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ただの召喚士(本人自称)  作者: 進夢 ロキ
第3章 ダンジョン攻略
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三十九話 オレらも出発

  突然の同行願いに、困惑するリョウ。

  しかし、それに構う様子もなく、ザルゴは一人で勝手に話を進めようとする。


「いいじゃん! スバルっちって見たとこ、魔法使いっぽいし、オレが前衛、スバルっちが後衛ってとこでさ」

「いや、言っとくけど、俺は魔法使いじゃないぞ。召喚士」

「え? 召喚士? ならますますいいじゃん!」

「はぁ?」


  ザルゴの言動に頭の収集がつかないリョウ。

  召喚士は、いろいろな使い魔を召喚させて、戦わせる職業だ。

  基本的、リョウの使い魔は、どれも強力な魔法を使うものばかりだ。

  それも、広範囲に影響する。

  下手すれば、仲間まで巻き込んでしまうのだ。

  なので、ザルゴが言ったようなチームワークプレイはできない。


「意味分かんない? んー……ま、ま、行こうぜ? 邪魔はしないからさぁ〜」

「………………あ、そうだ。ランクは?」

「99! スバルっちは?」

「……同じだ」

「目的も同じってところか! じゃあ行きましょうぜ!」


  馴れ馴れしく肩を組んでくるザルゴ。

  自由すぎるこの男に、リョウは溜息をつきながらも、ザルゴを見つめてみる。


  ……何処か、昔共に旅をした、昴に似ているような気がした。


「…………まぁ、いいか」


  こんな男は大抵、断ってもついてくるタイプだ。

  拒否しても無駄だろう。

  受付嬢にダンジョンに行くことを伝える。

  受付嬢によると、階層は10階。

  長さ的には普通のダンジョンだ。

  だが、出現する魔物はどれも凶暴なものばかりだ。

  ……中には、魔物の中でも最強の種に値する、ドラゴンもいるらしい。

  だが、このダンジョンの本当の脅威は、凶暴な魔物だけではない。

  一層一層に張り巡らされたトラップも、恐れなければならないらしい。

  いや、むしろこのトラップが、このダンジョンの真の脅威と言っても過言ではないだろう。

  リョウ達はこれらの説明を受けた後、受付嬢に手を振られながら、ギルドを後にした。


「さて、あの説明じゃ、解毒剤は必須だ。買いに行こう」


  悪夢の巣窟の魔物は、毒を吐く、眠りを誘うなどの攻撃をしてくる物が、沢山いるらしい。

  毒は、身体が鈍っていき、次第に動けなくなっていき、遂には死に至る、恐ろしい効果だ。

  しかし、魔物の吐く毒には、既に治療薬がある。

 

「あ! それなら安心して! オレ、それだけは沢山持ってるからさ」

 

  ザルゴが、背中につけた、百科事典二冊分くらいの大きいポーチから、解毒剤を二つほど出してみせる。

  中にはまだ、大量に解毒剤が入っているらしい。

  だが、ザルゴは、何故解毒剤ばかりを大量に持っているのであろうか。

 

「……ん? なーんか聞きたそうな顔しとるねぇ。例えば? この解毒剤だけなんでこんなに持ってるのかとか?」

「お前意外と鋭いな」

「まぁね!」


  リョウは、細かいところまで、昴にそっくりだなと、心中で微笑する。

 

「んじゃあ、お話しするついでに、さっきも言ったオレの能力について!」

「おう」

「まずオレは、なんと、無属性(、、、)なのだ!」


  ザルゴが腰に手を当て、自慢気に言うが、そこには沈黙の風が流れるばかりで、リョウは驚かない。

  みるみるみるみる、ザルゴの顔が赤くなっていった。


「……まぁ、予想はしてた」

「えー、もう、ちょっとはおどろいたっていいじょのいこ」


  悔しそうに言うザルゴを見ながら、リョウは予想した理由を淡々と語った。


「……第一、お前は、『オレの能力』って言ってたじゃないか。その時点で、誰しもあれっ? って思うだろ?」

「あー、んまぁ確かに」

「んじゃあ無属性なら、能力何?」

「よくぞ聞いてくれた……オレの能力は、不利な状況に置かれれば置かれるほど、強くなれる。ま、いわゆる下克上ってやつ?」


  リョウでも流石に、この能力には、小さな歓声を漏らした。

  トラップが大量にある、悪夢の巣窟での戦闘には、たいへん重宝される能力だ。

 

「な? すごいっしょ?」

「あぁ、いい能力だな」


  と、話しながら歩いていたらいつの間にか、門へと差し掛かっていた。

  門番に受付嬢から渡された、サインが書かれていないダンジョン攻略証を見せる。

  ちなみに、この紙に、受付嬢からサインされると、ダンジョンを攻略したという証になる。


「……いや、待てよ。ギルドカードは無いのか。その代わり冒険者証明書があるんだったな」


  ふと、書類つながりで冒険者証明書を思い出した。

  リョウは、最近は国境を越えることはなかったため、すっかり忘れていたのかもしれない。

  ナルーガ王国に入る時は、事情聴取の件で、証明書無しで入ることができた。

  その事情聴取も、王が殺害された件から、忘れられたのか、行っていないのだが。


「さて! オレ達の冒険! 初スタートだな!」


  門を出たところで、空中に魔法陣を構築し、そこから地図を取り出す。

  ギルドから冒険者には無料で配布されている、ナルーガ王国と、その周りをアバウトに書き記した地図だ。


「ここから、北の森まで行こう。森に洞穴がある。そこが入り口らしい」

「オウケイ! よっしゃ、腕がなるぜ!」

「まだまだ先の話だけどな」


  そう、ここから悪夢の巣窟までは、かなりの距離がある。

  歩きでは、日没までかかってしまうほど、長い長い距離だ。

  そこで、リョウは魔法陣から、愛用している杖を取り出し、魔法陣を消した。


「久々にお呼びだ! 『スレイプニル』!」

「え?」


  杖を天高く掲げ、叫ぶ。

  すると、リョウ達の前方の地面に、緑色の魔法陣が浮かび上がり、そこから、まるでサーベルのような黒い刃が幾多についた鎧を纏った、6本脚の馬。『スレイプニル』が、二頭出現した。


「うわぁ、なんか物騒……」


  空手のような身構えをするザルゴ。

  対してリョウは、スレイプニルに、まるで愛犬を可愛がるように、二頭の顔を撫でていく。


「久々だな。あんまり会えなくてすまん」


  スレイプニルは、普通の馬より、四倍以上は速く走ることができる。

  リョウがユニコーンと契約した際には、移動用にも戦闘用にも使っていたが、ユニコーン契約する前まで移動用として、このスレイプニルを使っていた。

  そんなスレイプニルに、リョウが与えた付与魔法は、当然、『速度倍加』だ。

  なので、このスレイプニル達は、普通の馬より、実質八倍の速さで走れる。

  ここから悪夢の巣窟までは、ほんの数分で着いてしまうだろう。

 

「えと……これに乗ってくの?」

「あぁ、こっちの方が速いからな。格段に」

「オレ、馬初めてなんだけど。操縦とか、できないよ?」

「なに、大丈夫だ。生きたい場所の方向さえ言えば、あとはそこまで一直線さ。一応聞くけど、寄り道すっとこなんて、無いだろ?」

「お、おう」

「なら大丈夫だな」


  そう言いながら、リョウはスレイプニルに慣れた動作でまたがる。

 

「ほら、乗れよ」


  リョウは、何の躊躇もなく、もう一匹のスレイプニルを、人差し指で指す。

  だが、ザルゴには躊躇いがあった。

  それはもう、つばを飲み込んで、両手で同時に頬を平手で打たなければ、振り払えない躊躇いが。

  震える足で、スレイプニルにゆっくりとまたがり、縄を掴む。

  操縦は要らないので、この縄はただのつかまり棒ならぬ、つかまり縄だ。


「じゃあ行くぞ! 北へ! ハッ」


  リョウが命令を下すと、二匹のスレイプニルは、前脚を天高く上げ、天空に轟いた。


「……ぬぁぁぁぁ〜! やっぱ無理だぁ〜」


  ……轟と共に、弱々しい悲鳴も上がったが、スレイプニルもリョウも構うことなく、北へと、猛スピードで発進した。


「あぁ! ムリ! ムリムリムリムリムリィ! 速いの怖いぃぃぃぃああああッ! 誰か助けてぇぇぇぇェッ!」


  ザルゴのあの調子は、どこへ行ったのやら。


  ◆


「ザルゴ!」


  北の森へ着く頃には、ザルゴは頭の中から顔色まで、真っ白になっていて、口からは、出てはいけないものまで飛び出しかけてしまっていた。

  リョウはひとまず、彼をスレイプニルから降ろさせ、そこらにあった、適当な岩にもたれ掛けておいた。

  それから、スレイプニルを魔法陣に戻してから、ザルゴの、天に向かおうとしている魂のようなものに、テンポがゆったりで優しい歌を歌った。

  後、ザルゴは何とか目を覚ました。


「まさか、馬に乗れんとは……」

「グハァッ! ……い、いや? の、乗れますよ? さっきは速いのが快楽すぎて少しイっちゃっただけですよ?」

「逝っちゃったの間違いじゃないのか?」

「グッハアっ! ……ち、違いまむよ、違いまむ違いまむ。けっちてこわくなんてらりまへんでちたよ」

「分かったから落ち着け」


  まだ少しだけ壊れているザルゴを、リョウは苦笑いしながら見る。

  帰りは歩いて帰ろうと、こころの中で、固く決意した。


「で、だ」

「お、おう」


  二人で、森の入り口を正面に捉える。

  森に入口なんてご丁寧なものは無いが、ここからはいるのだから、入口という言い方だろう。

  この入り口から、草や木が無数に生い茂った森の奥に、悪夢の巣窟は存在する。

  あまり見つけやすいものではないが、リョウ達としては一刻も速く見つけたいものだ。

  一人は、謎の魔物。バクーンを倒した際に、死体の代わりにあった球体の謎を解くために。

  一人は、ランクを上げて、コードネームを与えられ、モテ男になる夢を果たすために。


  だが、……ダンジョンが見つかる事は、すぐにやってきそうには無いようだった。


  突如、リョウ達の背後に、大鎌が、回転しながら、迫ってきたのだ。

  いち早く反応したのは、ザルゴ。

  背負った大剣を、一瞬で抜き取り、重さを感じさせない振りで、豪快に鎌を弾いた。

  弾き飛ばされた鎌は、右に飛んでいき、刃から地面に突き刺さった


「ッ!」

「スバルっち! なんか来るっ!」


  歯をくいしばる二人。

  その中で、リョウは、必死に思考を回転させていた。

 

  ーーあの鎌…………ッ! おいおい! 冗談だろ!


  冗談ではない。

  本当のことなのだ。


  そうとも言わんばかりに、鎌が突き刺さった地点に、どこからともなく、隕石の如きスピードで、黒い何かが落下した(、、、、、、、、、)

  衝撃で巻き起こった砂けむりに、浮かび上がったのは、デーモンのようなシルエット。

  だが、それはデーモンではない。


「あいつは、バクーン(、、、、)だ! 気をつけろ!」

「え? バクーン?」


  きょとんとして、構えができていないザルゴに、シルエットは容赦することなく……。

  砂けむりを振り払い、スレイプニルよりも圧倒的に速いスピードで、ザルゴに襲いかかった。

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