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 領内の町での滞在は何事もなく終わり、馬車でのモフモフを堪能する旅は終わりました。

 私の屋敷に帰ると、出迎えた使用人が怪訝そうな顔をしています。


「部屋に戻ります。三人には賄いを与えて私の部屋に寄越しなさい」


 赤子の頃からお世話になっているメイドを連れて部屋に戻ります。


「お嬢様、あの者らは?」


「王都で捕らえたのよ。あの子にその場で危害を加えない約束で大人二人に忠誠を誓わせたわ」


 着替えながら三人を連れてきた経緯を話します。

 このメイドさんはガチガチの人間至上主義者なので、渋い顔をしています。


「この後、三人を連れて森に行ってくるわ。魔法の練習をしたいの。標的も手に入ったしね」


「そういう用途でしたか。心配させないで下さいませ」


 獣人を狩らなければならないマゼラン家の長女が、獣人を保護するなんて問題ありすぎだもんね。


「大人二人は見目も良いし、ストレス解消に側に置こうかとも思うのよ。王子様の婚約者に決定したから、余計な付き合いも増えそうなの」


「私は反対ですが、お嬢様のお心のままにすれば良いかと」


 実際どうするかは、彼女達の判断次第なのよね。

 私としては残って欲しいのだけれど、強制するつもりはない。


 着替えが終わり、軽く軽食をとった所で獣人の三人が連れられて来た。


「森に魔法の練習をしに行きます。ついて来なさい」


 獣人三人を連れ、王都に共に行った騎士を護衛に領境の森に向かいます。

 話し次第では、彼女らをモフれるのはこれで最後になります。なので遠慮会釈無しの全力でモフりました。


 そんな楽しい時間も終わり、森の入り口に到着しました。護衛の騎士を言いくるめてこの場に残さなければなりません。


「お嬢様、この者らを魔法の的になされるのでしょうか?」


「ええ、そのつもりよ。強力な魔法を試すつもりだから、あなた達はここに残りなさい」


 無表情で告げると、騎士二人は顔を見合せ何かを決意したように頷きました。


「お嬢様、中止していただく訳にはいきませんでしょうか?」


「獣人だからと虐げるのは、間違いだと思います。どうか、どうか……」


 驚いた事に、二人は三人の命乞いを始めました。しかし、「はい、わかりました」と同意する訳にはいかないのです。


「我が家は、パナマとの国境を守る家よ。敵対する獣人に情けをかけるという意味を解っての言葉かしら?」


「主家の意向に背く行為とは存じております。しかし、彼女らも我々と何ら変わらないではないですか!」


 今まで獣人と接した事が無かったけれど、数日共に過ごしたら同じ人間だと気付いたのね。

 その事は喜ばしいのだけれど、それで通らないのが世の中なのよ。


「我が辺境伯家に、延いては王家に背くのよ?あなた達の家族や一族にも責は及ぶわよ?」


「私は孤児院の出で、天涯孤独でございます」


「私もです。我が身を賭してお願い致します」


 剣を鞘ごと抜き、地面に置いてひれ伏す二人。覚悟もあるようだし、もしもの時も親類はいない。

 こうも都合が良いと、勝手に笑みが浮かんでしまう。


 孤児院出身の二人は、ちゃんとした教育を受けていなかったのでしょう。

 それが幸いして、獣人への嫌悪も少なかったと思われます。


「ならば条件があります。あなた達はお父様やマゼラン家ではなく、私に忠誠を誓いなさい」


 目的を共にし自発的に協力してくれる騎士がいれば、私の計画はスムーズにいくはずです。

 そんな好機を逃す事はありません。しっかりと取り込んでしまいましょう。


「お嬢様への忠誠を誓えば、三人を見逃していただけるのですね?」


「ええ。嘘はつかないわ」


 誓わなくとも三人に危害を加える気など毛の先程もありませんが、それを言う必要は無いでしょう。


「わかりました。私はお嬢様に忠誠を誓います」


「私もお嬢様に忠誠を誓います」


 二人の騎士は膝をつき、私のドレスの端を持ち口付けをしました。


「あなた達の忠誠、しかと受け止めました。でもあなた達、もう少し頭を使いなさい。二人とも、化粧を落として見せてあげて」


 二人の獣人が布で化粧を落とすと、騎士と狐っ子は目を丸くしました。


「痣が……お嬢様、これは一体?」


「ふふ、化粧で殴られたように偽装したのよ。驚いたかしら?」


 驚いたでしょうね。この世界には特殊メイクなんて影も形も無いのだから。


「何故、このような事を?」


「あの場で彼女らを普通に助けに入って、助ける事が出来たかしら?」


 まず無理でしょうね。三人は騎士団で拷問にかけられ殺されていたでしょう。


「二人には、私の企みの手伝いをしてもらうわ。当然、拒否権は無いわよ」


 まず、二人には演技力を身につけてもらわないとね!

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