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ただの召喚士(本人自称)  作者: 進夢 ロキ
第3章 ダンジョン攻略
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四十三話 攻略開始

  バクーンが竜の如き無数の突きによって倒され、後に辺りにリョウとザルゴのハイタッチの音が響き渡った。


「ナイス連撃!」

「ナイス鬼畜!」


  リョウはザルゴを普通に好評価するのに対し、ザルゴはリョウに、どこか皮肉めいた発言をした。

  声を合わせる二人の表情は異なっていたが、心の中では、同時に達成感を噛み締めていた。

  今回の戦闘において、キーとなったのが、リョウの呪符。『沼』である。

  おそらく史上最強のデバフ効果を持つそれは、疾風迅雷、天下無双の悪魔、バクーンにさえも、リョウが望む以上の結果をもたらしてくれた。

  本来『沼』は、補助型の効果として作り上げたのだが、その効力は補助の枠を超えて、恐ろしい主戦武器となった。


「き、鬼畜って……んぅ、否定できない……」

「言葉にあってるだろ? 鬼畜。流石にあんな風に力弱めるのはひどいと思うっすわ」

「…………だけど、呪符(アレ)が無かったらまずかっただろ?」

「いや、『下剋上』使えばいけたと思うし」

「…………」


  昨晩の努力が間接的に「いらなかった」と言われた事により、リョウはがくりと肩を落とした。

  とはいえ、なんとか勝利を収めたのだから、結果的には『沼』は必要なものだったのだろう。


「でさ、なんかバクーンを倒したあと、それが突然光り出して……こんなものが跡に」


  ザルゴは頭を掻きながら、右手に持った、手のひらサイズの赤黒い球体をリョウに差し出した。

 

「む。やっぱりか」


  リョウはザルゴの手のひらの中から球体をつかみ、まだ新鮮な球体を左手に、右手で懐から古くなった黒い球体を取り出した。

  二つの球体を見比べる。

  そこには色が赤と黒という、明確な相違点の他に、球体の大きさと、持っているリョウにしか分からないが、重さの違いというものがあった。

 

「その黒いやつは?」

「んまぁ、この赤いものと同じだ。さっきの奴を前に倒したことがあって、そん時にそいつらが遺してったやつだ。今は色も大きさも違うけど、この黒いやつも……」

「もともと赤くてデカかったってわけか」


  ザルゴの言葉に、リョウは頷く。

  もう黒くなった球体は、飴玉並みに小さくなってしまっていた。


「一体なんなんだろ、コレ」


  ザルゴは腕を組んで、眉を寄せた。

  リョウは一応見覚えはあるようだが、この球体の正体がはっきりとは分からない。


「分からない。分からないけど……多分危ないものだ」


  答えは曖昧だが、そもそもこの球体についての知識が曖昧なので、その程度の理解で十分だろう。

  三つの球体を、空中に構築した緑色の魔法陣の中に放り込む。

  流石に、まだまだ大きい新鮮な球体を、懐に入れるわけにはいかない。


「さて」


  さぁ、邪魔な横槍を破ったら、次はダンジョンの捜索だ。

  闇に閉ざされた森の中を、途方もなく彷徨って、見つけなければならない。

  ……聞いただけでも溜息が出そうな内容だ。


「さぁて、ダンジョン探そうぜ!」

「そうは言ってもなぁ〜……はぁ〜。手がかりもないのに、どうやって探せば……」


  やる気を高ぶらせるザルゴに対し、リョウはあまりやる気ではなく、溜息と共に肩を落とした。


「ナビゲーターでもいればなぁ……」


  ぽつりと、そんな言葉を漏らした。

  ふと、そこでリョウは「ナビゲーター」という言葉に、記憶の中にある”何か”が引っかかった。

 

 ーーナビゲーター……ナビゲーター……ナビゲーター………………ッ!


「ああああああああああっ!」


  口と目を大きく開けて、自分の不覚な行いに思わず声を上げた。


「おうえっ!? な、なんだぁ!?」


  突然のリョウの吠えに、ザルゴは手を空手の構えのようにする。

  ザルゴが驚いた時は、決まってこの空手のポーズになる。

  名付けて「ザルゴポーズ」といったところか。


  閑話休題。リョウは咄嗟に空中に魔法陣を展開させ、そこに顔を突っ込んでしまいそうな勢いで、「ナビどらぁ!」と叫ぶ。

  リョウの怒号を聞きつけ、「うわっはぁぁ! なに、なにナビ?」と言いながら、慌ててすっ飛んできたナビどらは、出た瞬間にリョウの怒りの眼差しに苦を訴えたくなる。

 

「な、なにナビ? スバル。そんな顔して……」

「……お前、メガネかけてたっけ」


  低いトーンのまま、問うリョウ。

  腕を組んで、その上、左手で右腕を謎のリズムでタップする。

  ナビどらごんは、その姿を見て、唾を飲み込み戦慄した。


  ここで答えを間違ったら……殺される。

  文字通り、殺される。

  答えを決して間違えないように、一言一句、慎重に……。


「老眼鏡、ナビ」

「また十八禁(官能)小説んでたのかよ!」

「うぇ!? 何でわかったナビィッ!?」

「たりめぇーだろっ! お前が老眼鏡かけるときなんて、それ以外思いつかねぇよ! ……あぁそうか! それ読んでたから最近出てこなかったんだなぁ!」

「くっ!」


  お手上げだ。

  ナビどらごんとリョウは、一応付き合いは長い。

  お互いの行動や性格は、嫌でも分かってしまうほどの、長い付き合いだ。


  (クッソ! こうなったら、いっそ開き直ってやるナビ!)


「あ、あぁそうナビ! 今日は『オクオとエルフット』を読んでたナビ! 決して恋に落ちてはいけないオークとエルフが、恋に落ちてしまう話ナビ! 今読んでたところは、オクオとエルフット。二人の激情が抑えきれなくて、ついに路地裏で○○○○しちゃうとこナビ! もうエルフットの喘ぎ声とか見てっと、マジ○○の飛ぶ勢い半端ねぇナビ! (意味深)今日だけで9回飛b……」


  ◆


「うおっ。マジで着いた! スバルっちのそいつって便利だなぁ」

「あぁ、すげえだろ? だけどこいつがいるだけでレーティングが上がりそうで怖いんだよな」

「レーティングってなんだ?」

「さぁな」


  リョウたちの目の前には、「悪夢の巣窟」の入り口である、洞窟がそびえ立っていた。

  入口の高さは、僅か80センチ程度で、この中に入る際には、しゃがみ移動しなければならない。

  その上、中には木のつるが生い茂っていて、それらをかき分けながら進まなければならない。

  だが、とりあえずはダンジョンの入り口を見つけることができたので、ひと段落できるだろう。

 

  ここを探し出すのに、森に入ってから僅か五分程度で見つけることがとできた。

  何故なら、ナビゲーターであるナビどらごんの千里眼で、手っ取り早く位置を特定したからだ。

  千里眼。というよりは、ナビゲーターの目は二千里先も三千里先も見ることができるので、千里眼の延長型と言ったところだろうか。

 

「ふっふっふ。僕の力、思い知ったナビ?」


  腰に両手を置き、胸を張るナビどらごん。

  こういう場合、ザルゴは素直に手を叩くだろうが、ナビどらごんの姿を見ると、手を叩いていいか迷うものがある。


  なんせ、ナビどらごんは、頭に大山ができるほど、たんこぶを作っていて、鼻からは血を流している。


  よって、ザルゴはナビどらごんを苦笑いで見ながら、「あ、あぁ、すごいよ」と、ピチピチと弱い拍手を叩いていた。

  先程ナビどらごんは、口走ってはいけないことまで口走る前に、リョウに百烈攻撃を見舞われた。


「んまぁ、とりあえず、案内してくれたことは感謝するわ」

「お、おう! どうナビ! 僕の素晴らしいナビゲートスキルは……」

「た・だ・し・DA☆」

 

  言いかけたところで、ナビどらごんの口に、リョウの人差し指が突きつけられ、硬直する。

  それと共に押し寄せる、暗い影を覆った、決して微笑ましいとは言えない、脅しの笑顔。


「次にお前が十八禁小説に夢中になって、俺が必要とした時に出てこなかったら、次は、拳ではなく……刃だ。わかっているんだろうなぁ。あぁ?」

「んぐっ、以後、気をつけますナビ。ご主人様……」

「いいだろう。戻ってよし」


  氷のように硬直したナビどらごんは、何とか氷解する。

  だが、自然とは言えない動きで、魔法陣の中へ行進していった。


「さて、行くか。気を引き締めて」

「おう! なんかオラワクワクすっぞ!」

「……やめて? いや、マジで」


  ザルゴはナイフを取り出し、つるを切り裂きながら、闇の中へ進んでいく。

  リョウは後に続いた。



  しばらく進んでいると、かなりしつこく生い茂っていたつるも、徐々に少なくなっていき、さらに進むと、道を塞いでいたつるは、壁にのみ茂るようになっていった。


「あー、腕かゆっ」

「んまぁ仕方ないだろ。お前は俺みたいに長袖着てないんだから」


  腕をかきむしりながら、歩みを進めるザルゴ。続くリョウ。

  この隊列は、いつ魔物が来てもいいようにと、ザルゴが提案した隊列だ。

  ザルゴの攻撃スタイルは近距離型。

  リョウの攻撃スタイルは、イフリートを使ってなら遠距離、又は中距離型だ。

  よって、ザルゴが前衛、リョウが後衛。と、バランスを追求した陣形である。

 

  だが……。


「あんま搔きむしってっと、余計痒くなるぞ」

「でも痒いんだよ〜」


  ザルゴは腕の痒みに悶絶しながら、道を突き進む。

  突如、踏みしめたはずの地面が、ガゴンという音と共に大きく沈んだ。


「ッ!?」


  突然のことに、ザルゴは驚き、前方へとすっ転ぶ。

  ザルゴが踏みしめたはずの地面は、長方形型に沈んでいて、人の足がすっぽり入る程の大きさがあった。


「おいおい何してん……」


  リョウがザルゴを見て苦笑しながら足を止めた。

  ……その行動は、不幸を呼んだ。


「ギャイイイイイィッ!」


  突如、辺りに甲高い咆哮が響き渡る。

  それと同時に、上空から三匹のゴブリンが、殺気を際立たせて飛来した。

  リョウとザルゴは、彼らの存在を、咆哮を聞き終えてから確認した。

  その時には、ゴブリン等は、リョウ達の首を落とそうと、ククリナイフを提げ、距離を僅か1メートル程に詰め寄せていた。


「なにッ!」

「くっ、うおらぁっ!」


  ザルゴはかなり不安定な体勢だったが、立ち上がって体勢を安定させる時間はなく、大剣をがむしゃらに投げるしかなかった。

  ブオンッと、風を切って上空へ進む大剣は、二体のゴブリンを上空へと押しもどすが、残った一体が依然として迫ってきている。

  狙いは、スキだらけであるザルゴだった。


「お前の相手は、こっちだよっ!」


  一刹那で空中に魔法陣を構築し、そこから、鋼の剣を取り出す勢いをそのままに、落下中のゴブリンを真一文字に切り開いた。

  危機一髪。命を失ったゴブリンは、血飛沫を飛ばしながら、ザルゴの両脇を通過し、地面に激突。耳に悪い音を響かせた。


「はぁ、はぁ、危ねぇ」

「……ッ。なるほど、トラップっていうのはこういうやつか」


  剣を魔法陣の中へとしまいながら、その握っていた手でザルゴに手を差し伸べる。

  だが、ザルゴはそれを制止し、遠心力を使って飛び上がった。


「悪い悪い、不覚だった。次は用心して進むわ」

「あぁ、足元には要注意だな」


  死角である足元にトラップが敷かれると、あまり気がつきやすいものではない。

  単純な仕掛けだが、トラップの中でもかなりの成功率のトラップと言える。

 

「ギん」

「ギゅう」

「ギャンス」

 

  肉体の破壊音を聞きつけ、ゴブリン達があらゆるところから出現する。その数は、百と言ったところだろうか。

  リョウは、再度魔法陣を構築し、そこから杖を取り出し、イフリート召喚の詠唱を開始する。

  ザルゴも、落下して、地面に突き刺さった大剣を抜き取り、身構える。

  ゴブリンは、四方八方から同時に背中合わせになっている二人に飛びかかった。


  戦いの火蓋は切って落とされた。

しばらく時刻は0時そのままで、不定期更新にします。


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