十話 最初の戦闘
かなり歩いて、冒険者管理所のところまで戻ってきた。この王都めっちゃ広い…。
冒険者管理所の隣にあるのは、大きな建物だ。ナルーガ王国、冒険者ギルド。
全体的に木造で、赤い塗装がしてある。
中に入ると、まず、正面に見えるのがクエストカウンター。左に仮よろず屋。右に休憩所やトイレなどがある。
早速私達は、クエストカウンターまで歩いていく。
そこにも、やはり受付嬢がいた。
冒険者管理所のような青い服ではなく、薄いピンク色の服を着ている。
「い、いらっしゃいませ!じゃなかった…ぇぇと、こんにちは!冒険者さん!
きょっ、今日はどんな商品を…じゃなくて、どんなクエストをお探しで…?」
初めてクエストカウンターの受付嬢をするような感じの接客だ。
いらっしゃいませ…彼女はよろず屋でもやっていたのだろうか。
そんなことを考えていると、スバルがクエスト掲示板を見始める。
私はまだ冒険者に成り立てなので、おそらく難易度1か2程度のクエストを選んでくれるだろう。
難易度1のクエストは少なめだ。
「討伐:スライム10匹の討伐」
「討伐:リトルゴブリン10匹の討伐」
「採集:薬草15本の採集」
など、他に4個ほどクエストがある。
スライムは、私でも、ナイフで倒したことがあるので、スバルもいればかなり簡単だろう。だから、物足りない。
薬草15本の採集も、前に日課のようにやっていたことなので、簡単だ。一人でもできる。
どのクエストも、簡単だが、一つ気になるクエストがあった。
「特殊:クレイジービックビーの巣の駆除」である。
難易度1にしては、難しいクエストだ。
クレイジービックビーは、その名の通り、危ない蜂だ。
かなり凶暴で、蜂にしては、全長20㎝とかなり大きい。近づいただけで針を刺してくるし、毒液を飛ばしてくる。
毒の攻撃を受けたら、すぐに解毒剤で毒を抜かないと、動きが鈍くなり、五分程度で完全に動けなくなり、最悪の場合死に至る。
これだけ危険なクレイジービックビーだというのに、巣の駆除をしろと言う。
巣の駆除となると、大量にいると思うし、かなり困難だろう。
駆除してくるだけなら簡単かもしれないが、クレイジービックビーが、黙って見てるわけにはいかないだろう。
うん。スバルがいれば、なんとかなると思うが、これは私の戦闘訓練みたいなものだ。
属性も開放できていない私に、こんな高難度なクエストはできそうになかった。
でも、いつか挑戦してみたいものだ。
このクエストはやめて、別のクエスト。
「討伐:ゴブリン5匹の討伐」
を受注する事にした。
ゴブリンは、5匹から10匹ほどの、群れで戦闘を行う。
おとなしい性格だが、怒ると我を忘れ、攻撃してくる。
身長170㎝ほどの人間の足から膝までくらいの大きさなので、倒しやすいと思う。
これなら私一人でもできるはずだ。
「このクエストをお願いします。」
スバルがクエスト掲示板を指差しながら言った。
「難易度1、ゴブリン5匹の討伐ですね。分かりました。それではここにサインを。」
受付嬢は、そう言いながら、一枚の紙を出した。
難易度1
ゴブリン5匹の討伐(討伐クエスト)
討伐証明品:ゴブリンの歯、ツノ、棍棒など、ゴブリンの死体から剥ぎ取ったもの。
報酬:500エル
受注者_______様
尚、死んでしまった場合は、当ギルドでは一切責任を負いませんので、十分に注意してクエストを行ってください。
ご武運を。
これは、クエストを受注するという証拠になるものだろう。
スバルは、受付嬢からペンを渡され、下線の上に名前を書く。
「それではいってらっしゃいませ!
討伐証明品をお忘れなく!」
受付嬢は、名前を書いたのを確認すると、笑顔で言った。
受注証明書を受け取り、私たちは、ギルドを出る。
「さてと、とりあえず、森にでも行ってみるか。」
スバルが言う。
確かに、ゴブリンは森に住みそうだ。
私は頷いた。
それをスバルは了承して、目的地へと国を出た。
☆☆☆
国を出て、一番近くに見える森は、南東にある。
私たちは森へと歩みを進める。
ブヨブヨ
途中でスライムが、私たちの前に現れた。
グリーンスライム。スライムの中で最も弱い、緑色のスライムだ。
「それ、最初の戦闘だ。やってみな。」
スバルが腕組みをして言う。
私は腰から長剣を抜いた。
長剣は、本当に軽い。天空に投げてしまえるほど軽い。
スライムは急に飛びかかってきて、私に体当たりをしようとジャンプした。
速い。結構速い。
だが、私は目をつむって剣を正面に振るだけで、ズバッと、スライムは真っ二つにされた。
「おお、なかなかだな。」
まさか、剣を一振りで倒せるとは思っていなかったので、あっけなかったが、とりあえずグリーンスライムの体液を採取して、森に向かった。
グリーンスライムを倒して、体液を採取した時に、何か、頭に浮かぶものがあった。何かは分からなかった。
不思議な感じがした。
その後も、立ちふさがるスライム達を、数体撃破して、やっとの事で、森までついた。
森では、当然整った道はない。
ので、草を剣で斬りながら、道無き道を歩く。
途中で、スライムも一緒に斬ってしまうので、なんとも言えない感じがする。
あれ?スライムってこんなにザコだったっけ?
しばらく歩いていると、開けたところで、ゴブリンが5匹ほどたむろっているのを見つけた。
咄嗟に息をひそめた。
数が多くなくてよかったが、やはり緊張する。
スライムは、緑色の体液が出てくるが、ゴブリンからは、赤い血が出てくる。
これからは、剣士としての、決断の時だろう。
数回深呼吸して、はっきりとゴブリン達をみ捉える。
スバルが、行け。と頷くと、私は一匹のゴブリンに背後から飛びかかった。
ゴブリンの背中の皮膚に、剣が、入り込んでいく。肉を斬る感じは、あまり好きではないが、これも自分のためだ。
斬り終わると、ゴブリンは、唸り声をあげて、背中から赤黒い血液が吹き出す。
うん。死んだな。
他のゴブリンが、キッ!?と、声をあげて、戸惑っているところに、一閃する。
一匹のゴブリンの腹部に、刃が突き刺さり、ゴブリンは即死する。
他のまだ生きているゴブリン達が、私をにらみ、(よくも仲間を…ゆるさねぇ!)と言わんばかりに殺気を放った。
だが、私は動じず、剣を構える。殺気をおくる。
私とゴブリン達は睨み合った。
ふと、先に動いたのはゴブリンたちであった。
「キーッ!」
一匹のゴブリンが飛び、棍棒を振る。
私は剣で防御して、そのまま打った。
ゴブリンは、吹っ飛ばされ、後ろの木に打ちつけられる。死んではいないようだった。
すかさず、二匹のゴブリンが、棍棒を投げるが、私は飛んでくる棍棒に合わせてぶった切った。
「キー!?」
ゴブリンは、驚きを隠せないようだった。私はその隙をつき、剣を横に振った。
スパンスパンと斬れていき、ゴブリンは膝をついてうつ伏せに倒れた。
あと一匹…。
私は木に寄りかかって動けないでいるゴブリンに近づき、首の二箇所を指で押す。
すると、ゴブリンはそのまま眠った。
ように見えるが、私は殺していた。
流石に動けないでいるのを斬るのは残酷なので、安楽死にさせてあげた。ゴブリンにも、ツボがあってよかったと思う。
私は、スバルの方に向き直る。
「ふぅ。終わったよ。」
「すごいじゃないか。初めてにしてはかなりいい動きだったぞ。」
スバルが拍手しながら言う。
なんか照れてしまう。
「さて、目的も達成したし、証明品を剥ぎ取って帰ろうぜ。」
私は頷く。
剥ぎ取りの作業は、スバルがやってくれるという。
今回の戦闘を経て、私は武器の扱いに慣れたと思う。軽くて、リーチが長い。
守備もできる。これは強い。
これなら、もう難易度2のクエストもできるのではないだろうか。
自信がこみ上げてきた。
スバルの剥ぎ取る作業が終わったので、私たちは帰ることにした。
マリーが言っていた。属性解放が、まだできていない。
誤字等、ありましたらご報告していただけると幸いです。




