われ

 

「……もう嫌だ」

 

 何処かで見た木々と自分の身体に起きた変化を感じながら、俺は心の底からそう呟いた。

 

 この木って絶対ルカの木だもんな、当たり前の様に身体も縮んでるしどうやら本当に過去に来たみたいだな……例の如く気持ちも悪いし。

 

「あれ? ここ何処かしら? もしかしてこれが天国なの?」

 

 俺の隣で青蜜が惚けた声を出す。


 まだ頭の整理は出来てないみたいだけど、流石に復活したみたいだな。


「んー! 良く寝ました! あれ? ここって……あの森ですか? って事は私達ルカさんの家から追い出されちゃったんですか?」 

 

 青蜜に続くように結衣ちゃんが身体を大きく伸ばしながら話す。

 

 いや、良く寝た所じゃないよ、結衣ちゃん。 もうこのままずっと寝てるのかと思うくらい長かったからね? 

 まぁこのタイミングで起きてくれた事は助かったけど。 もしあの狼達に襲われたら結衣ちゃんいないと詰むしな。

 

「……なぁまどかよ、まさかかと思うがお主らまた過去に来てるんではないだろうな??」

 

 今度は手に握っていたスマホからリアの声が響く。

 

 あっ、まだ繋がってたのか。 もう切れたかと思ってたわ。

 

「そのまさかだよ、リア。 おっさんのやつ、また勝手に俺達を過去に送ったみたいだな」

 

「そ、そうか……じゃがその割にはお主えらく冷静ではないか?」

 

 腫れ物に触るような気遣う声でリアが言う。

 

 ………冷静ね。 そうか、他人からはそう見えるのか。 どうやら人間って言うのは上手く出来ているらしいな。 

 こんなに絶望してるのに側から見たらわからないんだもんな。

 

「あぁ、もしかしたらもう全部どうでも良くなったからかもな。 無気力な人間って冷静に見えたりするんじゃないか?? ははっ……」

 

「……す、すまんかった。 どうやら冷静では無かったみたいじゃな」

 

 ……うん、本当なら今すぐにでも泣き喚きたいもん。 

 


「いや、ここは天国じゃないわね? この姿……もしかしてまた過去に来たって所かしら? だとしたら一体どうして??」

 

「また? あかねさん、またって言うのは一体どう言う意味ですか? 私達ずっと過去に居たんじゃないんですか?」

 


「ま、まどかよ。 とりあえず我は彼奴らに今の状況を説明しようと思うのじゃ。 手に持ってるスマホを青っ子にでも渡してくれるか? その間主は……こ、心を休めておくのじゃ」

 

 ……そうだな。 ここはリアに任せよう。 もうなんか疲れたし。


 俺はリアの言葉に軽く頷き、言われた通り青蜜へスマホを手渡した。

 

「えっ? 何よこれ? ってまどかちゃん何処いくの? ち、ちょっと!!」

 

「よ、よすのじゃ青っ子! 今はそっとしておいてやれ!! 今までの経緯は我から話すから! 貧乳っ子もそれで良いな?」

 

「わ、私は構いませんけど……一体どうしたんですか? まどかさん今にも死にそうな顔してましたけど?」

 

「そうよ! まどかちゃんのあんな顔初めて見たわよ??」

 

「我だってそうじゃ! じゃからこうして気を遣ってお主らへの説明を申し出ておるんじゃろうがっ! 良いから黙って我の話を聞くのじゃ!!」

 

 少し荒くなった口調でリアは青蜜と結衣ちゃんへの説明を始めた。

 

 ……そんなひどい顔してたのか俺。 まぁ今更顔なんてどうでも良いけどな。

 

 


「そ、そう……そんな事があったのね。 それはまどかちゃんだってあんな顔になるわよね」

 

「ま、まどかさんにとっては世界が滅びる事より辛い事かも知れませんよね。 折角出来た初めての恋人ともう二度と会えなくなるかもなんて……」

 

「そうなのじゃよ。 じゃからお主らも出来ればまどかに優しく接してやるんじゃぞ? あのままでは彼奴壊れてしまうぞ」

 

 き、聞こえてるよ。 なんかその優しさ凄い沁みるわ……胸が張り裂けそうってこう言う時に使うんだろうな。

 

「リアさん、本当に2度とこの時代にくるのは不可能なんですか?」

 

「む、無理じゃな。 今だっておそらく前回から2年程は経過してるしな。 このまま未来に帰ればもう2度とここへは戻ってこれん。 我自身、何回も試した事があるから間違えないぞ」

 

「あっ! じゃあ思ったんだけどさ、この時代のリアに会いに行くのはどうなの?? 全盛期のリアならなんとか出来るんじゃないの??」

 

「それも無理じゃな。 確かに我がその場に居さえすれば何らかの解決策は用意出来るかもしれんが、この時代の我を見つけ出すなんて不可能なんじゃ。 我はいつの時代もその存在を隠して生きてきたからな、今の我とお主らでは一生かかっても見つけられないじゃろうな」

 

「そう……本人が電話越しにいるのに見つけられないって言うんじゃお手上げね」

 

「ほ、他に何か良い案はないのでしょうか? このままじゃまどかさんだけじゃなくルカさんも辛い思いをする事になるし……リアさん! な、何とかならないのでしょうか?」

 

「う、うむ。 まぁ無い事もないのじゃが……」

 

「あるの? リア、とりあえずその話を詳しく教えてもらえるかしら? なんだかんだここまでまどかちゃんに任せっきりだったし私に出来る事なら何でも協力するわ!」

 

「私もです! こんな大事な時に今まで寝てたんですから協力は惜しみません!!」

 

「そ、そうか……ではとりあえず話だけでもしようかのぅ。 あのなっ」

 

 声のトーンを下げて話すリアの声は俺には聞こえなかった。 

 

 

 なんか段々と申し訳ない気持ちになってきたな。 優しくされるのってかなり心が痛むんだな………いつまでも落ち込んでばかりいる訳にはいかないよな。



「青蜜、結衣ちゃん、リア。

 どうやらかなり心配かけちゃったみたいで悪かったな、でももう良いんだ。 おかげで覚悟は決まったよ、話の途中で悪いけどルカの元へ向かおうか」

 

 今にも世界が滅びそうなんだ、俺の為に貴重な時間を使う訳にもいかないもんな。

 

 って反応がないな? 聞こえてないのか??

 

「なぁ? 聞いてるのか? 二人の気持ちはありがたいけど俺だってやらなきゃいけない事くらいの判断は出来るつもっ」

 


「はぁーなるほどね。 確かにそれなら何とかなるわね」

 

「えぇ、もうこの方法しかないみたいですね」

 

 俺の言葉を遮って青蜜と結衣ちゃんは納得した様に声を漏らす。

 

「本当に良いのか? そんな簡単に決めれる事じゃない筈じゃが?」

 

「良いも何ももうそれしかないんでしょ? ならそれで良いわよ。 結衣は?」

 

「私も構いません。 まぁそれも楽しそうではありますからね」  

 

 なんだ? 二人ともなんの話をしてるんだ? 

 

 どこか吹っ切れた様子で青蜜が優しく微笑みながら俺に視線を向けた。

 

「ねぇまどかちゃん、貴方この時代に残りなさい。 二度とここへは帰ってこれないなら未来になんて帰らなきゃ良いのよ。 そうでしょ??」

  

「……はぁ? な、何言ってんだ青蜜?」

 

「そうですよ! このままこの時代で生きていけば良いんですよ! そしたらルカさんとも離れ離れにならずに済みますからね!」

 

「ゆ、結衣ちゃんまで……どうしたんだ急に? 俺一人だけこの時代に残るなんて出来ない事は知ってるだろ??」

 

「えぇ、確かにまどかちゃんだけを残すのは無理でしょうね。 だから……私と結衣も一緒にこの時代に残るわ。 それなら何の問題もないでしょう?」


「なっ!!」


 青蜜の言葉に俺は驚きを隠せなかった。



 その提案は俺にとって全く想像していないものだったから。

 

 

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