だめ押し
今回は残酷な表現が含まれます。
苦手な方は後書きまでお進み下さい
「ユーリ嬢、終始このような感じで話にならんのだ。何とかして欲しい」
「かしこまりました、陛下。説明の中でお耳に障る言葉を使うやもしれません。お許しを」
「構わん。何をしようと、そなたを咎めんと約束しよう」
陛下からフリーハンドを約束してもらいました。これで気兼ねなくアホどもの相手を出来ます。
「総統、私にギルド員を倒せるはずがないと仰いましたね?」
「ああ、当然だろ。鍛えられたギルド員が、小娘に負けるなど天地がひっくり返ろうとあり得る事ではない」
言いきりますね。あり得ない事などないのですよ、総統さん。
「私は魔法使いです。魔法には体の大きさや年齢は関係ないと思いますが?」
「ガキがまともに魔法を使える訳がない。そんな事は常識だろうが」
護衛と共に大笑いする総統。でもね、世の中には常識を覆す存在という者も居るのよ。
「バカだな、冒険者ギルドの総統……」
「騎士団や氷原の町を見ていれば、あんな暴言吐かないよなぁ」
貴族達は憐れみの目で冒険者ギルド一行を見ています。
ちなみに、氷原の町とは領境に出来た例の観光名所です。
既に町として認識されていますね。
「そんな事はありませんよ。世の中には魔道具という便利な代物もありますしね」
魔道具は、ファンタジーに必須な魔力で動く道具です。
ゲームや小説では具体的に出ていませんでしたが、生活品から武器防具まで色んな種類がありました。
「魔道具にしても、使いこなせる筈がない。嘘はつき通す事は出来ないんだよ!」
こちらが言い分を認めないので、イラついてきたみたいですね。カルシウムが足りないんじゃないですか?
「井の中の蛙大海を知らず。冒険者ギルドの総統といえど、平民は所詮平民という事ですか」
扇で口許を隠し、バカにしきった顔で嘲笑してみせました。
「そこまで言うか。ならば、お前がギルド員に勝ったと証明してみせろ!」
「構いませんよ。弱いものを虐げる事しか出来ない冒険者ギルドの者等に負けるなどあり得ませんから」
三人とも、額に青筋が浮き口許が痙攣しています。煽り耐性も低いですね。貴族の夜会では、これ位通常の会話の範囲ですよ。
「その言葉、後悔するなっ……カラート!」
護衛の一人が剣を抜いたので、閉じた扇をそちらに向けます。
扇の先から生まれた氷の針が次々と飛び、護衛の右腕・胸・腹・喉・顔面に全弾命中しました。
傷口が即座に凍りつく為出血は皆無ですが、誰がどう見ても絶命しています。
体は赤い絨毯の上に倒れ、手から離れた剣が転がりました。
「このガキっ!……ぐあっ!」
殺意を見せた以上、残りの二人も放置は出来ません。
まず利き手に氷の針を打ち込み、次いで足元に連射して床と足を繋ぎ止めました。
「貴様ぁ、こんな真似をして只で済むと思うなよ!」
「それはこちらのセリフですよ。ここをどこだとお思いですか?」
頭に血が上っていた総統は、周囲を見回します。
その視界に入るのは、スエズ王国の武官や文官。そして、国王陛下と王妃様に王子。
「一国の王族の前で、許しも得ずに剣を抜く。その行為がどんな意味を持つのか知らないとは言わせないわよ」
相手が他国の使者であろうとも、そんな事をすれば殺されても文句を言えません。
増してや国の代表でも使者でもない、民間組織の長とその護衛なのです。
「こ、これはお前の実力を測る為にした事だ。現にカラートは国王ではなくお前に対峙した!」
「力を測るなら、真剣ではなく模擬剣でも十分です。王の御前で剣を抜く理由にはなりません。それとも、五歳の子供ですらわかる道理を知らないとでも仰るので?」
総統は答えに詰まり、沈黙しました。全て正論なので、言い返す余地が無いのです。
「それならお前も魔法を放ったであろう!お前も同罪だ!」
おや、死なば諸ともという事ですか。でもね、私とあなた達では決定的な違いがあるのよ。
「私は陛下の御前で剣を抜いた者を排除しただけ。しかも、事前に陛下より言動の自由を許可して戴きました」
事前の許可により、私の言動に関しては責めを負う事はありません。
流石に王族に害為す行為はアウトですが、今回は暴漢を倒しその仲間を無力化しただけです。
「剣士は剣に手を掛ける・剣を抜く・振りかぶる・振り抜くという段階を踏まねば攻撃出来ません。でも、魔法なら何らかの手段で即時魔法の発動が出来れば目標の固定・魔法の発動だけで攻撃出来ます。私がギルド員を倒せる理由はそれですよ」
総統は化け物でも見るような、怯えた目で私を見ました。先程までは馬鹿にしきっていたのですけどね。
王の御前で、実力を測ると襲いかかった護衛を倒しました。




