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冒険者ギルドの最後

「魔法使いが全員ああだったら、騎士なんかいらないよなぁ」


「無理ですから!集中無しで次々と魔法を撃つなんて、普通は出来ませんから!」


 外野からの声が少々鬱陶しいです。無視して話を進めましょう。


「辺境伯令嬢の私を殺そうとしたのです。あなた方にも責を負っていただきますよ」


「殺すつもりなど無かった!実力を見ると言っただろう!それなのに命を奪うとは、そちらこそどう始末をつけるつもりだ!」


 自分達の非は棚にあげて、こちらを責めますか。まあ、生き残るにはそれしかないでしょうね。


「では、殺意が無かったことを証明して下さい」


「そんなのできるはずがないだろう!ならば殺意があったことを証明してみせろ!」


 殺意が無かったことを証明なんて、出来ないですよね。所謂悪魔の証明という奴です。

 でもね、殺意があったことを証明する事は出来るのですよ。


「先程も言いましたが、何故真剣を使ったのですか?模擬剣を使えば事足りるのに。大体、国王に謁見するというのに真剣を持ち込んでいる事が常識から外れていますよね」


 普通、王への謁見には武器を預けて臨む。それをしなかった納得出来る理由があるのかしら?


「くっ……そ、それは」


「事の発端になった、憎い私を殺すために真剣を持ち込んだ。そうとしか考えられないのですが?」


「だが、実際にお前は死んでいない。それが証拠だ!」


 今まで沈黙していた護衛が反論してきました。反論と言える程度の代物ではありませんけどね。


「殺せればそれで良し、失敗すればその言い訳ですか。冒険者ギルドでは、その腕試しでどれだけの人が死んだのですか?」


 殺しが常態化しているのだろうと反撃してあげたら、言葉に詰まりました。

 てっきりそんな事はないと即座に言い返すと思ったのですが……


「やりたい放題をし、都合の悪い者は殺す。それが冒険者ギルドのようですね。陛下、この者らは如何いたしましょう?」


「とりあえず地下牢送りだな。ユーリ嬢への殺害未遂に関しては、冒険者ギルド本部に騎士団を派遣し資産を押さえて支払いに充てる」


「そんな暴挙、オタル王国が認めない!オタル王国との戦争になるぞ!」


 オタル王国という虎の威を思いだし、狐が元気を取り戻しましたね。


「その心配はいらないわ。今回の謁見、一部始終を記録の魔道具で記録しています。これを複製して各国に送り、冒険者ギルドに非があると証明しますから」


 しれっと答える王妃様。こんな事もあろうかと、と言う奴ですね。


「冒険者ギルドの実態が、物的証拠と共に各国に知れてしまいますね。冒険者ギルド、生き残れるかしら?」


 哀れみの目で総統を見れば、全身が灰色になり燃え尽きたボクサーのようになっていました。


 騎士が二人に枷をはめ、剣を回収しました。魔法を解いて動かせるようにすると、両脇を騎士に固められた冒険者ギルドの二人は地下牢へと連行されます。

 遺体も騎士により運び出され、今回の件はこれで落着です。


「ユーリ嬢、今回も大儀であった。そなたが義娘になる日を楽しみに思う」


「陛下、勿体ないお言葉に御座います。その日まで一層の精進を重ねたく思います」


 そんな日は、未来永劫来ないのですけどね。あんな馬鹿王子、死んでも御免です。

 もしも王子から婚約破棄されなかったら、パナマ王国に亡命してやります。


 パナマ王国に亡命してモフモフを堪能する生活……魅力的すぎます。断罪劇で生き残ったら、パナマで余生を過ごす事にしましょう。


 国王陛下の前を辞し、お父様と一緒に馬車で屋敷に帰ります。


「お父様、これからは身の回りに一層の警戒をお願いいたします」


「警戒を?どういう事だ?」


「冒険者ギルドの一行は、謁見の間に真剣を持ち込みました。謁見の間の衛士は、何をしていたのでしょうね?」


 通常ならば、謁見の間に武器を持って入る事はしません。入ろうとしても、謁見の間の扉を守る衛士がそれを咎めます。


「衛士が素通りさせた?冒険者ギルドが手を打った?」


「或いは、貴族の誰かが根回しをしたか」


 他国の者が手を打つよりも、我が国の貴族が手を回したと考えた方がしっくりきます。


「はぁ……本当に面倒臭い。ユーリ、俺が領地に戻るから……」


「却下です。まだ成人していない五歳児に、何をさせるおつもりですか?」


 子供の仕事はよく遊び、よく学び、よく眠る事です。王宮内の暗闘は管轄外です。


「見えない敵か。物理的に叩き潰せないなんて厄介な……」


「辺境伯家当主の義務です。頑張って下さいな」


 私は領地に帰って、セティーとミリーとで安らかなモフモフ生活を送るのです。


 冒険者ギルドの件はこれで完全に終わりだし、王都から離れれば厄介事はもうないわよね。

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