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ただの召喚士(本人自称)  作者: 進夢 ロキ
第2章 ナルーガ王国の異変
29/52

二十六話 最終決戦

いつもより長めになっております。

 私は、空中を走るように移動し、まっすぐに神食い(ヴリトラ)へと向かっていった。

『サクラさん、この能力についてご説明いたしましょうか?』

  途中、マリーが頭の中に響くように話しかけてくる。

  だが、その必要などない。

  この能力は、おそらく心を通わせた生物と、合体する能力。

 ……というよりは、体に取り込む能力だろう。

  生物を体に取り込んだ私は、その取り込んだ生物の能力を受け継ぎ、私の意思で、能力を自由に使えると思う。

  現にこうして、天を駆けている。これもユニコーンの能力の一つだろう。

  ということは、雷とかも使えちゃったりするのだろうか。

  でも、そのように能力を受け継げる代わりに、デメリットとして、少し容姿が変わってしまうのだろう。

 今は、白い細めの鎧だ。

  少しばかり派手だが、今はそんなことを気にしている場合じゃないだろう。

  まぁ、大胆な格好になってしまったら、少しは気にするだろうけど……。

  で。

「こんなもんでしょ?マリー」

  脳で会話しようと思ったが、咄嗟に口に出てしまった。

『おしい!おしいです!すんごくおしいっ!』

「えぇ?どこが?」

『デメリットの話ですよ』

「デメリット?」

  デメリット、というのは、容姿が変わることだと思うのだが、それ以外に何かあるのだろうか。

『はい。あなたは容姿が変わることだけがデメリットと思っていますよね』

「そうだけど…。他に何かあるの?」

『容姿が変わるだけでは、デメリットではありません。場合によっては、敵の追っ手が来た時に、一時的に能力を使ってやり過ごす。という使い方もあります。そうなったらもうメリットでしょう? デメリットっていうのはそんなに甘いものではありません。この能力のデメリットは、あなたが生物を取り込んだ状態で長時間いると、やがて一体化してしまって、その取り込まれた生物はあなたが死ぬまで一生あなたの体の中で暮らしていくようになってしまいます』

「ええっ!? ……そう、なの……。じ、じゃあ、その長時間って、どのくらいなの?」

『あなたはまだ能力を使いこなせる状態ではありません。だから、最高でも十五分くらいが限界かと……』

  十五分、十五分……。かぁ。


なんだ。(、、、、)意外と長いじゃん(、、、、、、、、)


『は?』

「十五分もあれば、楽勝楽勝。なんなら、十分でもいいよ」

『……そんな、余裕ぶっこいている場合じゃ……あ』

  マリーの声が突然聞こえなくなった。何があったんだろう。……まぁ、なにがなんであれ、私は十分であのドラゴンを倒せばいいだけだ。

  ……なんだろう。妙に自信に満ち溢れている。あいつ(ヴリトラ)、初めて見た時にすごい恐怖を覚えたはずなのに…… これも能力の反動かな。

「まぁ、いいや」

  天空を蹴って加速し、一気にドラゴンのところまで辿り着く。ドラゴンを改めて見ると、やはりとてつもない形相だ。

  だが、今の私にはそんな事は関係ない。

  相手がどんなに恐ろしくても、倒せばいいだけの話だ。

  右手で剣を左へ振る。獲物は、まず厄介な腕。

  爪が伸びる能力でこちらの攻撃を防いでくるだろうから、まず腕から切断していく寸法だ。腕を切断できれば、後は戦闘不能なドラゴンを一方的に斬っていけばいいだけだ。……我ながらひどい事を考えたな。

  だが、ドラゴンは当然私の攻撃を見逃してくれるほど甘い相手じゃない。

  左手の爪を伸ばして、私の剣を受ける。

  いや、受けようとしたが、その爪はぶった斬り、剣を両手に持ち直し、振りおろす。肉が裂けていく感触が、剣から両手に伝わってくる。気持ち悪いが、構わず斬っていく。

 これでまずは、指が四本あるうちの、外側の一本を落とした。次だ。

  二歩退き、今度はドラゴンの懐に潜り込む。が、ドラゴンが煙に包まれていくので、再度退いた。


  あの能力だ。

  ユニコーンに二度にわたって傷をつけた、あの姿を消す能力。


 あのドラゴンの名前は、神食い(ヴリトラ)。神食いと言われるくらいだから、おそらく噛む力に特化しているのだろう。ユニコーンならまだしも、私が噛みつかれたら、当然即死だ。

  だから、この攻撃は、絶対に食らってはいけない。たとえ腕を落としても、あの能力と噛みつきがあるかぎり、油断はできないだろう。

 しかし、近い未来に神食い(ヴリトラ)は、この能力は無意味(、、、、、、、、)だと、思い知らされることになるだろう。

 目を瞑る。こんな状況の中、目を瞑る。


(空間、想像。

 座標、捜索。

 座標、特定!)


  イメージした空間の雷を落としたい座標に、また雷が落ちることをイメージして……。

「落ちろ!」

  刹那、私の周りの四方八方に雷が落ちる。姿を現したドラゴンは、私の背後でうめき声をあげる。

  この瞬間を待っていた!

  落ちた雷を剣にチャージし、8倍にに膨れ上がった移動速度で、ドラゴンの左腕に接近し、肘を斬る。続いて右腕に回りこみ、二の腕を斬る。

  赤黒い血が吹き出し、辺りに血の雨を降らせる。切断された両腕は、真っ直ぐに地面に落ちていく。よろめいたドラゴンは、また煙に包まれて姿を消す。

  これで、爪の能力を潰した。あとはひたすら傷を入れるのみだ。

  先ほどと同じように……。


(座標、捜索。

 座標、特定。)


  空間は、もう既に把握済みなので、イメージする必要は無い。

  自分の周りに再度雷を落とす。

  次はドラゴンのうめき声が左で起こった。

  よし、次は危険だが、顎を落とそう。

  そう思い、剣を両手で構え直した。瞬間……。

「ぐっ!?」

  あるはずのない爪が、私の右肩を直撃した。

  当たりどころが良かったため、おびただしい量の血は出なかったが、血を撒き散らしながら空中を十メートルほど飛ばされた。五回体を縦に回してなんとか止まる。

  右肩を抑えて、大きく息を吐き出し……


「そうだった。再生能力……! 」


  歯を食いしばった。

  右肩から手をどけて、傷の具合を見る。

  やはり血は出ている。

  しかし、気にしていたらこの量の血ではすまなくなってしまう。

 剣を構え直し、頭を回す。

 そういえば、奴には再生能力があった。

  だとすると、攻撃を封じることは不可能だ。ましてや殺すことなど、もはや夢であろう。

  ……なら、どうすれば。

  と、考えているうちに、ドラゴンの攻撃は私の身体に直撃する。

「ッ‼︎」

  今度はもろに攻撃を食らってしまい、はたき落される。

  落下の圧力に、なにもすることができず、私は背中に硬い岩肌を受けた。

  あたりに砂埃が待って、地面が少し凹む。

「痛ッ!」

  鎧があったので、背中の骨に異常は無いようだが、内臓が揺れた。

  気持ち悪い。吐き気がする。口元を抑えながらおもむろに起きあがった。


「大丈夫ですか! サクラさんっ! 」


  すると、ふと背後から声が聞こえた。

  振り返ってみると、そこには日本刀を持った、ナルーガの姿が……。

「それだ!」

「へっ?」

「えっと、ナルーガ……さん?」

「なんでもいいですよ。それより怪我は大丈夫ですか? 何か右肩が……」

「いや!いいのいいの、私は。それより聞いて!……えっと、ナルーガ、あのドラゴンを倒すためにはあなたの力が必要なの!」

「僕の……力……? 」

「うん!あなたのその妖刀で、今からあのドラゴンを倒す。だから、力を貸して!」

  そう。あのドラゴンに傷を入れるには、この妖刀が一番有効だった。

  斬られても斬られても復活する神食い(ヴリトラ)。サクラの斬撃は、部位を斬られているだけで、そのドラゴンの身体全体を斬っているわけではない。よって、これでは、十年経っても殺す事ができない。

  しかし、この、『妖刀 龍滅』ならどうだろうか。

「その妖刀なら、斬ってから、指を鳴らせば、斬った傷跡から爆発するんでしょう?なら、傷跡が消える前にあいつの身体をバラバラに斬り裂いて、爆発させれば、再生は不可能。だから、あのドラゴンを倒せる人は、あなたしかいないの。だから、やってみて!」

「……う〜〜ん。よく、分かんないけど、とりあえず……」

  ナルーガは刀を構える。

「やってみます!」

「よし、分かった!……じゃあ、作戦はこうね。

 私が、雷を落としながら、あいつをここまでおびき寄せる。

 そして、おびき寄せたら、雷を落として蓄積させた電気を、電磁砲にして、あのドラゴンに浴びせる。

 電磁砲にしびれて動けなくなったドラゴンに、あなたがその妖刀で、ありったけの斬撃を放つ。

 そして、傷が消える前に、爆発させる。

 これで行きましょう!」

「分かりました!」

 私は頷きながら、吐き気を我慢して、地面を蹴り、そして天空を蹴った。

 まずは、ドラゴンを、待機しているナルーガの元までおびき寄せる。さっきは簡単に言っていたが、考えてみるとかなり難しい事だと思う。ドラゴンの、姿を消す能力で、一度は傷を与えたものの、癒えて無意味となったし、このままでは能力によって翻弄されっぱなしだ。何か、いい手を考えなければならない。例えば、あのドラゴンをナルーガのところまで吹き飛ばすとか。……いや、無理だ。絶対に無理。

 ……だとしたら、一体、どうすれば……。


 吹き飛ばすのは、あの巨体だから無理。

 おびき出すも、当然無理。

 相手からは、絶対にこちらに来てはくれない。

 …………だったら!


 自分の周りの座標を特定し、そして雷を落とし、剣に蓄積する。それと同時にドラゴンへ向かうスピードを上げる。

 私が向かう方向の周りに、無数の雷を落とし、剣に蓄積しながら走る。

 そして、ドラゴンの懐……。

「まだだ。もっと、雷が……! 」


 ……を、左に避けて通り過ぎた(、、、、、)


 ☆☆☆


 ありえないスピードで向かってきたサクラに、ドラゴンは腕を振る。が、そんなの関係ないと言わんばかりに加速しながら通り過ぎた。

 そして、通りすぎて5メートルくらいの空で、ドラゴンのいる方へ振り向き、

 剣をドラゴンに向けて突き出す。

 その瞬間。またおびただしい量の雷が落ちる。雷は瞬時に剣に蓄積され、そして…

「ハアァッ!」

 光の如くスピードを誇るサクラは、ドラゴンに瞬きさせる暇もなく胸に突っ込んでいった。……いや、突っ込んでいた(、、、、、、、)


 ☆☆☆


 ドラゴンが痛みを嘆くが、構わず私は剣を突っ込んでいき、そのまま地面へと一直線に落下する。

 そのスピードは、溜め込んだ雷の二分の一(、、、、)の力を使って、一気に降下させていて、多分外から見れば、隕石みたいな速さで地面に突っ込んでいると思う。


 ☆☆☆


 これは、この技は、このドラゴンだけでなく、他の者にも使える必殺技に値するだろう。

 これを使えば、大抵の者は必ず死ぬ。

 この技に、名前をつけるとしたら…それは、隕石のように地面に落とす、だが、このスピードは、隕石ほど(、、、、)甘いものではない(、、、、、、、、)。よって、この技は……。


 ☆☆☆


「『流星サンダァァフォオオオルゥ』ッ!


 隕石が、地面に、轟音を立てながら直撃し、地面を抉る。

 これを食らったものは、身体中の内臓が破裂し、骨は粉々に砕け散り、血の噴水とともに消え去る……はず、なんだけど。

 流石は神食い(ヴリトラ)だ。感心してしまうほどしぶとい。この一撃を食らって、まだ生きている。息をしている。

  しかも、能力を使って、姿を消そうと、黒い煙が漂ってきている。が、私もこんな事態を全く予測していなかったわけではない。こんなときのために、半分残しておいた(、、、、、、、、)んだからッ!

「させるかァッ!『電磁砲サンダアァシュゥトォオオ』ッッッ!」

 蓄積していた電気を、一気にドラゴンに放出する。

 剣を伝って身体中に電気が痺れ渡る。

 青白い光に、私の視界が包まれる。

 眩しい。だが、目を瞑っている場合じゃない。早く、早く……ッ!

「今だッ! きれええええええええっっっ! 」

 電気を全て放出し、私は天空に退く。

 すると、間を開かずに、ナルーガが龍滅で、無数の斬撃を叩き込む。

  斬って、斬って、斬って斬って斬ってきってっ!そして……。

 ナルーガはありったけの斬撃を浴びせた後、素早く下がり、指を……。

「『爆ッ発エクスゥゥプロォオオジョン』ッッッ!」


 鳴らした。


 闇で包まれていたその空間は、爆風とともに一気にまばゆい光に包み込まれた。


 ☆☆☆


「うぅ…」

 サクラが、ドラゴン相手に悪戦苦闘していた時の話である。

 地面に突っ伏して倒れていたナビどらごんは、呻き声と同時に目を覚ました。

「はっ!ここは!?」

 自らについている傷など忘れて飛び起き、辺りを見回して必死に現状を整理しようとする。

 ここは戦場。

神食いと対峙。

  ユニコーンが噛まれて……

 落下。

「サクラ!ユニコーン!」

 そういえばさっきから、サクラとユニコーンがいない。

 もしかして、落下した時に、神食い(ヴリトラ)に追い打ちをかけられて、死んでしまったのか…!

 だが、そんな不安も、上空から響き渡った激しい雷音によってかき消された。反射的に上を見上げると、そこに青白くて眩い光が光っていた。

「……ん?」

 ふと、ナビどらごんは正面の空に目を向けると、そこには3つの黒い点があった。空の色とカモフラージュして、よくは見えないが、確かにそこには点が3つあった。

「なんナビ、あれは……」

 その黒い点は、こちらにゆっくりと向かってくる。

 ナビどらごんはもう一度、よく目を凝らして見てみると、そこには信じたくもない光景があった。

 ぐるぐると巻いた白いツノ。

 デーモンのように黒い体。

 あれは……。


 ☆☆☆


 瞑っていた目をおもむろに開き、ドラゴンがいたところを見下ろす。

 そこには大きなクレーターがあるだけで、黒い竜の姿など、全く無かった。

「…………終わっ、た」

 身体から力が徐々に抜けていく。もう浮いていることすらままならない。

 薄れていく意識に、待ってと止めようとするが、疲れた身体が言うことを聞かず、落下していった。

「あっ!サクラさんっ!」

 ナルーガの声が耳に入ってくるが、それに答える力などない。落ちる。

「うおっ!?」

 落ちた。だが、地面の硬い感触はない。筋肉のある暖かい腕に受け止められている。

 暖かい。心が温まるくらいに、朗らかで、子供みたいに。

 ふと、小さな男の子が、お母さんらしき人と手をつないで、笑いながら歩く様子が浮かんだ。私はそれに和むように、眠りの世界へと入った。


 ☆☆☆


 ナルーガは、困っていた。

 両腕に、恋をしてしまった、純白の騎士、サクラが、可愛い寝顔で寝ている。

 こんな近いところで、こんな可愛い寝顔で寝られてしまうと、もう、身体が蒸発してしまいそうに熱い。

 だから困っていた。

 硬い地面に寝かして心を落ち着かせるよりは、こうやって、抱えられて、近くで眺めていたほうが、サクラ的にも自分的にも損はないんじゃないか。

 だが、このままでいると、心が高鳴って危ないことをしかねないので、下ろした方がいいんじゃないのか。

 これからどうすればいいんだろうか。

 下すべきか、下ろすまいか。

 悩んで悩んではニヤニヤして、まるで恋愛みたいだと、ナルーガは思った。

 すると、そこへ……。


「大変ナビ!サク、……ッ!?」


 ナビどらごんという名の、邪魔者が入ってきてしまった。

 サクラに夢中になって、動揺していたナルーガは、突然のことに動揺して……。

「あ!あ、あの、えっと……これは、……その、あの」

「憲兵呼ぶナビ?」

「あぁぁぁっ!!その、すみませんっ!今下ろします!下ろしますからぁっ!それだけはぁっ!」

「はいはい、分かってるナビ。呼ばないナビよ。……って!それどころじゃないナビ!大変ナビ!」

 慌ただしい様子のナビどらごんに、ナルーガはゆっくりとサクラを下ろす。

「何ですか?」


 次の瞬間、ナビどらごんは衝撃の言葉を口にする。


「バクーンがっ!バクーンがっ!まっすぐこちらへ向かってるナビ!」

ドラゴンをどうやって攻略するか考えながら書くのって楽しいです。

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