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娯楽

 冒険者ギルドの件は決着し、領地に帰り心置きなくモフモフしようと思っていたのに、翌日来るよう王妃様に呼び出しをされました。


「ユーリちゃん、昨日はご苦労様でした」


「それも臣下の勤めですので……」


 王妃様に迂闊な事は言えません。なるべく言質を取られないよう気を付けないと。


「冒険者ギルドの総統があんな人物だったとは、思いもしなかったわ。冒険者ギルドはもっと早くに潰すべきだったわね」


「いきなり切りかかるなんて……本当に怖かったですわ」


 ちよっと、執事さんにメイドさん。嘘つけこいつと言いたげなジト目で見るの止めてもらえませんかね?


「冒険者ギルドは、陛下の御前で年端もいかない子供に切りかかるような無頼漢だと各国は理解するでしょう。我が国が責められる謂れがない事もね」


 暫く冒険者ギルドの後始末に関するお話を聞きました。

 二人は公開処刑に決定したそうです。王の前で真剣を抜いたのです。他国が口を挟める問題では無くなりました。


「長く民と共にあった冒険者ギルドの実態が知れて、民の間に不安感が増しているそうです。何か良策は無いものですかねぇ」


 私が発端だから、何とかしろという訳ですか。だから、五歳児にそんな期待をしないで下さいよ!


「そうですね……民の気を逸らす娯楽などあれば良いのですが」


「ユーリちゃんの作った氷原は好評なのよ。あれを国のあちこちに作れないかしら?」


 確かに、新たな観光名所になってます。あれを国を巡って量産しろと?


「無理ですわ。魔物の群れが居ないと魔物の氷原になりませんから」


「それなら、ただの氷原にすれば出来るのね?」


「出来ますが、あちこちに作れば珍しさが無くなり娯楽にはなりません」


 氷を資源にして商業は活発になるかもしれないけど、今回の目的は娯楽だものね。


「手軽に出来る遊びなど広めますか?此くらいの紙を二十枚、それと書くものを頂けますか?」


 トランプ大の紙を二十枚もらい、一から十までの数を書いたカードをニセット作ります。

 片方のセットをメイドさんに渡し実演の相手を頼みました。


「このように相手に見えないよう手に持ち、一枚を選んでテーブルに裏返しに置きます」


 メイドさんも裏返しに一枚のカードを置きました。


「双方が置いたら、カードを表にします。私が七でメイドさんが四ですね。数が大きい方を勝ちとし、勝った方にカードを寄せます。これをカードが尽きるまで繰り返し、カードの多い方が勝ちです」


 結果は私が十四枚、メイドさんが六枚で私の勝ちでした。


「同じカードが出た場合は、次の勝負の勝者が取ります。これなら手軽に、経費も掛けずに出来るかと」


 異世界で娯楽の開発と言えば、リバーシが鉄板です。しかし、それを提案すれば転生者がいると主人公に教えるようなものです。

 なのでこのようなトランプ擬きを提案しました。


「相手が出したカードを覚えていたら、残りのカードを予測出来るのですね」


「大きい数を温存するか、始めから攻めるか、戦略的な駆け引きも楽しめますよ」


 メイドさんと試しに対戦した王妃様は、お気に召していただけたようです。


「カードを三セットにすれば、三人でも出来ますよ」


「特別な用意も要らない、ルールは単純、でも奥が深い。これを広めさせてもらうわ」


 何度か対戦をした後、王宮を辞して帰りました。


 後日、王都から広まったユーリカードという名の娯楽が爆発的に広まり、あちこちで遊ばれるようになりました。


「広めるのは構わないのだけど、他に良い名前は無かったのかしら……」


「お嬢様、また面会希望の商人が……」


 発案者が私だと公表されている為、他の娯楽を提供してほしいと領地に帰った私に面会希望が殺到しました。


「断って!セティー、ミリー、魔物狩りに行くわよ!」


 騎士を氷漬けにして冷酷な令嬢と恐れられる予定だったのに……どうしてこうなった!

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