プロローグ 〜ただの召喚士〜
ファンタジーものです。
読みにくい方は修正版の投稿を予定しておりますので、それまでお待ち頂けたら幸いです。詳しいお話は、三十五話あとがきをご覧ください。
長い長い夜が明け、眩しい朝日が顔を出し、森林たちを照らす。今、ドアを開けて外に出た私も照らしている。
さっき起床して窓を見たら、とてもいい朝だなぁと思ったから、外に出てきた。思った通り、いい朝だ。森を抜けて、街に出たいくらいだ。
そうだ。こんなに天気のいい朝なんだ。森に行って薬草を積んでこよう。よろづやを経営しているお父さんも、きっと喜ぶはずだ。
そう考えた私は一度家に戻る。
シャツと短パンの夜用装備から、真っ白なワイシャツ。の上からベストを羽織って、茶色のスカートを装備する。
この装備を着たところで防御力は上がらない。
うん、決まってると思う。
そして、テーブルの上に用意してあったパンとスープを食べ、歯を磨いたあと、ショルダーバックを持ち、帽子をかぶって、ドアを開ける。
うん。さっき見た風景だが、やっぱりいい朝だと思う。
木々の隙間から日光が差し込んで眩しい。でこに手を置き日陰を作る。
家の方へ振り返り、ドアの鍵穴に鍵を差し込んで回し、取り出す。これで、出かける準備は完了した。
今から森の奥にある「女神の泉」というところへ行き、薬草を十個、二十個程度積み、家に戻ってくる予定だ。
女神の泉には何故か薬草がたくさん生えている。いくら積んでも無くならない。不思議な泉だ。
しかも、泉の水はすごく美味しくて、しかも寿命が少し伸びるという噂がある。
しかし、その女神の泉に行く途中には凶暴な魔物がいるという噂があり、その魔物の目撃例は無い。
なぜなら、その魔物に出会ったが最期。遭遇して無事に帰ってきた者はいないという。
とてつもなく恐ろしい話だが、お父さんと泉の水をくみに行くときは、ブルースライムやグリーンスライム程度しか出てこないので、おそらく今回もだいじょうぶだろう。
それに、スライム程度なら私でも倒せる。
まぁ、今回も何事もなく戻ってこれるだろうと思い、森の中へと入っていった。
☆★☆★☆
案の定。何事もなく女神の泉についた。
私はバックと帽子をおき、泉の水を手ですくい、それを顔にかけた。
やっぱりここで顔を洗うのはとても気持ちいい。
それから泉の水を少しだけ飲んで薬草を積む作業に取り掛かった。
「うっ…うう…」
取り掛かろうとした時、どこからかうめき声が聞こえた。人間みたいな声。
「誰?誰かいるの?」
私は立ち上がって、うめき声の主を探した。
「だ…れか…」
声のする方、背後の方を見た。
するとそこには傷だらけで服がボロボロのうつ伏せで倒れている男の人がいた。
「だっ、大丈夫ですか?」
私は傷だらけの彼に近寄り、傷の具合を見た。
汚れていて、そして背中に深い傷があり、結構な量の血が流れていた。
こんな量の血を見たのは初めてで、吐きそうになったが、なんとか抑えた。
応急処置をとろうと私は積んでいた薬草のエキスを絞り、男の人の傷にかけた。
「ぐっ…」
「少し痛いけど、我慢して」
傷口に十分に染み込ませた。あとは傷を塞ぐ布が必要だ。
少しためらったが、茶色のスカートを少しだけちぎり、布の代わりにして、傷の上に置いた。
これで、あと一時間程度で傷は塞がるはずだ。
「…うぅ…」
どうやら男の人は落ち着いたようだ。安心して眠っている。私はひとまずため息をついた。
しかし、何故こんなところで倒れていたのだろうか。
魔物に襲われたのだろうか。見た所、剣は装備していないから魔法使いだろうか。
基本的、魔法使いはサポート職のため、仲間と同行することが多い。まぁ、一人で冒険する魔法使いもいるらしいが…
だが、杖もない。
ということは……武闘家?
いや、こんなひ弱そうな体では武闘家は目指さないだろう。
分からなかった。この人が、いかにどのようにして魔物と戦うのか。
そうやって考えながらも、周囲の魔物に警戒しつつ、彼を見守った。
☆★☆★☆
しばらく経った頃のことだった。あくびをしながらうつらうつらしていると、
「う…うぅ…っ」
彼のまぶたがゆっくりと上がり、瞳が目に戻った。
彼に近寄る。
「気がつきました?」
「……あれ…?お、俺は…?」
「あなた、ここで倒れていたでしょう?何があったの?」
「……俺…魔王にやられて…」
「ま、魔王?」
魔王。魔物の頂点に君臨し、王のことだ。
まさか、この人はそんな強いヤツと戦ってたってこと?
「体…起こしてくれないか?」
そして彼は私に助けを求めた。
私は言われたとおり、彼の体をゆっくりと起こしてやった。
すると彼は右手を広げた。
「何をしているの?」
「治癒だよ」
「治癒?」
よく見れば彼の右手には緑色の炎のようなものがある。
やはり彼は魔法使いのようだ。
………しかし、私が思っていた魔法使いとは違っていたようだ。
「出でよ。『精神召喚の杖』」
緑色の炎を地面に叩きつけたかと思うと、手のひらから魔法陣が広がった。緑色だ。眩しいほどに光っている。
すると、その魔法陣から、木の杖が出てきた。そして、魔法陣は徐々に光を失い。やがて完全に消え去った。
私は魔法陣に夢中になっていると、いつのまにか彼は治癒を済ませたようでピンピンしていた。立ち上がって体をひねっている。
「貴方、どうやって治したの?」
「召喚魔法で、白魔法使いを召喚した。んで、治癒してもらった」
ん?いまこの人なんて言った?
召喚…魔法…?
彼はまるで当たり前かのように女神を召喚したとか言ってる。
「貴方、名前はなんていうの?」
「俺か?今は…」
さわさわさわさわさわ………
「きゃっ」
「静かに、声を出すな」
いきなり森の中から何かが動く音がした。
スライム?……いや、違う。スライムなら他にペタペタとかドロドロとか気持ち悪い音を出すが、その音がない。
聞き取れなかった?……いや、草木が動く音はもっと近くで聞こえた。なら気持ち悪い音も聞こえるはずだ。
じゃあ、なかったら、一体………?
「グァァァァァァァァァッ!」
この声は、聞いたことがない。
完全に獣の声だ。
「……なぁ」
「はい?」
彼は小声で耳元に囁いた。
だから私も小声で返した。
「この辺りの魔物に知識はあるか?」
「一応」
「教えてくれ」
「この辺りは、スライムが多くて、それ以外は…」
「でも、おかしいぞ。明らかに今のは獣の声だぞ」
「でも、この辺りにでる獣の話なんて………!」
私は噂でしか聞いたことのない魔物なのに何故か悪寒が走った。身体中に。
「何かいるのか?」
「噂だけど、目撃例がない魔物で、その姿を見た人は、必ず殺される……でもまさか、そんなことが起こるはずが…」
「いや起こる。可能性がゼロじゃないなら起こる。気をつけろ」
ドスンッ!
大地が揺れるような大きな地鳴りだ。
獣の足音のような音がした。
「いいか?そこの木陰に隠れてろ。俺がそいつをやる」
「えっ?」
「いいから早く!」
言われた通り背後の木陰に隠れた。
召喚術師は足音がする方を正面に構える。
ドスンドスンドスンッドスンッ
徐々に音が大きくなり木に止まっていた鳥たちは一目散に飛び去っていくのが見える。
怖い。こんなに強い恐怖。初めてだ。
「くるぞ!」
林の中で何かが光った。赤い、いや、紅い。目のようなもの。つり上がった怖い目だ。
そしてその目は召喚術師をみ捉えた。
刹那。紅い目が猛スピードでこちらに向かってきた。
ついに魔物が姿をあらわす。剛毛で、爪が鋭く、牙も鋭くて、恐ろしい。
全長は私の三倍くらいある。ものすごく大きい。
魔物が腕を振りかぶり、召喚術師に傷を入れようと爪を振る。かわそうと召喚術師は左後方へ飛び、そして、詠唱を唱える。
「出でよ。赤き竜。サラマンダー!」
赤色の魔法陣が地面に表れ、眩しい光を放つ。魔物はその眩しさにうろたえる。
やがて、四足の紅い、角が後方へ伸びた竜が魔法陣から出てきた。
「焼き尽くせ!『地獄火炎』!」
命令を受けたサラマンダーは、大きく口を開け、火炎玉を、弓矢を飛ばすような速さで魔物にはなった。
火炎玉は魔物にそれずに命中した。魔物の腹に風穴が空いていて、焦げていた。
魔物は、紅い目を開いたまま、ドスンと前方に倒れ、力尽きた。
魔物はピクリとも動かない。
………倒した?あんな大きな獣型の魔物を、一撃で?
「おし、もう終わったから出てきていいぞ」
木陰からでも、あまりにもの迫力にビックリした。
いきなり魔法陣からサラマンダーと呼ばれる竜が現れ、火炎玉を放ち、三メートルもあろうかと思う魔物を一撃で仕留めた。
「貴方…一体なんなの?」
こんな力を持った人がなんでこんなところに…
私の質問に、彼は、ニッと白い歯を見せつけながら答えた。
「別に、ただの召喚士だよ」




